第110話 エルフ王の答えと急報【リーニャ視点】
「はい、先日の地震、これについて何かご存じではないかと? 一番揺れたのはどうやら国の東方、このエルフの集落の近辺でございますし」
アルツ氏がエルフの王に質問する。
「うむ、思い当たることが一つある。ユグドレーシアの木のある所からさらに奥に入った洞窟に数百年前に封じられた魔物がいる。そなたたちの先祖、五人の英雄が協力して封じた強力な魔物だ。もしかしたらその封印が解けかかっているのかもしれぬ」
フリーダ女王の時代のこと。
五人の英雄が協力して魔物を封じた話は子供でも知っている歴史であり、おとぎ話のように語られている話だ。
その五人の英雄が王家に最も近い公爵家の祖となった。
現在残っているのはフェリシアのいるブリステルと、サラ会長のいるヴァイスハーフェン。
物語ではエルフ王の助力のもと、五人が協力しても倒すことができず何とか封印することができたという。
「英雄たちでも倒せなかったのをどうやって……」
エドゼルがつぶやいた。
あなた様のご先祖の話ですけど。
「あれは私の先代が王の頃の話だからな。むしろ人間たちの方が戦闘の様子や魔物の弱点など何か書き残しているのではないか?」
エルフの王アランティアが言う。
「なるほど探してみましょう」
そう答えるとアルツ氏は、お暇するぞ、と、立ち上がって言った。
「なんだ? 今夜一晩とまっていけばいいのに、宴の準備もさせるぞ」
エルフ王アランティアが引き留めた。
エルフの宴、興味津々。
私を含め他の者は名残惜しそうにしている。
だが、それを打ち破って、帰らざるを得ない報告が急きょ入ってきた。
「治療師アルツ殿、至急中央駐屯地にお越し願いたい。エミール王子が大けがをなされた。現在そこにいる見習いの治療師で応急処置を施しているが、はやく対処しなければ危険な状態なのです。お願いします」
王宮と各駐屯地を結ぶ連絡、それをつなぐ魔石がある。
ホットラインのようなものだ。
急報を聞き皆立ち上がった。
「急ぎましょう、皆さまもお早く! 中央へ移動するにはいったん我々の駐屯地に戻るしかありません!」
ディレクが叫ぶ。
私たちはエルフたちへのあいさつを早々に済ませ、元来た道を走って戻る。
「ふう、ふう……、若い者と違って走って戻るのはきついわい……」
アルツ氏はけっこう息を切らしている。
「風の力で押します、少しは楽になるでしょう」
エドゼルがサポート。
フォーゲル先生も同様に術をかける。
「リーニャ、あなた光の力をアルツさんにあてて。光には体力回復の効果もあるのよ」
ミンディが私に言った。
光にそんな作用があるなんて知らなかった。
階段落ちの一件以来、顔を合わせていなかったエミール王子の危機。
その彼を救うべく、私やフェリシアの兄であるエドゼルも含めた一行が急いでいるのも奇妙な因縁だ。でも、今はそんなことすら考えている暇はない。
一刻も早く中央駐屯地にたどり着かねば!




