柳田君の現状
死んでもずっと柳田君といる発言。
どうやら、怪異になる前の私は、相当重い性格をしていたらしい。いや、でも柳田君も一生嫌いにならない発言をしているので、似たようなものな気がする。……自分の事なのに他人事のように思えるのは、私がその発言をした記憶がさっぱりないからだ。
「もう俺の前から消えないでよ……」
「えっと。消えないでと言われても、柳田君は見えているんだよね?」
見えてるから会話も成り立っているし、ここまでメリーさんと一緒に来てくれたのだ。
「天野は……周波数が上手く合わない時があるんだ。天野が俺に会いたくないと思えば、合わせられなくなるんだと思う」
柳田君は顔をあげると、ポツリ、ポツリと現状を語ってくれた。私の足のあたりを見つめた柳田君は、落ち込んだ顔をしている。どうやら、私は度々柳田君から見えない状態になっていたらしい。……そうか。周波数が合わないということは相性が悪いということだろうか。
分からないけれど、でも相性が悪いとか……言わない方がよさそうだよね。なんだか柳田君の表情が悪堕ち一歩手前な気がしてならない。ええっと。よっぽど私は彼を追い詰めるような鬼畜な所業を行ってしまったのだろうか。
「そもそも天野が、怪異として俺の前に現れた時、天野に俺は見えていなかった。天野はある日から、当たり前のように自分の席に座って授業を受けていた。でも声をかけても、天野には届かないし、俺も天野の声が聞こえなかったんだよ」
「えっ。でも。柳田君から私に声をかけてくれたんだよ?」
メリーさんの相談を先にしてきたのは、柳田君だった。私は大好きな柳田君の隣の席になれてラッキーだと思って、授業中もチラチラと柳田君を見て楽しんでいたと思うけれど、話しかけようなんて思いもしなかった。
「それはメリーさんがいてくれたから……」
メリーさん?
何故メリーさんが関係するのだろうと首を傾げれば、ピロンとスマホが音を立てた。
メリー【私は怪異であると同時に、現実に存在する市松人形の体を持つ者】
メリー【そして私は、人に認識してもらう事に特化しているのよ】
メリー【だから私がいる場では、怪異と人間の存在がとても近くなるの】
メリー【もっとも柳田みたいに、元々の資質がないと、見えないものは見えないけれどね】
本来のメリーさんの怪談は、メリーさんから電話がかかってくるところから始まる。確かにメリーさんは相手に認知してもらわなければ始まらない怪異だ。
「メリーさんが居てくれて、初めて俺は天野に話しかけられたんだ」
「そうだったんだ。なら、早く言ってくれればよかったのに。まあ、幽霊になってますよとは言いにくい話題かもしれないけれど」
幽霊になっているということは、つまりはそういうことだ。
もしかしたら幽霊ではなくて、誰かの妄想が作り出した存在の可能性も消えていないけれど。でもいつまでもこの状態で彷徨い続けることが良いことのようには思えない。
「言ったさ。俺は、思い出してほしくて……何度も、何度も」
「そうなの?」
私の記憶にはそんな話題はない。
でも柳田君も嘘を言っているように思えない。
……もしかして、私が柳田君と話したのは、メリーさんの相談をされたあの日ではなかった? 怪異なのだから心臓なんてないはずなのに、ドキドキと心臓が早鐘を打つ。
「天野は現状についてや俺との関係、過去の話をすると、すぐに消えてしまうんだ。そして次に会った時にはその時の会話の記憶を失っていた。いや、その時だけじゃない。慎重に数日過ごしてからその話を持ち出すと、最初に話しかけた前の状態に戻ってしまう。天野はいつだって、俺に話しかけられた事に驚いて、その後嬉しそうに話すんだ。友達以下の関係にリセットして――なんの、罰ゲームだよ」
柳田君は苦しそうに、そう吐き出した。




