第42話 治療師の資質
「私には得意属性がなかったの、こんなのってあり?」
私と副会長が寄ってたかって言ったせいか、ミリアが話題を変えて言った。
「それはそれで珍しいことだから誇っていいよ」
私も気持ちを切り替え彼女を励ます。
「得意属性がなくすべてがまんべんなく使える者は治療士に向いていたっけな」
サージェス副会長も言葉をつないだ。
「治療士って水や光が得意そうに思ってましたけど……?」
ミリアが首をかしげる。
「君の思い込みは一体どこから来ているんだい? 怪我や病気の治療回復のための魔法にはそれぞれの属性の力が必要とされるんだ」
サージェスは言う。
そう、前世の世界の乙女ゲームだとヒロインには『癒し』の力があることが定番で、その力は光や水に由来することが多い。要するにイメージなんだけどな。
だが、わが国では魔法による治療技術はすでに体系化していて、六属性すべてに病気や怪我の処置に対する必要な力が含まれている。だから、六属性まんべんなく力を持っているミリア・プレディスは治療師の素質があるというわけだ。
ざっくり説明すると、物を温める能力は火属性、逆に冷やすのは水属性。
物を固めるのは土属性、逆にばらすのは風属性。
隠されたものを明るみにするのが光属性で、逆に隠すのが闇属性。
これらが属性における能力の基本で、治療においてはこんな形で使われる。
火ー温める、冬季に遭難したり、氷雪魔法を使う魔物にやられたりした者に使う
水ー患部の洗浄、および、冷やす。発熱している人や火傷を負った人に使われる
土ー固める、出血のひどい怪我をできだけ早く固めて血を止める、
風ーばらす、じくじくした傷口を乾かしたりする
光ー消毒、内科疾患においては悪い個所を透視
闇ー睡眠、手術の際の暗幕、感覚を鈍らせる効果もあるので痛み止めにも使える
これらの内容はいずれ授業で知ることになるはずだから、今私が詳しく説明することはないかな。
◇ ◇ ◇
新入生が入学してはや一か月、私自身も生徒会会長としての任務に慣れてきた。
はっきりいって、二年生の時の方が忙しかった。
今は生徒会長だけやっていればいいので、時間的にも余裕がある。
空いた時間を活かして今まで丸投げだった『ダイネハーフェン相談所』の運営状況を確認しよう。実を言うと、最近変身魔法を覚えたのでそれをこの相談所で試してみたいと思っているのだ。
変身魔法は王族が護身のために覚える最も高度な魔法技術の一つで、妃教育の最終段階で身に着けることを求められる。妃教育を数年前にほとんど終えてしまった私も、これを教えてもらい始めたのは数か月前のことだった。
まず第一段階として、見た目の性別を変える術を身に着ける。
つまり私が見た目男になれるのだ。




