第112話 天啓?【王妃視点】
エミールが魔獣退治で大けがを負ったという報告を受けた。
「だから、私は反対したのです!」
私の心配が現実になってしまった、だからあれほど言ったのに。
誰も彼も私の意見は聞いてくれずいとしい息子を危険な地へと追いやった。
「落ち着くのだ、王妃よ。エミールの容体は安定したと報告を受けた」
国王陛下が私を安心させようとしているがそんなことでごまかされるものですか!
「どうしてそんなに冷静なのですか! それに今回は無事でもまた大けがをしないとは限らないでしょ! 早くあの子を王都に連れ戻してください!」
「駐屯地へやってまだ数か月じゃぞ。王子自ら志願したという体裁を整えて派遣したというのに、怪我をしたとたん尻尾巻いて帰ってきたとあっては格好がつかん。あの子の将来にもよくないであろう」
「それで次は本当に命を落としたらどうするのですか?」
「う、うむ……」
口ごもる国王陛下。
「そもそもあの子がこんなに大変な目にあっているのに、どうしてあの娘は平然と日常を過ごしているの?」
「あの娘とは、フェリシア嬢のことか?」
「ええ、そうですわ」
「王妃よ。フェリシア嬢とエミールはもう無関係じゃ」
「そもそもあの娘がエミールに難癖をつけたから……」
「疲れたのじゃろう。エミールも一命をとりとめたというしそなたも休むがよい」
そういって国王陛下は部屋を出ていかれた。
私はテーブルの上のカップを扉にたたきつけてやりました。
忌々しい!
昔はこんなじゃなかった。
学園に通っていたころは誰も彼も私に魅せられて言いなりだったのに。
当時王太子だった国王陛下もそう。婚約者だった公爵令嬢のイリーナさえ排除することができたし、彼女の実家の仕返しを恐れた私のために『反逆』の罪を問うて滅ぼしてくれたのだから。
それに比べて今は、息子のジークは婚約者であるヴァイスハーフェン家の娘の言いなり。ちっとも私の言うことを聞いてくれないし、弟のエミールまで追い出してしまったのよ。
国王陛下もどうして私ではなく、女狐の言いなりになったジークや、エミールに因縁をつけてきたブリステルの言いなりになっているのよ。
昔のようにちゃんと私の言う通りにしてよ!
私は怒りがおさまらず、さらにベッドの上の枕を叩きつけようとした。
その時よ。
学生時代と同じように頭の中に天の声が聞こえたのは!
『エシャールよ。ブリステルとヴァイスハーフェンを滅ぼすのだ。まずはブリステルだ。あの娘は本来ならヴェルダートルのイリーナのようにエミールから断罪される運命だったのに、手違いであのようなことが起きてしまった』
やっぱりそうだったのね。
エミールを責め立てたあの生意気な小娘とその一家。
『小娘はヴェルダートルの血を引くハーフエルフとつるんで王家を滅ぼそうとしている。手遅れになる前に急げ!』
なんと言うことでしょう
でも、私の言うことなんか今さら……。
『案ずるな。かつての力がそなたの中に満ちてきているはずだ。その力を持って国王や周囲の人間を諭すのだ!』
わかったわ。
休んでいる場合じゃないわ。
私は国王陛下の後を追いかけた。




