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議員妻子の拘束場所から10㎞地点でボンバリング。後方支援部隊は高速を飛ばして、こちらに向かって来ている。
私は、ダニエルのパソコンタブレットを使い、サーチ検索を広範囲に掛けて誘拐犯関係者通信網を検索。
アメリカ映画のマト◯ッ◯スのようなイメージ。
「うん。なんとかなりそう。誘拐実行犯は、あの建物だけで、周囲にはいない。
誘拐目的メッセージをこれから出すみたいだから…捕まらないと自惚れているみたいね」
ヘリの中は、私、ダニエル、警護班副隊長と部下3名。私以外は、全員武器を所持。
え、私?うふふふ~身体に結界を張っているから、防御率100%よ。
私は、パソコン検索から得た新たな情報を、対策チームトップの警護班隊長に送信しておく。
ああ、私って仕事が丁寧だわ~と自画自賛を心の中で呟き、頭を切り替える。
「では、作戦決行!5秒後に、保護対象者の半径1mに飛ぶ!
5、4、3、2、1、Go!!!」
私の作戦合図の言葉と共に、6名が現場に転移。ここは、古い民家の2階だろう。夜だけど…灯りもつけて貰えず、部屋の中は月明かりだけで、顔があまり分からない。
議員妻子が猿轡と両手首を後ろで拘束された状態で、床に転がされた状態だった。
母親は、突然目の前に現れた複数の人間に、目を見開いていたが、私と目が合うと…更に驚愕な表情をしていた。
私は暗視カメラつけていないから、何故アジア人の女性が…と思われているのだろう。
警護班副隊長がバッチを夫人に見せて、唇に人差し指を充てると、暗いが…面識があるのだろう。目元が下がり、ゆっくりと頷いた。
ダニエルがこの場に残り、副隊長と部下はドアを開けると、制圧するために作戦が開始された。
ピシュン、ピシュン~~ドンドン…。ガタガタ…うわあああ~!!ぎゃあああああ~~~!!!…
「誰だ! どうして!何故…ひぃぃぃーーーー」と英語やタイ語で騒いでいる。
…戦っているね。専門家だからね、あっちは任せるわ~と考えつつ…ダニエルは議員夫人の猿轡と拘束を外し、私は男の子を解放した。
震えながらも気丈に気持ちを立て直した様子で、私達に感謝と状況説明が求められた。
「まずは、制圧し安全な場所に移動してから御説明致します」
夫人と男の子は、頷き部屋の外の音を聞いていた。私は念のため、この部屋自体にも結界を張っておく…部屋の床の強度がね…下で発砲したら貫通しそうだしさ。
爆発物使用されたらね…まあ、保険だよ『危機管理』は大事だからね。…帰るまでが遠足って、日本では幼稚園の時から先生に言われているから!大事、大事。
◇◇◇◇◇
「ああ…グレイシー……ハリー…。無事で、無事で善かった」
議員の顔面は蒼白だったが、2人を抱締め家族4人でお互いに囁き合っている。
副隊長達は10分程度で現場を制圧し、犯人達を拘束。8人いたそうだ。後方支援部隊が来るので、副隊長と部下2名が現場で待機。
私とダニエルは、夫人と息子と共にボンバリング中のヘリへ転移し、ホテルのヘリポートに着陸した。
で、家族の再会が目の前で繰り広げられていた。
「奥様、無事のご帰宅おめでとうございます。議員、子ども達も疲れていることでしょう…客室で入浴や食事、医師の診察をお受けされた方が宜しいかと…」
そうだね。気が利くね~流石、秘書官。優秀だわ。
領事館勤務の医師がホテルに向かっているらしく、一家は客室に移動された。
ホテルには、警護官が3名付けられ、私とダニエルは入れ違いで大使館に向かうことになった。
「ねえ~ダニエル。お父様達には何て言ったのよ。もう、23時なんですけど…」
17時から夕食を取り、ダニエルに連れられ…今、夜中じゃない?若いから、眠くはないけれど…これから大使館!?
「ねえ、日本じゃあ労働基準法ってのがあって、未成年が働ける時間は限られているのよ」
人助けだけど…助けたあとのフォローはさ、明日じゃ駄目なの?と、ちょっぴり訴えたわ。
分かっているから、言ってみただけだけどね!
