第106話 地震と炊き出し【ユリア(ミリア)視点】
その揺れは突然襲ってきた。
皆しばらくは茫然としていたが、気を取り直すと熟練騎士のセイダさんが後輩騎士たちに命じていた。
「おい、森の様子を見る班と町の様子を見る班、それとここにとどまって防衛しながら片づけを手伝う班に分かれるぞ。動ける者は動け!」
「「「「「「はい!」」」」」」
すぐさま班分けが行われ行動が開始。
しばらくして、町の様子を見に行った班が返ってきた。
「やはり町医者一人じゃ対応できないみたいです。それからみな不安がってそれほど被害を受けていない住民も私たちが来るといろいろ質問しまくっててね。私たちだってよくわからないというのに……」
「では、治療師を何名か派遣しましょうか?」
リーダー格の先輩治療師が申し出て、町に派遣する者を何名か、私もその中に選ばれた。騎士たちは馬、治療師たちは馬車に乗って町に赴き、中央の広場に討伐の時の野宿用の一番大きなテントを張ってそこを臨時の治療所とした。町医者とも話し合い重傷者は彼が引き受け、軽症者はこちらで引き受けることとなった。
気になったのは、怪我をしているわけではない町民たちまで建物の中に入ろうせず外に出て私たちの様子をうかがっていること。
不安を払しょくする情報が欲しいのかもしれない
もうすぐ日が暮れるというのに、家に帰らずみんな広場の周りをうろうろ。
まだ冬のさなか、どんどん寒くなってくるというのに……。
私はあることを思いつきリーダー格の騎士に提案した。
「あの、ここで炊き出しをして町の人に食べ物をふるまうというのはどうでしょう?そろそろ夕食の支度をしなければならない時間だというのに、皆さま、怖がって家に帰ろうとなさらない。温かいものをふるまったら元気づけられると思うのですが?」
「タキダシ?」
「はい、騎士団の方々は大きな獲物を狩ると、中庭で大なべを使って野菜もいっぱい煮込んでスープを作り、それを研究所や治療所の私たちにもふるまってくださいますよね。それをこの町でやるといいと思うのですが?」
「面白い考えだな、聞いてみよう」
リーダーは早馬を駐屯所に飛ばし、小一時間ほどたつと食料や医療用品などを積んだ荷車がやってきた。
保存してあった肉や野菜、それを豪快に煮込んでできた野外メシ。
できたスープを町の人々に配ると喜ばれた。
そうやって数日が過ぎたが、幸い余震らしきものは起こらず、数名を町に残して私たちは駐屯施設に戻ることとなった。
「いやあ、ユリアちゃんの炊き出しのアイデア良かったな」
「まだ、若いのに最初から最後まで冷静に対処していたし、たいしたものだよ」
セイダさんたち他、様々な方に褒められとてもうれしかった。
こんな誇らしい気持ちは、記憶がないので確かなことはわからないけど、おそらく生まれて初めてだと思う。




