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出会いは衝撃的でした。

教室に入ると、自主をしている生徒や教卓に集まってお菓子を食べている女性陣など、皆思い思いに過ごしていた。そんな中で、一人読書をしている大井さんの姿があった。大きさや本の表紙の色から、ラノベであることがわかったが、タイトルまでは分からなかった。そんな大井さんを横目に、窓際から二列目、最後尾の席についた。昨日の事があったせいか、自然と大井さんの方に目が行ってしまう。ベリーショートの髪は色が霞むことなく深黒に染まっており、褐色の肌とよくあっていた。元々150cm台の身長ながら、撫で肩も相まってかより小さくこぢんまりと見えた。だが、陸上部で鍛え上げられた無駄のない健やかな容姿をしている。(特に前のあたりは)

「でも…話してるところ見たことないな」

部活中はどうなのか知らないが、休み時間や昼食時、誰とも話しているところを見たことがなかった。そんな彼女のことを周りの奴は、自分勝手や感情が欠落している等と揶揄していることもしばしば。だからこそ、図書室で見せたあの表情は何だったのか。謎は深まる一方である。

 昼食の時間になり、食堂に向かう生徒が大多数いる中、私は図書室にいた。

「私も、ラノベを読まないのはどうかと思うな」

「ですよね。気持ち悪いと言われることが多々ありますが、日本の文化としてみればそれは唯一無二のもので。」

そう言って一緒に熱く談合しているのは、司書さんの小林さんだ。

ポニーテールを腰まで伸ばし黒いニットを着ている。いかにも魅力的な女性である。小林さんはラノベが好きで、私が学校有数のラノベコーナーにいたところ、後ろから話しかけられたのが始まりであった。

「そうだねぇー…そもそも本を読まないなんてあるし、一概に気持ち悪いと思っている訳でもないし」

「…視線ですかね?」

「それもあるかもねぇ〜」

ぱっと見、ふわふわしている印象を持つが、誰よりもしっかりと物事を見ている小林さんは尊敬できた。

「一葵君はどうして本を好きになったのぉ?」

不意に投げかけられた質問に言葉が詰まってしまった。

談合と言っても基本お互いに関することについては言及することはないので今日のようなケースは稀であった。

「……多分、絵を書いてからだと思います」

「えっ、一葵君絵描けるの?」

「まぁ付け焼き刃には変わりないんですが。現にそこにあるポスターだって…」

そう言って入口付近に貼られていたモノクロのポスターを指した。

すると小林さんは、おもむろに席を立つと、ポスターを間近で舐め回すように見た。

「これ描いたの?」

「そうですね」

「色使わないんだ…」

「黒の魅力に呑まれてましたから、色の塗り方を勉強しようとも思わなかったんです。その分しっかりと表現しているつもりですが」

「もう描いてないの?」

「…まぁ…ポスターぐらいならたまに描きますけど、制作はもうしないですね」

「どうして?」

「っ……絵に…厚みが出なかったから…です」

他にも理由があることを一葵は十分に理解していたが、これ以上問い詰められるのは嫌なので端的に要点が伝わるように説明した。

それに納得はしていないようすのこばやしさんであったが、色々と察したようで、それ以上言葉を交わすことはなかった。

そうして小林さんが椅子に腰を下ろしたとき、不意に図書室の扉が軋む音をたてて開いた。

そしてそこには

「……本を返しに来た」

「來羽ちゃんいらっしゃ〜い」

私は勢いよく立ち上がったかと思うと、書架整理を始めた。

その様子を小林さんは、不敵に笑みを浮かべると、

「じゃあ一葵君頼んだよぉー」

そう言って手をひらひらさせながら奥の部屋に入ってしまった。

何分、否、何秒しか経っていなかっただろう。私は電源のついていないパソコンと向き合うことしかできなかった。

昨日あんな大口叩いたのだ、顔なんて見ることができない。

最初の驚きとは打って変わって、気まずさに変わっていた。

「話って何?」

意外にも最初に口を開いたのは大井の方であった。

放課後にでも捕まえて話そうと思っていたのだが、本人から話を振られては仕方がない。

「いや、昨日借りた本のことで…」

「あっいやっ…うん、あの本ね…うん……それで?」

(それで?ってなんだよ。というかよく喋るじゃん)

「………返却日の日付が間違って…」

「…は?」

顔面蒼白とはまさにこのことで。大井さんは膝から泣き崩れ、嗚咽混じりの声にならない声を地面に叫んでいた。

その様子を見ていた小林さんが呆れた様子で奥の部屋から出てきた。

「來羽ちゃん大丈夫? やだねぇー鈍感な男って」

傍から見て完全に悪者になった一葵であった。


「もう落ち着いた……?」

「はい…ありがとうございます」

そう言って紅茶をもらった大井はちびちびとそれに口をつけた。

その様子を横目に、一葵は椅子にどっかりと座ってふてくされることしかできない。

「小林さん、鈍感ってどういうことですか?」

それを聞いた小林さんは心底呆れた様子で、そういうところだよー、とおもむろに貸出用のパソコンの電源を入れ、貸出リストの昨日の記録を開いた。

「どこかぁなぁ〜……あった、ほらここに來羽ちゃんが借りた本がおるじゃん?」

「はい、おりますね」

「その本さ、頭だけよn…」

「みるなぁー!!……おらっ!」

刹那、横腹に強い衝撃が走った。突然のことで三半規管の全てが平衡を保てないほど強い衝撃。

一葵は、椅子ごと大きな音を立てながら倒れ込んだ。幸いにもあと数センチのところで机の角にあたり流血沙汰になるところであった。

「いってぇぇぁ!」

あまりの衝撃に突き飛ばした本人でさえも驚いていた。

「えっと…大丈夫?」

「おまえ…陸上部なんだからちょっとはてかげんしろよぉ…」

生徒の喧騒が響く校内で、唯一今日だけは、図書室が一番うるさかった。

社会人の人たちと比べて全然甘いのは分かっているが、ちょっと忙しすぎて…投稿できませんでした。

これを機会に、投稿頻度落とします。

さて次回の話は大きな展開が待ち受けています。

より良い話にするためにも、コメント等お待ちしております。

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