青いプレートの外交ナンバーを付けた高級車は、存在感がある大使館エントランスに到着。
青プレートの車は、走行ルートをチェックされていると聞いている…どこも外交的に大変だなぁと思っているよ。
玄関には、大勢の職員と大使夫妻が出迎えてくれた。
「急な申し入れの緊急事態に対応して頂き、感謝しています」
大使が開口一番に謝意を伝えてきた。夫人も満面の笑みで出迎えてくれる。夫人が手を握り、貴賓室へ案内してくれた。
あちゃあ~歓迎ムードは嬉しいけれど…この方達、私の事をどの程度御存知なのかしら?
横目で、ダニエルと目線を合わせたが、にっこり微笑むだけだ。く!イケメンめ…微笑めば良い訳じゃないよ!
内心で文句を言いつつ…いつものように、ダニエルが上職へ報告をし、私は所々相槌をうって、どうにか今日は解散となった。
…後日、また呼ばれるらしいが。はああ…眠い。私、今日は、どこで寝るの?シャワー浴びたい…高温多湿のタイの夜だからね。
職員が客室に案内してくれた。今日はここに宿泊して下さいと笑顔で丁寧に説明された。
誰しも、最大限の敬意を態度で表してくれる。
無事に救出出来て善かったね!うん。良い夢みれそ~。
父には、念のためメールしておこうっと!
◇◇◇◇◇
「凛子、今度のポトラックパーティーは何を持って行きたい?」
母の質問は、学校で行事があり、各家庭で料理を持ち寄ってパーティーをする事だった。
インド系タイ人のパトリシアは、サムサを持ってくるって言ってたっけ。
中華系タイ人のファインは、ソムタム。イタリア人のビィーチェリスはピザ…日本人の私は?
「あんパンで良いと思うよ。美味しいし…だけど、桜の塩漬けや、ケシの実は嫌がれると思う」
ビーンズを甘く煮るのは、外国では稀らしく倦厭されがち。でも、母の手作りパンは、店で売れるような出来映え。
パン講師の資格を何種類か所持しているから本格的。
「そ~お?またパンで良いの?」
そう言いつつ、笑顔の母は嬉しそうだった。
学業の方は、プログラミングなど不馴れ教科に家庭教師を付けて貰い、徐々に上達している。
弟は、下の学年だけど、いずれは!って理由から一緒に授業を受けている。
英語での授業で、理科や数学をするため、日本語↔️英語で辞書を引かず、英英辞書を使い、英語↔️英語で思考能力を強化していった。
専門用語も語網羅が増え、日本に居た時と段違いに、ここの生活が馴染んでいく。
読書も雑誌も新聞も、全て英語。
ローカルの美術館や動物園、水族館では、窓口の職員にタイ語で会話をすると入場料金がタイ人料金になる。外国人への料金設定は高いのだ。
ここのインターでは、国語の授業はタイ語でおこなわれていた。
英語、タイ語…そしてフランス語も。フランス語は、ラッキーな事に、白銀台のバレエレッスン教師がフランス人だった。
だから、日常会話とバレエ用語は大丈夫~と言う訳で、助かったよ。母よ~ありがとう御座います。
社交的な母親と一緒に、あちこち出歩いていたお陰で、人見知りもなく、自己肯定感が強くなっていた。
幼少期は、よく泣き、中々寝なく、食も細くて吐きグセがあったそうで…育児が大変だったそうだった。
逆に弟は、お腹に居るときから静かで、よく寝て、離乳食もよく食べて、風邪知らず…手が掛からなく、天使だそうだ。
うううー、幼少期の話題になると…身の置き場がない。グッスン…私の馬鹿、馬鹿…。
◇◇◇◇◇
にこにこ笑顔の男性は、私への賛美で溢れている。うんうん…あまり手放しで誉めすぎると、胡散臭い。結婚詐欺のようだ…実際、経験した事はないけどね。
ああ…もう止めて!
「~て事で、凛子。アメリカ国籍を取って、本国で暮らしましょう!スキップで大学入学出来ます。」
「既に、アメリカ国防総省上層部から勧誘が来ていますよ」
勝手に私の人生設計が立てられているけど…いやいや、何故急いで大学に進学する?しかもアメリカ…。
私はまだ中学3年生の学年。日本では、義務教育期間だよ!
