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第2話 不信の一滴

「でも、ジグムントさまは成長すれば、かなりのハンサムにおなりあそばすわよ」


 ヴァイスハーフェン家では、すでに私を苦しめる仮想敵扱いされているジグムント王太子殿下。


 母は彼をそれとなく擁護する。


 淡黄色の髪に碧玉のような色の瞳。

 さすがはゲームの攻略対象、幼いながらも顔立ちは整っている。

 将来ハンサムにという母の言うことはおそらく正しい。


「だからなんだというのですか、母上?」

「そうそう、美男子無罪ってわけじゃないですよ」


 兄たちが反論する。


 ちょっと待って!

 お兄様たちの中では王太子殿下が私を裏切って苦しめるの確定ですか?


 乙女ゲームを知っている転生者ってわけでもあるまいに?


「王太子殿下に他に好きな人ができたら、私は潔く身を引くつもりです!」


 家族の興奮を抑えるためにできるだけしおらしい口調で言ってみた。

 私の意志をあらかじめ知っておいてもらうためにも重要なことよね。


「サラ、なんてけなげな……」

「いい子だなあ、本当に!」


 二人の兄が感動の気持ちを示す。


 うん、この分なら婚約解消の意志を私が告げたら、家族にはすんなり了承してもらえそう、よしよし。


 ただ、王家と話し合って納得してもらうのは骨が折れそうだけどね。


「あなたたち、いい加減にしなさい。王太子殿下が浮気するとは限らないでしょ」


 王太子にも過剰に(不当に)厳しいわけではない母は言った。


「それともなあに? サラが浮気されるような魅力のない娘だとでも言いたいの?」


 でも、別の意味で私への評価が甘々だった!


 母の言葉に、そういう意味じゃ、と、兄たちが口ごもった。


「まあ、あの国王と王妃の子供だ、心配が尽きない気持ちはわかる」


 父が言った


「……?」


 どういう意味?


「あなた、その話は!」


「ああ、すまない……」


 母が父をたしなめ、父がわざとらしく咳払いをする。


「とにかく、お前たちは勉強の時間だ。先々のことをあれこれ想像して気に病んでもしかたがないだろう」


 さきほどまで兄と一緒に王太子との婚約に難色を示していた父が、急に話題を変え私たち子どもをそれぞれ行くべき場所に追いやった。


 あの国王と王妃の子?


 今の国王の治世に大きな問題が起きてるわけではないし、国王陛下はエシャール王妃ひとすじで浮気とは縁のないお方だ。


 心配とは逆の印象なんだけどな?


 その日のこの話はこれでおしまいとなったが、疑問はとげのように私の心に残るのだった。



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