メリーさんとの出会い
柳田君は不器用さん。
新情報を胸に、メリーさんの髪をどうするか考える。いつかはのびるだろうけれど、このままでは可哀想だし。
「応急処置でかつらとか、帽子を用意してみる?」
「あっ。それなら大丈夫。形状記憶機能で次の日には元通りになっていたから」
「すごいね。形状記憶機能」
まさかの髪にも適用可能だったとは。
ということは、今はメリーさんもふっさふさということだろう。……その機能があって、本当に良かった。女だからこそ言える。
「だから、今後伸びた時どうしようかなって」
「まずはググってみて、必要なものをそろえるのはどうかな。とりあえず、切らない方向で」
切らなければいけない時が来るかもしれないけれど、つるっぱ――坊主頭にされないためには、やはり切らない選択と、切る時は柳田君以外の指名制が必要だろう。
メリーさんにだって、選ぶ権利はある。
「切らないとなると……抜く?」
「抜かないで。なくせばいいってものじゃないから」
「でもメリーさん、髪の量が多いからさ」
「そういう場合は、すく。髪の毛をすいているだから。抜いているわけじゃないから」
想像するだけで痛そうだ。なんの拷問だろう。
そんな話をしていると、ピコンと音が鳴った。
メリー【柳田が驚かないなら、よっぽど髪はのばさない】
メリー【でも、静電気でふわっとなるのが嫌】
メリー【切らずにセットしたい】
「メリーさん……。よし。柳田君、こういう時はネット検索よ」
「おう」
とういうわけで、私達は【人形】、【髪】、【手入れ】で検索をかけてみる。
すると、色々な検索結果が出てきた。皆、人形の手入れには苦心しているらしい。そうだよねぇ。私も人形なんて幼い頃ぐらいしか触ってないし、それだって消耗品扱いだ。長く人形を愛する愛好家というのはいるけれど、やはり一部の人に限られて、そうすると人形の手入れは一般的な知識ではなくなる。
「綺麗に髪をまとまらせるのは、ドールヘア用ミストを使うといいのね。ウィッグ用とかでもいいかしら? なるほど。汚れるって書いてあるけど、メリーさんは形状記憶機能付きだから大丈夫よね」
「そうだな。あっ。人形も年を取ると、抜け毛に悩まされるんだ……。俺の親父と同じだ」
そうか。柳田君のお父様の頭は……。あれは遺伝とも言われるけれど、隔世遺伝とも言われるし……柳田君の数年後はどうなのだろう。いや。大丈夫。柳田君なら、スキンヘッドでもカッコイイ。
「後は、櫛の代わりにに歯ブラシで整えるっていうのもあるわね」
「櫛。ああ。そういうのもいるんだっけ」
柳田君はいつだって無造作ヘアーらしい。何もしなくてもカッコイイ君が素敵だ。
「あ、コレ。ほら。人形の髪を縦ロールにしてる」
「……いや。柳田君。そこは普通に、ポニーテールとか、三つ編みからやった方がいいんじゃないかな?」
縦ロールって……。
メリーさんは名前こそ西洋だけど、顔はザ・日本人な市松人形。縦ロール……うーん。似合うだろうか。
「ツインテールとかも可愛いよな」
「私、明日から、ツインテールにする」
「うん。天野なら似合うと思うよ」
そうか。柳田君はツインテールが好きなのか。ちょっと子供っぽいからやった事ないけれど、貴方が好きだというのなら、やりましょう。
ピコン。
メリー【縦ロール】
メリー【縦ロール】
メリー【縦ロール】
メリー【体は市松人形でも、頭脳はメリーだから】
……メリーさんは縦ロールになりたいらしい。
そっか。確かに女の子の憧れではあるけれど。うーん……。
「柳田君、できそう?」
「えー……どうだろう」
心配だ。縦ロールが失敗して、何故かパンチパーマになってしまったとかやりかねない気がしてならない。
「天野、お願いできないかな?」
「えっ。でも、メリーさん居ないし」
柳田君にお願いされたけれど、私は及び腰になってしまう。やってあげたいのは山々だけれど、呪いの人形と顔を会わせる勇気が中々でない。……ここで一歩踏み出せば、もっと柳田君と仲良くなれるかもだけれど。
でもなぁ……。
「メリーさんならここにいるけど」
柳田君はなんてことないように、机の上に鞄をのせた。そしてジーッと音を立ててチャックを開く。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁっぁ!!!」
私は鞄の中からこちらを覗く市松人形を見た瞬間、恐怖心がマックスに達し、大声で叫んだのだった。