第63話 廊下でひと悶着【リーニャ視点】
水魔法対戦授業の一件で下火だったうわさが再び盛り上がってしまった。
どうしたものかと悩んでいた時、向かい側から歩いてくるエミール王子が見えた。
「フェリシアが君の杖に細工をして罠にかけたという話が広まっているが……?」
エミール王子がド直球で聞いてきた。
「つまらないうわさですね。壊れた杖は先生に調べていただいている最中です」
手短に私は答える。
うわさが再燃した現状で王子と長々と話をするのはまずいと思ったので、私は早々に離れていきたかったのだけど……。
「しかし、かなり信ぴょう性のある話なのだろう」
「何を根拠にそうおっしゃるのですか?」
「皆が言っている」
「『皆』とは誰ですか? 具体的に名前を上げていただけますか?」
私の質問に不意を突かれたような顔をエミール王子はされた。
それでは、と、一礼して私は離れようとしたのだが……。
「フェリシア嬢があくどいことをしたことが証明されれば、王子の生徒会での処分が撤回されるかもしれないだろう」
バルドリックがいつの間にか私の横に立っていた。
「つまり……、フェリシア嬢を悪役にして王子殿下の生徒会室への出入り禁止を撤回させるのに協力しろ、と、言う意味ですか? 根拠のない話を広めるような真似をするな、と、生徒会長にいさめられたばかりではありませんか?」
単刀直入に私は切り返した。
「根拠のない話ではないだろう!」
バルドリックは眉間にしわを寄せてすごんできた。
彼は他の生徒より体格が大きいので威嚇されると、小柄な女子の身ではとてつもない恐怖を感じる。
「あのな、君がフェリシア嬢にひどいことをされたと証言すれば、王子は前のように一緒に活動できるようになるかもしれないんだ。そのくらい察しろよ。まあ、貴族じゃないからそういう以心伝心のような真似はできないのかもしれないけど、今後のためにそういうのも覚えていたほうがいいぜ」
なんなの?
都合のいい要求をして、言う通りにしない相手への偉そうな説教口調⁈
エミール王子も後ろでうなづいてバルドリックの言を肯定しているみたい。
「そうですか、根拠もなく他人を悪役にするための『以心伝心』ならわからなくてもかまいません。そもそも、証言したところで生徒会長が処分を撤回するとは思えませんが」
「やってみなくちゃわからないだろう!」
なんなの、この方?
こっちが精いっぱい込めた皮肉は通じなかったようで、それでさらに押してくるとは、心底脳筋ヤロー!
もしかしたら、今まではその恵まれた体格で無茶ぶりをごり押しできて、それが習い性になっておられるのかもしれない。勢いで主張をしてくるけど、私もそこでひるんで自分の意思を曲げることはできない。
「お断りします! あなた方はご自身の都合だけでフェリシアが悪役だったらいいなという期待をもとにおっしゃっているだけでしょ! そんな自分勝手な提案を私に持ちかけないでください!」
しょぼいレベルだがありったけの勇気を振り絞って言った。




