第60話 教師から持ち込まれた問題
やってきた相談者は生徒ではなく教師だった。
まだ二十代の若き教師アルト・フォーゲル、長兄オーティスの友人。
あわわ、なにを相談しに来たのか、めちゃくちゃ気になるけど、もしばれてしまっては……。
どうしよう……、どうしよう……。
「この事務所にサラ・ヴァイスハーフェン殿がいらっしゃると聞いたのですが?」
私の焦りをしり目に彼は受付嬢に質問する。
どういうことだ?
「すいません、オーティスに相談に行ったら、学校で起きた事案だし、一度ここを訪ねてみると良いと言われまして……」
兄からの情報かい!
受付嬢には私の名は絶対出さないように厳命していたので困惑している。
仕方がないので私は元の姿でフォーゲル氏の前に顔を出した。
「いらっしゃい、フォーゲル先生。きょうはどういった御用件で?」
私はフォーゲル氏を談話室に招いて話を聞くことにした。
「実は授業中に生徒の杖が奇妙な壊れ方をしましてね……」
彼は先端が粉々に砕けた新入生用の杖の残骸をテーブルの上に置いた。
授業で使う杖は学園で指定されている。
新入生の授業では割りばしくらいの大きさの杖を使い、半年ほどたつとより性能の優れた杖に変える。半年ほどしか使わないと言っても、学生の杖は慎重に検品されたのち販売されているからこんな欠陥品が出るとは思えない。
「一体どういう力が加わればこんな風に壊れるのか、追跡魔法や残存魔法にもかけて調べてほしいと思ってオースティンを訪ねたら、ここを紹介されてね」
「学校で起きたことだから、と?」
「ああ、そのとおり」
「どういう状況でこういうことになったか話していただけますか?」
フォーゲル先生は話し始めた。
内容はこうだ。
対戦形式の水魔法の授業の時だった。
二名の生徒が向かい合い、互いに杖から水を放出し合う。
これは水鉄砲で相手をやっつけるのではなく、たがいに放出した水を真ん中で釣り合わせて均衡を保つ訓練。
それゆえ、水属性の力が同レベルの者同士をそれぞれ合わせた。
弱い者から順にやらせ、最後にクラスで一番力の強い者同士の時にそれは起こった。
一方の生徒の杖が魔法を放とうとした瞬間、粉々に砕けたのだ。
「確かに珍しい事案ですね……」
まったくオースティン兄様ときたら、どのみちこの杖はヴァイスハーフェン家の研究所にもっていって調べることになるんだから、ご自分がすんなり預かればいいのに、わざわざ回り道のようにうちの相談所を紹介して!
でもまあ、学園で起こったことだから私も把握できるようにと思ったのかな?
それでも、自分が引き受けて後で私に教えてくれればいいだけなのにね。
「念のためですが、この杖の持ち主と対戦相手の名を教えていただけますか?」
気を取り直し私は聞いた。
「ああ、杖の持ち主はリーニャ・クルージュ。対戦相手はフェリシア・ブリステルだよ」
これまた偶然か!
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