第121話 二夫婦、王宮へ
「ゴホン、話を元に戻そうか。先ほども言った通り、王宮の呼び出しに応じるのはお勧めしない。エルフ王の名においてブリステル公爵家の人々を保護し、そのうえで我々が国王と交渉しよう」
気恥ずかしさを押し殺し、エルフ王アランティアは部屋にいる人々に言った。
「私もその方が良いと思います。感覚的なものですが、いまの王宮は話を通じる人間がいない状況です。ジークはまがまがしいものを排除する能力にたけているのでかろうじて正気を保っていますが、彼一人で国王夫妻の蛮行を防ぐのは難しいかと」
私も後につづいて説明をした。
「お話は分かりました。ただ、やはり息子が捕えられている以上、私一人でも王宮に向かわねばなりません。妻と娘の保護をお願いいたします。」
公爵が主張する。
「ならば私も同行いたします。かくまってもらうのはフェリシアだけでいいでしょう」
公爵夫人も主張した。
「ふむ、行きたいというなら止めはしない。私たちも同行するからな」
エルフ王は二人に告げる。
「しかし、公爵夫妻とエルフ王夫妻が一緒に王宮に行けば、言いがかりレベルだった王家の主張が信ぴょう性を帯びることに?」
私は懸念を示し忠告を試みるが……。
「疑われているのなら別にともに行ってもかまわないだろう。エルフ側としては、王家の態度いかんでは人間への援助をやめることも考えているのだからな。そのこともしっかり話し合うつもりだ」
「援助をやめる?」
「ああ、伝説の魔物が復活するかもしれないこの時期に、臣下を罠にかけて殺すような王では、ミューレアの子孫ゆえ助けてきたが、もうそれをする気もおきぬ」
なかなか厳しいことをおっしゃるな、エルフ王アランティアは。
「それは返す言葉もありません。ただ、王宮がそうなったのは、いつもと違う……」
「わかっているよ、その様子を見たうえで出方を決める。最初から戦いをしかけるようなことはしない。まずは国王へのお礼から始めねばな。貴殿がイレーネを捨てたおかげで私は彼女に出会えたとな」
お礼という割に言い方が物騒だ。
『お礼』というより、やくざが使う意味での『お礼参り』と表現した方がいいかもしれない。
「じゃ、ティオ。お前は令嬢をエルフの里まで連れて行ってくれ、頼んだぞ」
父アランティアの頼みに、承知した、と、ティオはうなづいた。
「「では、フェリシアをお願いします」」
「お父さま、お母さま……」
出立しようとする公爵夫妻を泣き出しそうな顔で見守るフェリシア。
エルフ王夫妻は土色のローブをかぶり従者のふりをして、公爵夫妻と一緒の馬車に乗り込んだ。




