第99話 月夜の飛翔【フェリシア視点】
「フェリシア、最近はどうだ。学園では楽しくやっているか?」
家族四人そろった夕食で父が私に質問した。
「はい、お父さま。生徒会に参加するようになってから新しいお友達もできましたし、とても楽しいですわ」
私の答えにお父さまは、そうか、と、相好を崩す。
「生徒会というと、シュザンナ。あのヴィンクラー家の子息と婚約していた娘、婚約は無事解消できたのかな?」
どうしてお兄様がそんなことを気にするのかしら?
「婚約を解消してからのシュザンナは、人が変わったみたいに明るくなったってリーニャやペルティナは言ってました。私は彼女が婚約解消してから生徒会に入ったからよくわからないのだけど」
「今度アリシアやエリーゼと一緒に生徒会のお友達も我が家に招待しましょうか?」
私の話を聞いて母が提案した。
「それはいいですね」
なぜかお兄様が賛同、お兄様って意外にわかりやすいお人なのね。
「あ、そうだ、お父さま。平民のダートルという方をご存じじゃありませんか?」
「ダートル? 知らないな……」
「そうですか……」
「どうしたのだ?」
「いえ、なんでもありません」
「わが公爵家は王家に次ぐ立場だから、我々は知らないけど向こうは知っているってこともあるんじゃないのか」
私たちの会話を聞いてお兄様が言う。
「そうですわね」
今日のティオの質問を聞いて、もしかしたら、と、父に尋ねてみたが疑問は解けなかった。単純に兄の言う通りかもしれない。
食事の後、自室で明日の予習をしていた時、バルコニーの窓からコンコンと何かが叩く音がした。
月の明るい晩なので、窓の外に立っている人の影がはっきりと。
誰?
そう思う間もなくその人物は窓を開けて入ってきた。
鍵は締まっているはずなのに!
「よう、フェリシア」
「あなたは……、ティオ……」
「ああ、ちょっと今から俺と一緒に来てくれないかな。親父がやっぱりあんたの話を聞きたがってるんだよ」
「父にも聞きましたが、あなたのお父様のことは知らないと言っていました。それより、どうして……」
狼狽する私の手を引いてバルコニーに出ると、そのまま私を抱きかかえてティオは飛び降りた。
「!!!」
しかし地面には落下せず、庭の樹木のてっぺんに軽く足をかけまたジャンプ。
我が家の庭を超え、王都の建物の庭を越え建物の密集する地域につくと、今度は屋根から屋根へ飛び移ってどこかに向かって進んでいく。
私を抱えながらよくこんな飛翔を続けられるわね。
風魔法が得意な私でも自分の体を浮かす魔法はまだ使えないというのに。
そして王都のはずれのとある大きな屋敷の前に着地。
街はずれなのに貴族が済んでいそうな大きな屋敷。
この地域はピクニックの際に馬車でよく通るけどこんな建物はあったかしら?
ティオが私を中に入るよう促す。
中は普通によく見る貴族の邸宅で、その大広間では人間離れした美しい容姿の男性が待っていた。




