第52話 婚約解消の危機(中編)【フェリシア視点】
そして、とある祭典の翌日、友人のアリシアとエリーゼが、問題の女生徒リーニャ・クルージュにとんでもないことをしかけたと聞いて肝を冷やした。
「たまたま彼女と出くわしたものだから……」
「他に人がいなかったしちょうどいいと思ってね……」
アリシアとエリーゼが言う。
エミール殿下がそれを知ってやってきたのを、クルーグ家のペルティナが逃がしてくれたので事なきを得たようだけど。
ペルティナは、私の家庭教師のミンディ様の本家の嫡女の御立場の方。ミンディ様のお話によると、はきはきとした性格のかなりしっかりした方のようだ。。
「ごめんなさい、勝手なことをして」
「でも、リーニャさん自体はそういうつもりないみたいなこと言ってたのよね」
二人は言っていた。
「お願いだから、私のために危ういことをするのはやめてね」
私はくぎを刺しておいた。
その件はそれで終わりだったけど、うわさ自体が消えるわけではなく、どこかもやもやした気持ちを抱えて学園生活を過ごすこととなった。
そんな気持ちがまた魔力の暴走を招いたのかもしれない。
「生徒会は王宮での仕事より今しかできない価値のある仕事ですわ」
「学園生活や他の生徒を見下してないと辞退なんてしないよな」
「まあ、僕もおいおい言ってるんだけど、それでいてリーニャに変な因縁を友人に頼んでつけさせるし、困ったことだよ」
これはエミール殿下と生徒会の面々の会話?
あんまりな言い方だわ。
私だって……、エミール殿下と婚約していなくて他の学生と同じように時間が使える状況で、生徒会に抜擢されたら喜んで参加していたはず。
クラブに参加することも、友人とお茶をすることも、本音を言えば私だってやってみたい!
気づけば私は生徒会室に飛び込んで殿下にどなりつけていた。
「殿下やサラ様の仕事を肩代わりして、学園では授業を受ける以外の活動をする時間がないのに、それを見下しているとか、どうしてそんな言われ方をされなければならないのですか! そんなに私のことがご不満なら婚約を解消してください! おうわさの方でも他の方でも、どうか殿下の御心にかなった方といっしょになってくださいませ! 私はもう殿下のために自分の学園生活を犠牲にするのはたくさんです!」
言うだけ言うとその場にいた方々の反応も見ず、その日は王宮にも寄らずまっすぐ自宅へ帰った
王宮に寄らず、いつもより早く帰って来た私のただ事ではない様子に、母はうろたえた。泣きながら、もうエミール王子との婚約を解消したいという私に、母はじっくり話を聞いてくれた。
それから父や兄も帰宅して事の顛末を聞くと、父はその足で王宮に向かった。
兄の方はというと、あのくそ王子、と、忌々し気につぶやいていた。
翌朝、両親とともに王宮に向かった。
王宮には国王夫妻とエミール王子殿下、そして兄君のジグムント王太子殿下と婚約者のサラ様までいらっしゃる。人数をそろえてよってたかって、婚約解消の願いを取り消させようとしているのかしら?
それとも、王子殿下にくってかかったことをとがめようとしているの?
私の警戒心は最大限に膨らみ、すがるように母の袖をつかんでいた。




