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まさか、俺が現世で魔王になるなんてっ!!  作者: あかつきのはげめがね
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前職「魔王」

 自動車免許センターで、原付免許の試験を終え、合格発表を待っていた孝允は、センターの職員に声を掛けられて、別室の通されていた。

 そして、けたたましくパトカーのサイレンが近づいてきたと思ったら、建物の近くで止まり、慌てた様子の警察官が入ってきた。

「前職をお持ちの方は、こちらの方ですか!?」

「はい」

 センターの職員に案内されてきた警察官が、孝允の顔を見る。

「魔王の前職をお持ちと聞いたのですが、ご認識はされていましたか?」

「認識というか、住民票の備考に書いてあるなってだけで・・・」

「相談ダイヤルへのお電話はされました?」

「原付免許の試験があったので、このあとやろうと思ってました。フリーダイヤルでしたし」

 孝允は、母親の影響か、余計なことまで言った。

「一応、任意なのですが、ご同行いただいてもよろしいでしょうか」

「はい、かまいません。あ、荷物・・・」

「荷物はここにあります」

 センターの職員が、孝允の席に置いてあった荷物を持ってきてくれていた。

「あ、後これもどうぞ」

「これは?」

「免許です。合格おめでとうございます」

 合格していた。というか、受験は有効だったようだ。


 パトカーに乗せられ、孝允は警察署に行くのかと思いきや、生活福祉事務所に連れていかれた。

 そこで、会議室に通されて、朝テレビでしゃべっていた「大賢者」のおじさんとリモートで対面することになった。

「私が、『大賢者』の前職を持つ、佐倉義人という。よろしく」

「麻生孝允です」

「ふむ、なんという禍々しいオーラだ・・・」

 普通の人には見えない何かが、この初老の男にはリモート越しにも見えるようだ。

「自覚している能力のようなものは、なにかあるか?」

「一応、手からこんなものが出ます」

 孝允は、手から黒い霧のようなものを出した。横に立っている生活福祉事務所のケースワーカーさんが、あ、涼しい、などと言っている。

「おお、それこそ『黒い波動』、魔王の証だ!!」

 この霧は、黒い波動という名前らしい。

「これって、何が起こるんですか?」

「それは、文献にも何も書かれておらぬのだ。効果は一切不明なのだ」

「魔王って、他に何が出来るんですか?」

「ふむ、文献に残っているのでは、魔物を召喚できたとあるな」

「瞬間移動とか、すごい魔法が使えるとか・・・」

「そういったことは書かれておらんな。基本、魔王城から動かぬ存在だったため、非常に資料が少ないのだ」

「そうですか・・・」

 瞬間移動ができないなら、原付免許は生きそうだ、と孝允は思った。

「あの、『勇者』に命を狙われたりしませんか?」

「何も悪事をしなければ大丈夫だと思うが。それに勇者は、他の前職と違って能力を上げるのに魔物を倒さねばならん。この世界には魔物がおらんのでな・・・」

 孝允が、むやみやたらに魔物を召喚したりすると、それを倒した勇者が強くなり、迷惑な魔王を退治するという事態もありうるということか。

 魔物を召喚するのはやめようと孝允は思った。


 リモートでの面談が終わると、今度はケースワーカーさんとの話が始まった。

「受験や就職時に、前職を報告しなかったことで、不利益を被ることはありません。そこは法律によって保障されています」

 どうやら履歴書や受験票、たぶん内申書にも書かれなくてよさそうだ。

「前職を公開することを希望しますか?」

「しません」

 大したことが出来ないし、何か有利になるとも思えなかったので、孝允は即答した。

「あと、これらの書類を親御さんに渡してください。一時金として5万円は今すぐにお渡しします。あと毎月の1万5千円の前職手当てが支給されます。前職を持っていることで、生活に支障が出る場合もありますので・・・」

 どうやら今日は生活保護の支給日らしく、窓口には生活保護費を受け取るために受給者が行列を作っていた。銀行振り込みとかではないようだ。

 孝允もありがたく一時金を受け取る。

「あの、住民票に魔王って出てしまうのは、隠せないんですか?」

「あれは、システム的な制御ではなく、勝手に印字されてしまうので・・・。住民票を取得する場合は、直接市役所に来ていただけましたら、発行する際に職員が黒マジックで塗りつぶして訂正印を押してお渡しすることは可能です」

 コンビニでは、そこまでは対応できないようだ。

「わかりました。いろいろとありがとうございました」

「大変かもしれませんが、頑張ってくださいね」

 孝允は、なぜこの件が生活福祉事務所の扱いになったかわかった気がした。日常生活を普通に遅れない人も出てくるのだろう。前職が原因で職を失ったとか。

 家に帰ると、書類を母親に渡す。

 母親は、小躍りしながら書類に記載を始めた。

 テレビでは、前職が「盗賊」であったため、銀行を解雇された元銀行員がインタビューを受けていた。

 一時金が手に入った孝允は、買おうと思っていた原付を、スクーターからHONDAのモンキーにしようと思った。

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