第55話 親バカでスポイル
「それはできません。王妃陛下」
未来の姑の私情丸出しの要望を私は拒絶する。
「王子と平民上がりの女生徒では立場の軽重が違うでしょう!」
私が否と言うとは思っていなかったようだ。
声を荒げて王妃は主張する。
「学園とは身分や立場の上下ではなく、個人の成績や行いで評価を受けるところです。問題のうわさですが、生徒会の仕事で一緒にいる機会が多かったことに尾ひれがついただけと周囲の人間からも確認が取れています。加えて彼女はその場にいたけど『雑談』には加わっておらず、彼女を処罰する理由が見当たりません」
「うわさをたてられること自体問題があるじゃないの!」
「では、エミール王子もやはり同様に罰せねばなりませんね。うわさは一人でたてられたものではありませんから」
「……っ!」
王妃が無言で睨みつけている。
やだね。
この若さでもう嫁姑の争い……。
いや、あんたがそうやってエミールを甘やかすから、彼は自分の何がいけなかったかを理解しないんじゃないか。
「母上、いい加減になさいませ! サラじゃなく僕が生徒会長でも同じ処分を下していたはずです。母上の言うとおりにするという事は、非のある者を見逃し、ない者を罰するという事です。そんなことをすれば生徒会そのものの信頼が揺らぎます」
ジークからナイスアシスト、感謝!
「私もリーニャさんの処分など希望しておりません。私が言いたかったのは、学園での活動時間を削って王宮での仕事などを肩代わりしていたのに、そのあり様を周囲の方々に悪いように吹聴されているのを聞いて、エミール殿下の仕事の代行はもちろん、生涯の伴侶として一緒にやっていく気持ちもきれいさっぱり消えてしまったことにあります」
フェリシア嬢からも同意の言葉いただき。
ただそこに続く言葉が……、もう婚約関係続けるの無理筋じゃね。
こんなことになった原因として、エミール何がしたかったんだ?
クズ過ぎやしないか?
「私だって時間さえ許せば本当は生徒会の活動に参加したかったのです。ですが、それをせずあえてエミール殿下やサラ様のお仕事を肩代わりしてきたのは、王太子殿下とサラ様が助け合って学園生活を充実させてきた様を素晴らしいと思ったからです。だから今年は、私がエミール殿下が心置きなく活動できるよう、自分が王宮での雑務をこなすことを引き受けたのですが……」
この娘、可愛い!
けなげすぎて涙が出る。
エミールはわかっているのか、と、思って彼の顔を見たけどなんか不満そう。
相似形のように、自分の思う通りの発言をしなかった息子の嫁候補たちに対して、王妃が渋い表情を向けている。
「フェリシア嬢の優しさにこれ以上甘えるわけにはまいりませんよ、母上。女性王族がやらねばならない仕事のうちのサラの分は母上にお願いしたはずですが、それもフェリシア嬢に投げられていたようですね」
ジークは言った。
何、それ?
聞いていないよ!
エミールだけでなく私もフェリシアに迷惑かけていたの?
「エミール、お前も今までフェリシア嬢に任せていたものは自分でやるようにしろ。そしたら、今まで言ってきたことがどれだけ無体かわかるだろう。そうなれば、生徒会室への出入り禁止などなくても行っている時間はなくなるだろうがな。」
ジークの言葉にエミールと王妃は返す言葉が見つからず、無言でふてくされているようだった。




