第65話 クラウゼ姉妹の報告
馬鹿か、あいつら!
性懲りもなく!
クラウゼ姉妹の報告を聞いて私は唖然とした。
フォーゲル先生から授業中にリーニャの杖が壊れた話は聞いたが、その事件には意外な余波があった。
原因がまだ特定されていないうちから、リーニャの杖に細工をしたのはフェリシアだ、と、いううわさが広がっていた。
話はそこで終わらない。
フェリシアがそんな『あくどい』ことをしたことがあかるみになれば、彼女をおとしめていたエミール王子の処分も取り消されると一部の人間は考えたのだ。
それにエミールも同調した。
そんなわけないだろう。
そして、『被害』を受けたリーニャに同様の証言を求めて拒まれ、かっとなったバルドリックは人が見ているのもおかまいなしに彼女を恫喝、それでも聞かない彼女に危うく暴力まで振るうところだったという。
「アデリーはどこからそれを見ていたんだ?」
私は質問する。
「そうね。バルドリックがリーニャの腕をつかんだところくらいから。それから、リーニャがバアッとぶちまけちゃってね。『男のクズ!』とか、あれ、ペルティナの影響受けちゃったのかな」
アデリーが答える。
「なかなか言うわね、あの子も」
ハイディが笑う。
「そのあと、バルドリックがほんとに彼女に殴りかかろうとしたから止めに入ろうと思ったんだけど、フォーゲル先生の方が先に彼を止めてくれたの」
「それで大ごとにはならなかったというわけか……」
私はため息をついた。
実は被害を受けたのはリーニャだけではない。
フェリシアの方も恫喝を受けたらしく、それはハイディが目撃していた。
それぞれ別の場所でバルドリックの女子に対する蛮行を目撃とは。
双子のシンクロ、はっきり言ってすごいね。
「それにしてもバルドリックの恫喝行為ってシュザンナにだけ向けられたものじゃなかったのね」
「というより、シュザンナにやって問題なかったから、他の女子に対してもそうして良いと勘違いしているんじゃないの?」
「なるほど。フェリシアはね、父の公爵にもこの件を話しこのままでは済まさないって言ってたわよ」
「へえ、そりゃ楽しみ」
クラウゼ姉妹がしゃべる。
「ちょっと待って。シュザンナって、そんなにしょっちゅう婚約者のバルドリックから恫喝されていたの?」
私は二人に質問する。
「そうよ。小さい頃は突き飛ばされたり暴力行為もいろいろと。だけど、互いの両親が友人同士でシュザンナの言い分を彼女の父親が真に受けないのよ。フェリシアの件の時にシュザンナもその場にいたんだけどね、バルドリックの味方をしなかったから、家に帰ったら父親や相手の家から何を言われるかわかったもんじゃないわ」
「だから、ハイディがうちの家に泊まりに来るよう誘ったのよね」
「そうそう、だから、シュザンナは今うちの家に滞在しているわ」
なにやらまた波乱が起きそうな予感だな。




