こうして私は生き返えった
「メリーさん?」
私の疑問にしばらくスマホは黙っていたが、ピロンと音を立てた。
メリー【そういう事もあるとは聞いた事があるわ】
メリー【生霊にとって、今の時間は夢なの】
メリー【私も生霊と仲良くなったの何て初めてよ。どうなるかは分からないわ】
メリー【でも分からないけれど、後悔はしたくないじゃない?】
メリー【だから、ちゃんと伝えようと思ったの】
「私も、私も。メリーさん、大好きだよ!! 忘れたくない。それぐらい、本当に、楽しかった!!」
最初は怖かったけれど、今だって怖いけれど、でも好きだ。
私は沢山メリーさんに助けられた。
メリー【だったら、早く生き返りなさい】
メリー【今なら、帰り路、分かるでしょ?】
メリー【光に向かうの】
メリー【次は生きた貴方を驚かせるわ】
忘れたくない。でも、たとえ忘れても会いに来てくれる。
「うん。次会ったら、絶対忘れないから。少しだけ手加減してね」
生き返っても怖いのは苦手だ。心臓が止まらない程度に手加減してもらいたい。
メリーさんが言う通り、私の前には光る道が見えた。そこに踏み出せば、周りが色あせ、薄暗くなる。まるで他のものに気を取られるな、こっちへ来いと呼ばれているかのようだ。
私はその道を進んだ。
不安はあまり感じない。多分、正しい方角だというのが本能的に分かっているからだろう。
一度だけ後ろを振り返ったが、後ろも周りと同じく薄暗くて、メリーさんを確認する事ができなかった。これは現実にある病院内なのだろうか。それとも異空間でも歩いているのだろうか。
分からない。
分からないけれど、でも私は本当に【柳田君】とは住んでいる場所が違ったんだなと改めて思う。
住んでる場所が違ったらハッピーエンドにはなれない。どれだけ近くで触れ合っていた気分になっても、こんなに大きな隔たりがあるのだ。
「零君に会いたい」
「お母さんに会いたい」
「私は、生きたいっ!!」
そう叫んだ瞬間、バッと目の前が開けた。
最初に見えたのは天井だった。
体が動かない上に、口にもマスクのようなものがついている気がする。……あれ? こんなに体って重たかったっけ。
上半身を起こそうと思っても、上手くいかない。
一生懸命動かそうとしているうちに、ようやく手が少し動いた。でも油の切れたロボットのようだ。全然滑らかな動きではない。
「あ……」
声もかすれていて、まるで老婆のようだ。
はっ。まさか起きるのが遅すぎて、既に私はヨボヨボの老人に?
しかしそんな心配をよそに、私の声に気が付いた誰かがか駆け寄るのが分かった。
「天野さん? 聞こえますか? 天野さん?」
知らない顔……だよね?
忘れっぽいと言わたばかりなので、少々自信がないけれど、看護師の服を着ているので、多分知らないで正解のはず。
声を出したかったが上手くできず、目線だけその看護師さんの方へ向けると、彼女は感極まったような顔をした。
「ちょっと待っていて下さい。ご家族の方と先生をすぐに呼びますからね」
その言葉をぼんやりしながら聞いていると、看護師さんはナースコールを押したようだ。そこで、私の名前と目が覚めた件を説明している。
この状態、まさかずっと続くんじゃないよね?
体が上手く動かないのが不安だけど、この生きにくさというか、不自由さが生きているんだなと感じた。どうやら無事に私は生き返ったらしい。




