第77話 乙女ゲームとの違い
「あの、私はミリアが言うゲームの内容は詳しく知らないんです。せいぜい、攻略対象がヒロインに心を奪われて、婚約解消をすることくらいしか……。ああ、それから、最大の見せ場は今年の卒業パーティだとも、ミリアは言っていました」
なるほど、リーニャは転生者ではあるが乙女ゲームの知識はない、と。
それでストーリーにそった振る舞いをしなかったというわけだ。
逆にいえばストーリーに出てくるような、身分制をものともせぬ『天真爛漫』な娘ではないということだ。
それならば、と、私はさらに詳しい説明を試みた。
「そもそも私が生徒会長をやっていること自体、ゲームストーリーにはなかったことだからさ」
「そうだったのですか、ではゲームでは一体だれが生徒会長を?」
「サージェスだよ。まだ二年だけど優秀すぎる彼が一年の時に、卒業する元生徒会長の王太子から、二年を差し置いて指名されたって設定だったんだ」
「なるほど。そういえば、副会長ってフェリシアが好きなんですよね。でも、一応婚約者のいる彼女にあれだけあからさまに好意を示すってどうなんでしょう?」
「サージェスがフェリシアを好き? 何を言ってるんだ、君は?」
「ミリアが説明してくれました。確かに副会長って、王子殿下らがフェリシアの悪口を言っていた時に露骨に不機嫌な様子を見せていたし、そのことで私たちに注意するときも、なにか、こう、熱量が……」
そういえば、サージェスが攻略対象の場合の悪役令嬢もフェリシアだったな。
その半端な知識を持って彼を見るとそういう解釈になるか。
私は思わず吹き出した。
「あはは、いや、すまない。ゲームではそういう設定だったね。でも現実は違うよ。彼がぞっこんなのはフェリシアじゃなく、彼女の友人のエリーゼ・シュニーデルさ」
えっ、と、リーニャは目を丸くする。
「生徒会室で友人の悪口が言われてるなんて、エリーゼが知ったら激怒されるだろうからね。サージェスも必死でたしなめるよ」
「エリーゼのためだったなんて……。考えてみると、ずいぶんゲームストーリーとは違うのですね」
「ここから先は私の仮説だけど、私たちが前世でいた世界とこの世界は違うが、どこかでつながっている。そしてその情報が何らかの形でゲームを作る人たちの頭に入り設定で活かされた」
「それで生まれたのがあのゲームだと?」
「ああ、それからゲームや小説には定番の筋立てがあるだろう」
「いわゆる『お約束』ってやつですね」
「それゆえ、どうしてもそれに即した展開になるけど、この世界においては、いくら名前や立場や能力が同じでもそれぞれが意思を持つ人間だ。すべてにおいてゲームキャラのようにふるまうわけではないんだ」
「なんとなくわかります。でも、ミリアは戸惑っているみたいでした。あ、そうか! さっきの副会長の話みたいに、元のゲームとは違うところを説明していけば、私を含め皆がゲームストーリー通りに動かないことを理解してくれるかも」
リーニャは光明を見出したかのような顔をした。
そんなにうまくいくだろうか?
私としてはそんな楽観的な見通しはできないのだが……。




