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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第4章 変わってゆくシナリオ
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第53話 婚約解消の危機(後編)【フェリシア視点】

 私たち家族が着席すると国王陛下は深々と頭を下げた。


「まず謝らせていただきたい。この度は息子の言動で令嬢を傷つけたこと、まことに申し訳ない」


「あの、おっしゃってない方に謝っていただいても、その……」


 国王陛下の謝意に対し困惑の意を私は示した。


 王太子殿下が隣に座っていたエミール王子をつつく。


「どうもすいませんでした」


 それに気づいたエミール王子が続けて謝罪されたが、心には響かなかった。


「確かにここは国王陛下の謝罪よりエミール王子殿下の謝罪の方が重要と言えます。謝罪していただけるからには何が悪かったのかももちろん理解しているのでしょうな、王子殿下!」


 父が私の発言を補う形で追及する。


「え……」


 エミール殿下は躊躇(ちゅうちょ)した。

 やっぱりとりあえず謝っておけってことかしらね。。


「もちろんですわ。フェリシア嬢が王宮で王子妃教育や仕事の肩代わりをしている最中に、他の女生徒と……」


 王妃陛下が助け舟を出そうとする。


「ご当人に聞いておりますのよ。謝罪を受けてもまた同じことを繰り返されてはね。だから、確認しておくのが重要とブリステル公爵閣下は思っているのです」


 王妃陛下の言葉をさえぎって母が言った。

 口調は丁寧で慇懃ではあるが、かなりきっぱりと言い切っている。


 母はわざわざ自分の夫のことを「公爵閣下」呼びをし、相手が王族でも一歩も引かぬ態度を示す。


 この国の公爵位はゼーンハルト王とミューレア王妃の子や孫のうち、特に国に貢献した五人の者たちに与えられた。現在残っている公爵家は我がブリステル家とサラ様のヴァイスハーフェン家のみとなったが、王族に何があったら代わりに王位を継ぐこともある、いわば血のスペアなのだ。


 王族と言えど一方的に命令することはできない。


「リーニャ・クルージュについては、うわさにすぎず……」


 エミール殿下が説明を試みる。


「リーニャさんのことはご本人からも違うと確認が取れているので、そのことはいいのです」


 殿下の言葉をさえぎって私が言う。


「あら、それじゃ、エミール殿下の独り相撲」


 母が嘲笑するような笑みを浮かべた。


 お母様、いやみが過ぎますよ。


「私は今日まで殿下の王宮での仕事を肩代わりしてきて、それゆえ、学園では授業を受けるだけで精一杯。そんな私の生活態度を、殿下とそのお仲間は『見下している』とおっしゃって非難しておられましたね、それは一体どういう理由からですの? 入学前に話し合って決めたことなのだから、殿下も私がやっていることはご存じだったはずでしょう」


 私の質問に殿下はだんまりのまま。


「失礼ですが、エミール殿下はお若いのに記憶力に障害でも持ってらっしゃるのですかな? 侍医の診察を受けた方がよろしいのでは? いやいや、ご心配ゆえ申し上げているのですよ」


 お父様も皮肉がきつい。


 はっきり言ってこの件を丸く収めるつもりはないのだろう。

 私とて口先だけの謝罪で婚約解消の願いを取り消す気にはなれない。。


 ピリピリとした沈黙を破ったのは、生徒会長をやっておられる王太子殿下の婚約者サラ様。


「確かにエミール殿下の言動は非難されてしかるべきものゆえ、ブルステル家の方々がお怒りなのも理解できます」


 意外ですわ。

 同じ生徒会にいらっしゃるのでエミール王子寄りかと思っていましたので……。


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