第117話 王宮からの逃飛行
部屋に入れてもらった私は王宮の状況を説明した。
ブリステル家がかけられている『謀反』の疑いの内容。
ティオは実はハーフエルフであり滅ぼされたヴェルダートルの血も引いていたこと。彼とフェリシアが新たな王家の立ち上げを画策し現王家を滅ぼそうとしていること。すべて言いがかりなのだが、そういった容疑をブリステル家はかけられている。
さらに王太子によると、王宮に何かまがまがしいものが漂いそれで人々の精神が少しおかしくなっていることも。
「窓が開くとわかっていながら君たちは逃げなかったんだね」
私は言った。
「ああ、状況がわからないまま逃げ出すのは得策じゃないと思ったからね」
フォーゲル先生が答える。
「私は逃げ出すように誘いをかけられているのだと思っていたわよ。それにのって逃亡したら、明確な罪に問えない私たちも『共犯』扱いできるものね」
ミンディもわかっていたようだ。
「それにしてもずいぶん発想を飛躍させたものね。フェリシアとハーフエルフの子の接近をもとに『謀反』のいいがかりなんて」
ミンディが率直な感想を述べた。
「ああ、国王夫妻の恐れは理解できないこともないが少々過剰な気がする。ヴァイスハーフェンも滅ぼしたそうな言い方だったし……」
「それこそ、バカじゃないの! 公爵家は血のスペアであると同時に王家を守る盾。それでなくてもすでに三つ滅んであと二つしかないのに」
「私はこれからブリステル邸に飛んで忠告するつもりだ。呼び出しに応じて家族全員で王宮に行けば殺されると。君たちのところに立ち寄ったのは、エルフ王が話された内容を外に漏らさないために口封じされる恐れもあったからさ。ついてくるかい?」
私は三人に打診した。
「そういうことなら行くわ。ことは王都全体を巻き込む内乱になるかもしれない。クルーグ家の者たちにも事態を知らせたいしね。もちろん私は愛弟子のフェリシアの側につくわ」
「ああ、生徒の危機を見過ごすわけにはいかない」
「私も行きます!」
三名の同意を聞き私はバルコニーに彼らをいざなう。
「ここから風の『飛翔』でブリステル家まで飛ぶ。四人もいるからね、私の魔力で行くとギリギリなんだが、補助を頼めるかな?」
「私は風得意です。サラ殿の飛翔の勢いを手助けしましょう」
フォーゲル先生がサポートを申し出てくれた。
「で、この二人は、リーニャはもちろん『飛翔』の魔法は知らないし……」
「サラ殿と私でお二方を抱えていきましょう」
「じゃ、私はミンディを抱えていくから、先生はリーニャの方をお願いできますか?」
リーニャも小柄だがクルーグ家の女子はみなそれ以上に小さい。ペルティナも子猫を思わせるような華奢な子だからね。
「じゃあ、つかまって。大丈夫、サラ殿は飛翔魔法の名手だ。僕も補助するから、しがみついていればあっという間にブリステル邸までつくからね」
フォーゲル先生がリーニャを横抱き、俗にいう『お姫様抱っこ』にして不安をなだめようとしている。
私と先生がそれぞれ二人を抱えてバルコニーからジャンプし、そのまま上昇気流に乗って、王宮の上を越える。
途中何度も樹木のてっぺんに着地をしてはまた弾みをつけてジャンプ。
そして、ブリステル邸まであっという間に到着。
だが私たちは着地せず近くの林の木の上から一帯を俯瞰した。