「…ダニエル。誉めてくれて、ありがとう。嬉しい」
「けれど、私は家族と一緒にいたいのよ。」
「勿論、私の力が必要な時は呼んで?お手伝いするから」
笑顔で応答して、軽く拒絶の意思を伝える。
っえ?外国人には、はっきり言わないと分からないと?いいえ~彼らのように、優秀な人は理解出来るのよ。言い回しや単語選択次第でね。
「そこ迄ですよ!!ダニエル=クルーズ!」
「目を離した隙に、未成年を夜遅くまで働かせるとは…レディに対しても、御両親にも大変失礼ですよ」
時間が取れずに、急遽、学校のカフェテリアでダニエルと会っていたから…誰かが、アシュレイに連絡したのかなぁ…?
まあ、この学校も含めてセキュリティが高い校舎内を確保するため、入場ゲートでは身分証明書を提出だからね。
アメリカ人…しかも保護者じゃないから。私と面会予約を確認されつつ、警備員が同行して、私との約束を確認。
そこまで警戒されてしまうのよね~よく来たな!て感心する。
「なんだよ…国の上層部が、凛子を正確に評価しているからこそ、勧誘しているんだろうが…」
ね!って、ウインクしないで…ちょっと照れるから。
「何を言っているんですか。評価は、当たり前です。私が伝えたいのは、凛子を日本から引き離して、囲い込むのは笑止千万と理解した方が良いと…はあ、この男は!」
うーん、茶色のイケメンと金色のイケメンが目の前で会話をしている…日本語で。
2人共、誉めてくれて嬉しいけれど…そろそろ帰りたいな。
スクールバスは既に出発している…。私はダニエルの車で送って貰う予定なんだけれど…秋山さん呼ぼうかな?
父が日本に出張で一時帰国しているから、今週は呼び出しても大丈夫とメッセージが届いているんだよね。
…な~んて上の空がバレたのか、2人が私を見つめていた。
ああそうだ…来週、アメリカ大使館のパーティーに招待されているんだよね。
あの後、昼頃起きて…自宅迄ダニエルに送って貰った。
父と挨拶をして、普通の日常に戻ったよ。学生だからね!課題もレポート提出もあるし。
しかも、音楽の授業では全員バイオリン必須。
帰宅3日後に、改めて前中後の情報確認が領事館で行われ、議員夫妻と御会いした。
夫人も息子さんも診察の結果、問題なかったそうだ。擦過傷程度で、今のところメンタルヘルスにも問題ないが、セラピーを母子で受けていると。
涙ながらに、感謝された。
うんうん、善かった。
…怖かったよね。安全な場所に戻れて、本当に良かった!
◇◇◇◇◇
父の妹…私の叔母は看護師をしている。
で、私に時々気持ちを吐き出していたんだよね…。
犯罪に巻き込まれた人達へのサポートについて。
『あなたは何も悪くない。悪いのは、加害者』
『吐き出したい…苦しい、辛い気持ち。なんで自分がこんな目に遭うのか納得出来ない気持ち。誰にも知られたくないこと…。
何でも、ここで吐き出して…あなたが抱えている、重たくて辛い真っ黒な石…少しずつ削って、ここに置いていって…』
『あなたの辛い、苦しい思いに蓋をして思い出さないようにしたい時は、あなたの意志決定を尊重していきましょう。』
『あなたの前には立たないけれど、あなたを横から支えることが出来る場所を作りたい』
『あなたの後方支援をする場所がある…と覚えていて欲しい』
『あなたが抱えている、重たい石。一人で長く持ち続けると疲れてしまうね。
一緒に抱えて、荷物を渡せる人が、一人二人と増えていくにつれ、あなたがあなたの脚で立ち続けることが出来る量の石になっていると思う…かな』
『あなたは孤独ではない…あなたの周りには、あなたを見守る人達がいる。そう伝えたい…あなたの経験した辛くて怖かった思いを[分かる]とは言えない。
けれど、思いを1割でも分かってくれる人がいると思えると…人は一歩一歩、前に進んで行ける。』
『勿論、一歩二歩前に進めたかと思っても…揺り戻しや何かの切っ掛けで思い出し、一歩二歩後ろに下がってしまう時期もあるかもしれない』
『永く…永く続く人生…劇的に効果がある薬はないけれど…少しでも、暖かな未来を願いましょう…』
言葉の選択が難しいし、けれど支えていきたいと…。
叔母ちゃんの、頑張っている姿を小さい時から見ていたから、今の私が存在すると思っている!
叔母ちゃんの影響力は、大きいよ。
…叔母ちゃん、元気にしているかな?
叔母ちゃんの背中を見て、私も私が出来る事をやるから!




