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第75話 思いがけない相談者

 学園が休みだったので、その日は朝から相談所につめていた。


 事務所を開けてしばらくすると学園の生徒が相談に来たという報告を受け、名前を見て驚いた。


 リーニャ・クルージュ?


 彼女が一体どういう理由で?


 エクレレ氏が応接室に入ろうとしているのを引き留めて私が対応すると告げた。

 私がかなり強引に主張したので、エクレレ氏は腑に落ちないような顔をしながらもその場を譲ってくれた。


「ええ、クルージュさん。初めまして、ですね…。私は担当のキムラ―と申します」


 髪の色を黒に変え男性に変身した私は彼女にあいさつをする。


 よし、多分ばれていない!


「相談されたい内容をうかがってもよろしいですか?」


 キムラーという前世の名字をもじった名を名乗った私が質問をする。


 やはりエミールとのうわさの事か?

 それがきっかけでいじめられているとか?

 でも、フェリシアはそういう性格ではないし、周囲が勝手にしたとしてもあの強烈なミリアなどが黙っているとは思えないし、そもそも、こんな相談相手が誰も居ない問題の最終的な駆け込み寺のようなうちに相談しにくるとはとても考えられない。


「はい、あの……、友人のことで……、子供のころからとても仲の良い子なのですが、その子が私とある人をやたらと結びつけようとするのです」


 リーニャはおずおずと話し始めた。


 友人?

 ミリアの事だろうか?


「結びつけるとは?」


「その、カップル……、いえ、恋人同士にしようとするのです」


「なるほど、十代の方たちにとっては、誰と誰が好き合っているかというのは興味の惹かれる事柄で、おせっかいな性格の子ならそういう方面での世話も焼きがちなのでしょう」


「それが、常軌を逸しているというか……。私としてはその相手と恋人同士というか……、そういう仲になりたいとは全く思ってないのに……」


「つまり相手のことが好きではない。なのに友達は……」


「そう! そうなのです! 彼女はその……、とある『物語』にはまっていまして、その物語の中のヒーローとヒロインに、相手の男性と私を当てはめて必ずその通りにならなきゃだめだと。私にはその気はないのでそれをどう説得すればいいかと」


 なんだ、これは!


 少々要領を得ない話だが、彼女の言う『物語』とはつまり……。


 『物語』が私も知っている乙女ゲームと仮定したなら、友人とはミリアで、そして、エミール王子との仲を無理やり取り持とうとしているがリーニャにはその気がない、と、言う意味か?


 この解釈で間違っていないのならば、悪役令嬢の立場を脅かすヒロインの立ち位置であったリーニャを敵認定する必要は全くない。


 むしろその逆だ。


 しかし、だからと言ってこちらも転生者だと明かすのは賭けだ。


 リーニャが転生者なのはほぼ間違えないが、こちらもリスクを冒してまでそれを明かす価値があるのか?


「ご友人がはまっている物語とは『虹色コンチェルト』という題名ではないですか?」


 私は賭けてみることにした。

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