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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第3章 いよいよゲーム開始
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第44話 変身デート?

「ここにやってきたのは僕だけだから、内緒にしてほしいならしゃべらないよ。その代わり、時々お忍びでやってくるのはいいかな? 休日はここにいることが多いんだよね」


 あああっ!

 王侯貴族に知られてないからこそ、もしもの場合の避難場所だったのに……。

 

 ばれてしまったら相談所の存在意義がないじゃないか!


 ジークはその後『お忍び』といって、それなりに立派な馬車でトロイアだけをつれて相談所にちょくちょく顔を出すようになる。


 その日は相談のためにやってくる顧客も少なかったので、後のことはエクレレ氏らにまかせてはやめに退出してジークとディナーに出かけることとなった。


 予約の時間に少し早いので景色が良く国民が好んで集まるというスポットに足を運んだ。


「ここは高台だから景色がいいらしいんだ」


 後で知ったことだが、人気のデートスポットでもあるそうだ。


 ジークがそんなことを知っているなんて意外だ。

 王族や高位貴族となると外出にはいちいち護衛がついてくるし、二人きりでデートなんてすることもできないから、調べるだけ無駄とばかりに興味を持たなかった。

 

「そんなに周りの目を気にしなくても、僕は今周囲の人には違う姿に見える魔法をかけているよ」


 そう言ってジークは私の肩を抱き寄せた。


「ああ、外見は男性だけどこうするときゃしゃな女性の肩をしている」


 まあ、見かけだけで実態は変化してないからね。


「こんなふうに普通に二人きりで出かけるなんて絶対にできないと思っていたけど、変身したことでやっとできた」


 ジークが感慨深げに言う。


 そうか、ジークもそうやって『普通の人』みたいなことをしたかったわけか。

 エミールもそうだったし、ぜいたくな願いと逆に普通の人たちは言うかもしれない。でも、人にはそれぞれその立場に応じた悩みや願いはあるものだ。


 ただ、二人きりって……。

 従者のトロイアはノーカウントなのね。


 食事はジグムント王太子の名で予約を取っていたので、彼は元の姿に戻り入店した。ただし、私の方は男物の服を着ていたので変身したままだった。


 高位貴族の間では有名な老舗店。

 客層もそれをわきまえていて王太子の姿が見えても、店員も他の客もかまわず知らないふりをしてくれる。


 だから私たちは気にせず二人の食事を楽しむことができた。


 まあ、その日はジークがやたらテーブルの上で私の手をつかんで離さなかった。見た目と実際とのギャップがそんなに面白かったのだろうか?


 それから数週間後、次兄のライナートが帰って来た。


 彼は今、駐屯騎士団に併設するヴァイスハーフェン家が運営している研究所に勤めている。この施設とうちの屋敷とは実は瞬間移動できるポータルがつながっていて、家の人間なら自由に行き来できるのだ。

 だから、ライナートも一か月に一度くらいはうちに戻ってきて家族と一緒に食事をとり、また駐屯地の方に戻っていく。


 その日は妙に興奮していた。


「俺と王太子が変な関係だって噂立ってるんだけど、どういうことだよ! 俺たまにしか王都に戻らないし、家で食事するしかしてないのに、なんで王太子とそういうこと言われてるんだよ!」


 ライナートはいきり立っていた。

   

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