第107話 リーニャを抜擢
心配していた余震は大したことなく、数日もすれば王都は落ち着きを取り戻した。
ようやく学園に戻ることのできた私はあることを頼むために、再びリーニャをダイネハーフェン相談所へ呼び出した。
やってきてくれたリーニャに礼を言い、私は早速本題に入る。
「地震だが、元いた日本に比べるとたいしたことはなく被害もそれほどではなかった。しいて言うなら国の東の方が揺れが大きく、若干崩れた家や火災が発生した」
私は全国の状況を彼女に説明した。
「では、そこが震源地ということですか?」
「正確にそれを測る魔道具も存在しないから何とも言えないが、多分そうだろう。それより問題は、もともと地震のなかった国に今回それが起きたこと。そしてそれで人心に動揺が見られることなんだ」
「はい……」
リーニャはどうして自分が呼び出されたのかわからず、あいまいな返事をする。
私は言葉を続ける。
「だから、王宮はエルフ王のところに特使を派遣することにした。今回の地震について何か助言を得ることができるのではと考えてね。そこで、その特使の一人に君を推薦しようと思っているんだ」
そう、特使の人選が今行われている。
これは特別なことが起きない限り行われないことなので、人選についてもただ身分が高いとかそういうことだけで選ぶものでもない。
「ちょ、ちょっと待ってください! エルフの王! 特使! もしかしてそれって超重要なお役目じゃないですか! なぜ平民上がりの、しかも学園に入ったばかりのぺエペエの私に?」
リーニャは大きな声で驚きを表した。
まあ、当然かな。
「心配しなくても、王宮にある転移装置で森の東端にある駐屯所まで移動すれば、エルフの集落はすぐ近くだから危険はないよ」
私はリーニャの心配を解消すべく説明する。
「危険とかそれも重要だけど、それだけが問題じゃないでしょう!」
「正式にエルフの集落を訪ねる際にはね、フリーダ女王の時代に五人の英雄がエルフの協力を得て強力な魔物をを倒した時と同じく、五人編成で訪ねるのがしきたりなんだよ」
「だから、その中にどうして私が……?」
「地震における君の冷静な判断力が欲しくてね。今はおさまっているけど、また起こらないとも限らないし、訪ねる途中でまた地震が起こったら一行がパニックになる可能性もある。だから、慣れている君をいれておきたいと思ったのさ」
この国では地震と言うのは日本と違いめったに起こらない。
それだけに今回の件での動揺は国の上層部にまで広がっていて、危険がないはずのエルフ王の元への特使派遣も、名誉なことなのに怖気づいてしり込みしている者が高位貴族の中にも数多くいた。
「君が出した学園内での交通整理のアイデアは王宮内でも感心されてね。どこの逸材がこんな機転を利かせてくれたのだって絶賛されているんだよ」
「いや、それって地震の際には帰宅困難や交通渋滞が起こることを、前世の日本で知っていたまでで……」
「しかし、その知識と慣れが今は貴重で必要なんだ、頼むよ」
私は懇願する。
「まさか日本での地震の経験が異世界転生チートの元になるとは……」
リーニャは複雑な顔をしながらそうつぶやき、根負けしたように了承してくれた。




