女子怪1
天野さん視点で女の怪異による女子会話です。女子怪2からは『』のみのトークとなります。
無事に肝試しも終わった私は、人より多めに出された宿題に一区切りを入れて、ぐっと背伸びをした。内容的にはそれほど難しくないが量が多いので、七月から本気を出していかないと、八月に地獄を見る。始業式に徹夜は避けたい。
「……アイス食べよ」
親も仕事でいないので、リビングでクーラーをかけながらやっていたけれど、頭の使い過ぎで暑い気がする。
生霊だった頃はお腹が減る事はなかったので、ある意味楽だったなと思う。あまり食べ過ぎると、体重が気になるお年頃なのが辛い。
八月には零君と近所の夏祭りに行く約束をしたので、とにかく頑張らねば。
冷蔵庫から小さ目のアイスを持ってきた私は、脳みそが糖質をすべて使ってくれるということにして、自分へのご褒美として棒アイスを口に入れた。ひんやり冷たいアイスを食べると、この楽しみを忘れていた生霊時代が信じられない。
やっぱり前言撤回だ。生きているって素晴らしい。アイスを欲しがらない生霊の味気無さよ。
アイスを食べられる幸せをかみしめていると、ピロンとスマホが鳴り、ビクッとする。
スマホの画面を見ればメリーさんのアイコンが映っていた。……なんだろう。
メリーさんは嫌いどころか、どちらかといえば好きだけど、パプロフの犬のごとくメリーさんを見ると怖いという感情が沸き起こるのだ。ニヤッとメリーさんなら笑ってくれそうだけど。
メリー『女怪異で女子怪しない?』
メリーさんからのラインは私メリーから始まる、いつものものではなかった。というか、女子怪? 多分女子会の怪異バージョンという事なんだろうけど。……私、怪異ではないんだけど。
肉体がなかったのは過去の事で、今はちゃんと受肉している。
天野『女子怪って、女子会って事でいい? それと私人間だけどいいの?』
メリー『そんなの今だけなんだから構わないわ。どうせ、後、80年もすればこっちの世界よ』
メリー『女子怪は女子会で間違いないわ』
天野『……80年て、私、長生きだね』
微妙にあり得る年齢なのが、予言っぽくて怖い。
メリー『柳田より長生きするんでしょ?』
メリー『だったら、80年ぐらい生きないと』
メリー『柳田はしぶとそうだし』
……うん。健康に生きられるよう、今から生活習慣には気を付けよう。
自分自身はそれほど長生きしたいとは思わないけれど、零君には長生きをして欲しい。ということは、必然的に私も長生きをしなければいけないということだ。健康寿命大事。
天野『女子怪って、どこでやるの? 学校?』
もしも学校なら、私はパスだ。怪異ではないので、ガッツリ姿が見えるため、不法侵入とか難しい。かといって夜の学校はこの間の肝試しで既にこりごりだった。
女子怪自体は気にはなるけれど、どうしても参加したいというわけでもない。
メリー『ラインのグループトークを使うつもりよ』
メリー『集まったって、天野が確実に見えるわけでもないし、私はそもそもラインでの会話だもの』
確かに。
零君レベルだったら集まっても問題ないけれど、私は声も聞こえなければ姿も見えないパターンが多い。そうなれば目の前で膝をつき合わせる必要はない。
天野『だったら、折角だから参加するよ』
メリー『じゃあ、今日の夜八時に決行よ』
メリー『お菓子持って、パジャマに着替えて、スマホの前で待機よ』
パジャマ姿でだらけた市松人形のスタンプが最後に押されているのを見て、これはやっぱりメリーさんが自作しているのだろうかと首を傾げるのだった。やっぱりメリーさんは色々謎多き女だ。




