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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第2章 乙女ゲーム開始準備
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第26話 前世のおぼろげな記憶

「なんとなく……」


 フォーゲル教師は気まずそうに頭をかいた。


「魔物などに興味があるのなら、まだ発見されていない新種が直観として頭に入ってきたのかもしれませんわ。いつか翡翠色の美しい鳥が発見されたら『カワセミ』と名付けたらいいでしょう」


 動揺を隠して口から出まかせをぺらぺらと。

 自分でも感心するわ。


「そう言っていただけると勇気づけられます。さすが未来の王妃様は言うことが違う!」


「他にどんな鳥を思い浮かべます? ぜひお聞かせ願いますか!」


 私は食い気味に質問する。


「そうですね。この前まで勤めていた学校に朱鷺色(ときいろ)の髪をした女の子がいましたね」


「トキ色? なんだいそれは?」


 フォーゲルの言葉に私より先に兄が疑問をはさんだ。


「黄色がかった淡い桃色のことだよ。トキっていう鳥の羽に似た色なんだ」


「そんな鳥いたっけ?」


 トキ、学名ニッポニアニッポン。

 水田の近くに生息していたが、今は絶滅危惧レッドリストに入れられている鳥。


 まちがいない!

 言葉の使い方と言い、日本での野生絶滅が問題とされていた鳥の記憶と言いフォーゲルは日本人の前世を持っている。


 私はさらにカマをかけてみる。


「フォーゲル先生はどこのご出身なのですか? トウキョウ?」


「トウキョウ? そんな地名ありましたか? 実は、僕はエーデルフォーゲル家の出なんですけど……」


「えっ、あの伯爵家の?」


「ええ、エーデルフォーゲルでは次子以下の子は独立したら、頭の『エーデル』をとったただの『フォーゲル』を名乗るんです」


 本当に記憶にないのだろうか?


 鳥の名前より『トウキョウ』と言う地名のほうが知っている人は多いだろうに……。


「どうしたんだ、お前? トウキョウなんて地名は王国にないよな?」


 兄も首をかしげて私に尋ねる。


「ああ、いや、そういえば、ヴァイスハーフェン家では今度『レイゾウコ』なるものを市場に出回らせることにしたんですよ」


 私は急いで話題を変えた。


「『レイゾウコ』ですか? それはいかなるもので?」


 それもわからない?


「ええと、大きな貴族の家では冷却魔法の魔石をおいた倉庫に食べ物を保存したりするけど、それの小型の箱状のものを一般家庭にも広めるアイデアをね……」


「おいおい、それはまだ秘密だろうが!」


 兄が私をたしなめる。

 テヘペロの表情をして兄をごまかし、フォーゲルに口止めをした。


 私と同じく日本人の前世を持っているなら反応しそうなことにフォーゲルは反応しない。

 だとしたら、この人の『鳥の名』の知識は何だろうか?

 推測するに、彼は前世でも鳥など動物に強い興味を持つ人物だったのかもしれない、現世でも魔物研究に携わりたいと言っているくらいだから。


 前世は忘れてしまうのが普通だが、人によっては強い印象の残った出来事や事柄だけを記憶している場合があるのかもしれない。


 フォーゲルの場合、それが時々染み出てきている。


 この王国にはみんな覚えてないだけで、私と同じく地球の日本の前世を持った人が大勢いるのかもしれない。


 前世の名前や経験をはっきり覚えている私が珍しいだけで。

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