ジェイソン君と4
~ジェイソン君の公式~
身長:168cm
体重:60kg(生前)
年齢:永遠の28歳
特徴:眼鏡
色白
文系
やせ形(でも筋肉は欲しい)
職業:教師
※攻・受は争いの元になるので、作者の意に添い、他者を攻撃しない事。ただし、地雷になる場合があるので、先頭に攻・受は明記し、過去ねつ造、ファンタジー、パラレル要素、R18なども明記する。
過去ねつ造で、多くの支持を集めたものは公式設定に加えてもよし。
そんな書き出しで始まるノートを見ながら、既に頭が追い付かなくなりそうな私は、設定集と一緒に書かれたリアル骸骨描写から目を背ける。ちなみにその横には生前と書かれた眼鏡のイケメンがいた。やせ形の学者風の風貌だ。黒髪黒目なので、多分日本人だろう。……名前、ジェイソン君だけど。
「公式に追加は中々ないんだけど、時折増えていってるらしいよ。論争は部の雰囲気を悪くするから、あくまで批判はしない、良かったらコメントを書くって感じになってたらしいよ」
「なんか、某掲示板みたいだな」
「そんな感じだねー。感想は無記名おっけーだし。まあ文字の形でばれている事多いけど」
それは、なんとも批判的コメントが書きにくいというか、色々抑止力になりそうだ。
「で、次のページが、ジェイソン君の過去だね」
ぺらりとめくられたぺーしからは色んな筆跡でジェイソン君について書かれていた。
この設定集で行くと、ジェイソン君は異国人とのハーフで、教師をしていたらしい。担当教科は化学。しかし、戦時中に亡くなったそうだ。……待って。戦時中に亡くなったって、昭和の話なのだから、そんなに大昔ではないんですけど。
死因は病死……まあ、戦争で亡くなったらここまで綺麗な骨として残っていないというか……色々設定にリアリティを入れてきている。
そして遺言で、戦争で勉強ができなかった子達も、きっと自分の死後は豊かになり、勉学に励める環境となっているはずだから、自分の骨を教材として使って欲しいと書いてあったため、骨格標本になりこの高校にやってきたと。
「微妙にリアリティを混ぜてくるのが怖い」
「怖かったらしがみついていいからな」
「ありがとう。でも、とりあえず、大丈夫」
まだしがみつかなければ耐えられないレベルではない。
思い出せ私、ある日起きたら枕元でメリーさんが添い寝していて悲鳴を上げた時の事を。またある日は、階段からコロンコロンとメリーさんの頭部だけが落ちてきて、悲鳴を上げさせられた。……大丈夫。メリーさんに鍛えられたこの心。まだいけるはず。
そんな風に自分を振るい立たせていると、突然陽菜がケラケラと笑いだした。
「柳田。ウケるわ」
「うるさい。黙れ」
何か面白いポイントなんてあっただろうか。やっぱりこの程度でビビりすぎているのは、笑える要素かもしれない。零君はいつも私の為に怒ってくれて優しいなぁ。
でも甘えてばかりはいられない。私も少しぐらい克服しなければ。
「そういえば、フレディ君は公式設定あるの?」
ジェイソン君と言えばフレディ君。フレディ君と言えば、ジェイソン君という間柄だと聞いていたけれど……どうなんだろう。
「フレディ君の事も知ってるの? あっちは、公式はないかな。先輩が書いた二次創作には出てくるけど」
「あっ、そうなんだ」
なるほど。だから、ジェイソン君のみ付喪神化しているのか。フレディ君は人気がないらしい。
「だって、フレディ君は所詮人形だから、生前がないし」
「……うん。そうだね」
できればジェイソン君にも生前がなかったことを祈る。すべては妄想だったというオチでお願いします。
「だから確かあったのは、フレディ君の擬人化話と、後はファンタジーで妖怪調教話だったかな。そこではジェイソン君が生前陰陽師だったという設定が加えられて、悪さするフレディ君を調教する的な?」
「へ、へぇ……」
かなりディープそうな内容だ。
そうか。調教しちゃうのか。やっぱり鬼畜眼鏡路線なのか……。
「えっとひとまず、ジェイソン君達を見せてもらってもいい?」
「いいよ。準備室の方にあるから、見てあげて。中々出番がない二人だから、積極的に使ってあげないとなんか可哀想なんだよね。鍵はかかってないし、自由に物色していいよ」
ソウダネ。授業でそういった場面にならないと出番がないからね。
とりあえず埃をかぶっていたら拭いてあげようかな? そんな事を思いながら、私と零君は一度部室を出て、隣の準備室へと移動する。
ガラッと開けると、逆光の中人影が見えた。白衣を着ているので先生だろうか?
「すみませ——」
カタッ。
そんな音がした。まるで骨と骨が打ち鳴らされたような――。
「ひぃ!!」
「えっ。莉緒?!」
私は咄嗟に隣にいた柳田君に抱き付いた。
逆光で人がいるように見えたのは、かつらと眼鏡をかけ白衣を着たジェイソン君だった。
そのジェイソン君が前のめりに私の方へ倒れて来た瞬間、私のキャパは限界を迎え、その場で腰を抜かしてしまったのだった。
後日私は、メリフォンでジェイソン君にお礼のラインを送っておいた。もう一度直接会うのは、しばらくは無理だ。ジェイソン君的には私の悲鳴は美味しかったらしいけれど。
私がジェイソン君に慣れるには、もうしばらく時間と努力が必要そうだ。




