第109話 エルフの王を訪ねて【リーニャ視点】
魔法陣で移動した先は駐屯所の裏庭だった。
連絡を受けた駐屯所の人が一名案内人としてつき、計六名で私たちはエルフの集落に向かうこととなった。
案内人はこの駐屯地に勤めて五年のベテラン、ディレク。
樹齢百年は過ぎているのではないかという巨大な樹木が林立する森。
エルフを産むというユグドレーシアの巨大樹が近くにあるからか、ドゥンケルヒンターの森の中でもこの一帯は特に大きく成長した樹木が多いらしい。
フォーゲル先生のテンションがなぜか高め。
「リーニャ君、今の見たかい。青く発光したリスもどきだよ。ベースが小動物の魔物はせいぜい入ってくる人間を激しく威嚇する程度なんだけど、あれは普通のリス同様に穏やかだ」
私にも興奮気味に話しかける。
「やはりエルフの集落近くは魔物に与える影響も他のところと違うのかな。ああ、飛んでいる鳥もどんな風か知りたいけど、木々にさえぎられてよく見えないよ」
フォーゲル先生、生徒の私より子供っぽい!
「楽しんでいる様子を見ると連れてきたかいがあった、と、言いたいところだが、もうすぐ集落だ、気を引き締めてくれ」
アルツ氏に太い釘を刺されたようだ。
神社の鳥居にも似た木で組まれた門をくぐると、そこがエルフの集落。
木組みのツリーハウスがそこかしこにある。
そこから顔を出しているエルフの方々の髪は森に溶け込んでいるような葉っぱの色、あるいは花の色、等々。
彼らを見ていると、ああ、自分たちにもエルフの血が混ざっているのだなあ、と、しみじみ思う。
「お久しぶりです、皆さん」
ディレクが物陰から様子をうかがっているエルフたちに挨拶をする。
彼は東駐屯地の管理者として頻繁にエルフの集落に訪れているので、顔見知りがかなりいるようだ。
「この奥にユグドレーシアという巨大樹があるんだ」
二股に分かれている道の左側を指さしてアルツ氏が言った。
私たちは右側の道を行く。
やがて集落の中で最も大きな建物の前につき、アルツ氏がひざまずいたのに習って私たちもひざまづいた。しばらく待っていると建物の中から、プラチナブロンドに金色の瞳をした、二十代くらいの青年が出てくた。
「お久しゅうございます、アランティア殿」
案内人のディレクが言う。
「そちらの者たちは?」
アランティアと呼ばれたエルフの王が聞いた。
私たち五人があいさつをする。
すると、アランティア王は腕を広げ私たちに何かを投げるようなしぐさをした。
金色の小さな光の粒がふわふわと私たちに向かってきて、そしてそれは、私たちの体に吸い込まれるようにして消えた。
「ユグドレーシアの精気だ。エルフの生命の源だが、そなたたちの魔法能力の向上にも役立つだろう」
エルフ王の祝福です、と、ディレクが小さな声で説明する。
素敵な贈り物だったんだ。
「いにしえのやり方に倣って五名の戦士をよこしたということは、私に何か協力を仰ぎたいことがあるのだな」
ようやく本題にかかったようだ。




