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第119話 公爵令嬢とハーフエルフ

「一度だけティオレに連れられて彼のお父様に会いに行ったことがあるのです。すでに知られているなら言ってもよろしいですわね。彼のお父様はエルフ王なのです」


 フェリシアが説明する。


「やはりそうか……」


 皆があまりのことに言葉を発せない中、私は小さくつぶやいた。


「母君の名は『イレーネ』とおっしゃって人間の女性でした」


 さらにフェリシアが説明をする。


「イレーネ! まさか、別人よね……」


 フェリシアの母が驚き困惑した。


「いつの間にそんな……」


 父親の方は呆然とした表情をしている。


「前の満月の夜に急に頼まれて……」


「夜に外出だと!」


「あの深い意味はないのですよ、お父様。エルフ王は私が古のミューレア王妃と同じ能力を持っていることを気にされて、それでお話をしたいということで……」


「どこの馬の骨ともわからぬヤツがうちの娘を……」


 ブリステル公爵、別の意味で爆発寸前だ……。


「そりゃ、悪かったな。俺も母親によく言われるけど、親父は人間界の常識に少し疎いところがあるからな」


 その場に集う面々とは違う声が聞こえ、私たちはそちらの方に顔を向けた。


 ティオレ!


「貴様がうちの娘を!」


 公爵は彼が噂の主だと知ると噛みつかんばかりの勢いで言った。


「ちょ……、落ち着いて……」


 私は必死になだめる。


「やかましい! 勝手に人の娘連れ出して何をした! よくも娘をキズモノに!」


「キズモノになんてされてません、お父様!」


 理屈が通じずただただお怒りの公爵とうろたえるティオレ。

 見かねて割って入ったフェリシア。


 いやいや、今そんな言い合いしている場合じゃないでしょう。


「とにかく、俺は異変を察知して救援に来た。ブリステル公爵家の人々をいますぐ王都から避難させた方がいいって話になったんだ」


 ティオレがここに来た説明をした。


「エドゼルは今、牢につながれている。彼をエサにブリステル家全員の登城を促しているようだが行っちゃだめだ。王宮の奴らは一家全員を処刑する気満々だぜ」


「なぜそれがわかる?」


 ブリステル公爵が理由を尋ねた。


「ハーフエルフがどうとか言っているけど、その存在自体は珍しいものでもなんでもない。過去にミューレアと結ばれたのが王子だったから注目を浴びただけだ。人との間に子をもうけるエルフは過去にいくらでもいたし、そういう存在がひっそりと生きている事例はいくらでもある。そんなエルフの血筋を引いた者たちと協力して人間社会の情報を俺たちは集めている。王宮にもそんなやつらが少なからずいるのさ」


「君もそういう存在の一人ということかい。ただ、君はかつて滅んだ公爵家の血筋を引いているのではないのか? そういう意味では少し特殊なのでは?」


「ウ~ン、そうなのか……」


 私の指摘にティオレは困惑したように頭をかいた。


「悪いがそういう人間の基準は俺には関係ない」


「ヴェルダートル、それが君の母親の元姓なんだろ」


「サラ会長、だから何なんだよ。確かにおふくろは過去に国王と悶着があって、森に追放されたのを親父たちエルフに助けられたらしい。でも、おふくろに冤罪かけたのは王家の方だろ。それでまた言いがかりつけてくるとかさ」


 ティオレは自分の母が王家によって受けた被害をチクリと指摘するのだった。


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