第51話 婚約解消の危機(前編)【フェリシア視点】
私とエミール王子が婚約したのは互いに十一歳の時。
快活で物おじしないこの方のお相手が私につとまるかしら、と、心配になったものだ。実際、話や行動のテンポがなんとなくかみ合わない感じがする。
はっきり言って今すぐにでもこの立場を投げ出したいと思ってしまうのだけど、そんなわがままが通るわけがない。なんとか心を奮い立たせてエミール殿下とうまくやれるよう日々努力している。
そんな私のお手本は、エミール殿下の兄の王太子殿下とヴァイスハーフェン家のサラ様のご関係。いつも仲睦まじくいらっしゃるし、サラ様は裏表のない清々しいお心の持ち主でもあり、ひそかに敬愛している。
そんなサラ様も通う学園に私も入学できる年齢になった。
できれば優秀な成績をおさめ、サラ様と一緒に活動できる機会があればと夢想していたのだけど、うまくいかないものね。
頑張ってテストで一位を取った私を、エミール殿下を差し置いて、と、陰口叩くものが多くいたようだ。ざわついたこの雰囲気を何とかするために頭を悩ませ、そして私は同じく生徒会に呼ばれたエミール殿下の負担を軽減するために、彼の仕事の肩代わりを申し出た。
そのせいで生徒会の活動に参加できないのは残念だけど、考えてみれば、サラ様も婚約者の王太子殿下を助けるためにそれをしてらっしゃった時期がある。
それを励みとして、過剰に気を使わざるを得ない王妃陛下のお茶のお相手も含めて頑張ることにした。
「見上げた心がけですね。ならば、私の方も頼みたい仕事があるのですが」
エシャール王妃に言われ、サラ様がやるはずだった仕事も私が引き受けた。
自分が決めたことですから不満はないけど、せっかく学生として以前より行動範囲を広げることができるようになったのに、クラブなどの課外授業にいそしむ時間も、帰りに女子同士でお茶を楽しむ時間もほとんどとれないのは実は少し残念。
ケーキの美味しい店を見つけたと言ったアリシアやエリーゼが、私もいっしょに行けないことを残念がるのは一度や二度ではなかった。
そんな多忙な毎日を送っていたある日、心をざわつかせるようなうわさが学園中に広がっていた。
生徒会に抜擢された平民上がりの新入生が、エミール殿下に接近し、彼もまんざらではない様子だというのだ。問題の新入生というのは、私たちと同じクラスのリーニャ・クルージュという子だった。
私が学生生活を楽しむことができない現状で、殿下は生徒会内で他の女生徒と、いままで殿下のためにやってきたことがばかばかしくなる思いがした。
「生徒会の運営は将来、上の立場に立った時に役に立つ」
生徒会活動を辞退した私にチクチクとエミール殿下はおっしゃっていたけど、誰の仕事を肩代わりしていて、それができないと思ってらっしゃるのかしらね。




