第108話 特使
かくなるうえは私が特使の一人に、と、思ったが、ジークに反対された。
「危険はありませんよね。ドゥンケルヒンターの森はエミール王子も行っておりますし、私に至っては魔物退治をするわけではなく、ただエルフの王に会いに行くだけで……」
でも、ジークは納得しなかった。
「こんな時に君を遠方に派遣することがイヤなんだ!」
そういえば、王妃もエミール王子を駐屯騎士団にやる時にごねていたな。特定の相手に超過保護になるのは王家の血筋の特徴なのか?
それで別の誰か、リーニャを推薦することにしたのだ。
私もエルフの王に会ってみたかったんだけどな。
◇ ◇ ◇
出発の日に私が寮まで迎えに行き、王宮に同行することにした。
「長くても一か月ほどで戻ってこれると思うし、休んでいる間の授業の遅れなどは帰ってきた後、特別授業などで補完できるよう教授たちにも言っておくからね」
リーニャを安心させるべく私は言う。
エルフの王を訪ねる時の五人編成は内訳にも決まりがある。
火や風が主体の攻撃タイプ二名。
土や闇が主体の防御タイプ一名
六属性すべて使える治癒タイプ一名。
光や水が主体の浄化タイプ一名。
「君は浄化タイプだな。魔物っていうのはね、瘴気がもとで作られるんだ。含まれている瘴気の量が多ければ多いほど凶暴性が増し力も強い。光と水を組み合わせる浄化術があってね、魔物を弱体化させる、いわばデバフ係だね」
王宮の転移装置。
森の中央にある駐屯所へ向かう転移装置は使う人が多いので王宮の中庭にあるが、東側には限られた人しか行かないので地下にある。その隣の待合室に他の四人はすでに到着していた。
「リーニャ君じゃないか、君が『浄化』で選別されたのか!」
フォーゲル先生である。
「前々から、森の中央だけでなく東や西の端の生物を調べたいと希望を出していてね。それで運よく選ばれたってわけさ。しかしまさか君が……」
地震に懲りず研究のためにはまっしぐら、たいしたものだ。
「先の地震の時の冷静沈着な判断力を買って私が推薦したのですよ。わが生徒会の希望の星です!」
フォーゲル先生や他のメンバーに聞こえるように私は説明した。
「生徒会? もしかして妹がいっていたリーニャって?」
「私の姪もいま生徒会の活動に参加しているわ、ペルティナっていうんだけど」
若い男女が話に参加してきた。
エドゼル・ブリステル、公爵家の嫡男。
風と火が得意の攻撃タイプ。
ミンディ・クルーグ、ペルティナやザロモの叔母にあたり、フェリシアの家庭教師もしていたらしい。土と闇の防御タイプ。
「さあさ、全員揃ったなら、そろそろ出発するぞ。クルージュ君だったね。私はベリュンター・アルツだ。よろしく」
五人の中で唯一年配の男性。
彼がみなのまとめ役で、国内に四人しかいない治癒魔法のスペシャリスト。
五人は転移装置のいる部屋に移動した。
そして、一緒に魔法陣の中に入り消えてゆくのを私は見送った。




