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悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない  作者: 玄未マオ
第9章 森の騎士団とエルフ
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第105話 さまざまなうわさ【ユリア(ミリア)視点】

「失礼しました。エミール……、様」


「様もいらん、ついでにいうと敬語もいらん。僕たちは同輩だ、バルドリック」


 消毒を終えると、私は負傷した少年の血の付いた金髪を洗浄する。


「ありがとう。えっと、君、どこかで会ったことないか?」


 患者の少年が私に話しかける。

 きれいな碧玉色の瞳、一度会ったら忘れないと思うのだけど……?


「おいおい、女口説けるとは、怪我してるけど元気じゃねえか!」


 熟練騎士のセイダさんが彼の頭を軽くぺしっと叩いてからかった。


「違いますよ、そういう意味じゃ……」


 エミールと呼ばれた少年は言い訳した。


「まあ、美人は似るというからな。おおかた城で見た誰かと面差しが似ているってとこじゃないのか」


 セイダさんが言う


 彼の治療が終わると次の患者の処置に呼ばれる、その場にいた三名にお辞儀をし、私はその場を離れた。


 けが人の治療が終わると私たちも一息つける。

 休憩所でお茶を飲んでいると熟練治療師のヨナスさんがこぼした。


「この時期、新人のけがの治療も多いのだけど、今年は特に多いねえ」


 そうなのですか、と、私が聞くと、彼女はさらに話をつづけた。


「ああ、いつもの二倍さ。指導の達人のセイダさんですら、ついていた新人に怪我させているからね。彼だからこそ王子の指導を任せていたのに」


「王子なのですか、さっきの方は?」


「第二王子のエミール様さ。表向きは、国を守るために自ら志願し修行に来た、と、なっているけど、その前に公爵令嬢との婚約が解消されたり中央じゃいろいろあったんだろうね」


 ヨナスさんは情報通。

 この駐屯地に似つかわしくない風貌の方は王子様だったからなのね。


「じゃあ、殿下と呼んでいた赤毛の方は家臣かなにかですか?」


「あれは騎士団長の息子さ。あの子もうわさじゃ公爵令嬢に無礼を働いてここに飛ばされたって」


「……」


「ここじゃ関係なく魔物を倒すだけだけどね。かなりの美男子だけど入れ込んじゃダメだよ、いずれ城に帰ってしかるべき家柄のお嬢さんと結婚するんだろうからさ」


 忠告はヨナスさんなりの親切かな?

 確かにあまりの美しさに見とれてしまったことは確かだが。


「騎士たちがこぼしていましたよ。最近エルフから提供される情報が少なくて、魔物退治にてこずることが多いって」


 私たちの会話を聞いていた別の治療師アキハさんが会話に入ってきた。


 魔物の多いこの森だが人間の味方がいないわけではない。

 エルフの一族は人間に好意的で、魔物が出没する場所や弱点などをよく教えてくれれる。それが討伐の役に立っていたのだが最近それが減って、だから、怪我人がよく出るらしい。


「一度森の東南のエルフの集落に足を延ばして状況を確かめてきた方がいいんじゃないかって意見も出ているそうですよ」


 森の中での芳しくない変化、この時はまだ自分たち治療師には関係のないことだと考えていた。



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