プロローグ
投稿は、4日に一話は出す予定です。
想像できただろうか。
畳特有のい草の匂いに包まれた十二畳の今どき珍しい
和風テイストの部屋の中で、各自持ち寄ったスケッチブックや
液タブで絵を描いている。
微かに香る夏の匂い。部屋に広がる 甘いどら焼きの匂い。
そして、淡く卯の花色に輝く君の香り。
これらの匂いが私の鼻腔を優しく抱擁する。
「変わったね」ふと、机を挟んで向かいにいる妹が頬杖をつきながらそう呟いた。
私はその言葉に皮肉や軽蔑が含まれないことを分かっている。
「…そうだな」苦笑しつつ肯定すると、妹は満更でもない顔をこちらに向けてきた。
変わるというのはとても怖い。
私は孤立していた。日常会話をする相手もいない。
ただひたすらに自分の中の自分と会話した。
皮肉なことに、自分と話しているときが一番楽しく感じてしまった。
そうして時間を垂れ流しにしてきた私にとっては、今この状況はにわかには信じがたかった。
共通の趣味で笑い合える。
心の葛藤と孤独叫びに、幸せが衝突し息が詰まる。
「私は君が好きだ」
明日になっても君と話していたい。
来週になってもきみの切れ長な眉を見ていたい。
来年になったら今度はちゃんと二人浴衣を着て、花火を見たい。
だからどうか、
「私のことを好きでいてくれ」
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