第29話 公爵令嬢サラの入学
それからさらに一年、私も学園入学の年になった。
入学時のテストで上位八名は生徒会に呼ばれるのだけど、私もそのメンツにはいった。ジークは二年で副会長となっている。
王太子が副会長をしている生徒会に一年下の婚約者の私も役員候補として参加。
否が応でも人々の興味を引くが、ぐちゃぐちゃ悩んでいても仕方がない。
一年生に任されるのはほとんど雑用、全く無問題。
前世は庶民なのだから、こんな仕事公爵令嬢のわたくしができませんわ、などとはかけらも思わない。
ある日の業務ではヴァイスハーフェン家主体で開発した特殊インクを使ったりもした。
学園の卒業生に送る『寄付のお願い』レターのあて名書きである。
本文はすでに用意されていて、それを一枚ずつ封筒に入れ宛名を書いて封をする。
風魔法を込めた特殊なインクで書かれた封筒は封をしたとたん、宛名のところまで飛んでいく。
郵便配達人も存在するが、大量の郵便物を送る必要のあるところではわざわざ郵便局へ持っていくより、モノによってはこうやって自動で送ってくれるというのは、なかなか便利。
今は封筒やはがきなど軽いものしか使えないが、いずれは荷物など重いモノでも自動で配達できる仕組みが作れるよう、魔道研究所が開発を続けている。
「このペン面白いわね。書き終わった瞬間、さっと飛んで窓から出ていくところがほんと楽しい!」
「ヴァイスハーフェン家が開発したんでしょう」
同じ新入生ので双子のアデリー&ハイディ・クラウゼが言った。
「開発部に伝えておくわ」
私は笑顔で二人に答えた。
レイゾウコの開発もそうだが、ヴァイスハーフェン家主体で開発して成功したものは、できるだけその名を出して国民に広めることにしている。
それは私の提案によるものだ。
いままでは、そういう国民への評判などあまり気にかけず、ヴァイスハーフェン家が評価されようとされまいと問題にはしなかった。だが、それゆえに国民の目からは何を研究しているのかわからないマッドサイエンティストのようなイメージを持たれているのはよろしくない。
それは変えていった方がいいと思ったのだ。
乙女ゲームがらみの破滅を回避するためにも。
「ただ、今は秋だから窓を開けても気持ちがいいけど、冬はどうするんだ?」
別の同級生リュート・マルベックが言った。
「そうだね、だから大量に手紙を送る案件は春や秋に片づけるように執行部も工夫しているらしいよ」
彼の疑問に私たちの業務を監視している副会長のジークが答える。
執行部とは学園を運営するところであり、そこの下請け業務のようなことも時々生徒会で引き受けてるいる。
「どうしても冬に送らざるを得ない場合は、全部書き終えてから換気を兼ねて窓を開け放つんだ。封書は外に出ようと窓に張り付いているんだけど、開け放した途端、皆飛んでいくのもなかなか壮観だよ」
経験者の話、面白い!
さすがはジーク。




