第69話 フェリシアへの恫喝【シュザンナ視点】
そんなある日のこと、事件が起こった。
正確にいうと、バルドリックがとんでもないやらかしをする現場に、私と双子の片割れハイディが偶然居合わせた。
「ふざけるな! それでも婚約者か!」
バルドリックの罵声と、そして、あれは……?
エミール王子の婚約者フェリシア。
私とハイディは角からこっそり聞き耳を立て、険悪そうなこの状況に顔を出すべきかどうか判断できず困っていた。
「なぜあなたに、私とエミール殿下のことを口出しされなければいけないのですか?」
「ことが婚約の話のみならず、王子の学園生活にかかわる話になっているからだろう! 王子の生徒会活動の邪魔をして楽しいのか!」
「根も葉もない悪口で私を貶めた王子殿下の言動は問題視せず、そのようなことをおっしゃるおつもりで?」
「うるさいっ! 婚約者のくせに夫となる王子の足を引っ張るとは何て女だ! 恥を知れ!」
体格の良さと声の大きさで他人を威圧するのが習い性となっているバルドリックは、他人に言い返され、相手の方が筋が通って自分が反論できなくなるとすぐ頭に血がのぼって、あのように暴言を吐く。
私にとっては当たり前の景色だったので、見ているだけで何の行動も起こせなかったのだが、ハイディは違っていた。
「恥知らずはどっちよ、バルドリック!」
ハイディは飛び出してバルドリックに向かって叫んだ。
「……っ!」
突然現れたハイディにバルドリックは顔をしかめる。
「誰にも見られてないと思ったの? それをいいことに女子学生を威圧し脅迫? 騎士であるあなたのお父上やお兄上が知ったらどう思われますかね?」
「これは忠義だ! 父上たちもわかってくださる。何も知らない部外者が口をはさむな!」
「あら、あなたはさっき、生徒会活動について言及してなかったかしら。私は生徒会の役員よ」
「……っ!」
バルドリックが言葉につまり顔を赤くする。
まずいわ。
こういう状態になった後のバルドリックは、実力行使に訴え出ることが多い。
つき飛ばしたり、叩いたりと……。
私はそのことをハイディに耳打ちする。
するとハイディはバルドリックはガン無視で、今度はフェリシアに話しかけた。
「大丈夫ですか、フェリシア?」
暴言を吐かれ、暴力も振るわれるのではと恐怖を感じたかもしれないフェリシアをハイディが気づかう。
「ありがとうございます」
髪を軽く整えながらフェリシアが答える。
「先ほどバルドリックが言っておりましたが、それは生徒会の総意ではありません。会長もあなたの側に非がないことは生徒会の集まりで話しておりましたし、その辺は誤解なきようお願いします」
ハイディは横目でバルドリックをにらみながらフェリシアに告げた。
バルドリックはその様子を見て忌々しそうに舌打ちをした。
「おい、シュザンナ、行くぞ!」
なぜいきなり私に声をかけるのか?
私がハイディと一緒にこっちにやってきたのを見ていたくせに。
にもかかわらず、どうしてあなたが声をかけたらいそいそと私がついて行くと思っったのか?
「おいっ!」
さらに激しく大きな声でバルドリックは怒鳴るように私に言った。




