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学校の三不思議

 柳田君と恐竜話で盛り上がっていると、メリーさんから苦情が入った。

 忘れていたわけではない。決して忘れていたわけではないけれど、恋する乙女心が欲望を優先してしまった結果だ。女の友情は儚い的な事をしてしまい、申し訳ない。


メリー【そもそも、一億年以上ずっと同じ姿を保てるわけないでしょ】

メリー【肉体から離れた瞬間から、魂は忘却と変質との勝負よ】

メリー【食事の質でも、存在が変わるし】

メリー【そんな事、柳田の方が知っているでしょ?】


「でも誰も知らないだけで、魂が化石化してないともかぎらないじゃん」

「えっ。魂って化石化できるの?」

 メリーさんの怒涛のツッコミに柳田君は反論するけれど、そもそも幽霊の化石ってどんな状態なのだろう。なんだか想像がつかない。


メリー【……あり得なくはないけれど、まずないわ】

メリー【天野は、もしも恐竜の姿をした怪異を見つけたら逃げなさい】

メリー【姿を偽る怪異は、本当に自分がその姿だと思い込んでいるものと、相手を騙そうとしているものがいるから】

メリー【そして騙すということは、害意を持っている可能性が高いわ。食べられたくないなら、逃げなさい】


「いや、そもそも、私は霊感とかないので」

 メリーさんは見えるけれど、外見は市松人形なので、ちょっと幽霊とは違うと思う。普通にこの間の昭和の小学生幽霊も見えなかったし。実際生まれてこのかた、金縛り一つあったことがない。

 元々怖がりだから、肝試しもコックリさんもやらないからかもだけど。

「霊感がなくても見える時はあるからなぁ。結局波長が合うと見えるし。厄介な奴ほど、無理やり合わせて認識させようとするから。俺やメリーさんが居る時は守れるけれど、そうでない時は、見える怪異が現れたら急いで家に逃げて欲しい」

「家?」

「うん。家はそこに住む人が招き入れないと、霊は入れないから。まあ時折、入っちゃうことがないわけではないけれど、多分天野の家は大丈夫だと思う」

 何をもってして大丈夫だというのかは分からないけれど、柳田君は霊感がある上に、お寺の次男なので私が知らないことを色々知っているのだろう。

 それにしても、柳田君とメリーさんが守るとか、何だかファンタジーのヒロインにでもなった気分だ。


「学校は危険なの?」

「学校が危険というか、学校は人が集まるから霊も集まりやすいんだよ。多分餌場なんじゃないかな?」

「あー、確かに」

 強い感情を食べる怪異にとっては、人が多く密集する場所は、食事を集めやすいかもしれない。


メリー【学校は誰でも入れる場所だから、制限がないの】

メリー【この間の幽霊みたいに、ふらりとやってきてはふらりと出ていくわ】

メリー【今住んでいる怪異は危険な奴はいないけれど、部外者の危険な怪異が入ってこないとも限らないわ】


「えっ。待って。住んでいるの? 学校に?」

 ガチの学校の七不思議がこの高校にもあったなんて。

 背筋に冷たいものが走る。

「前の中学も、小学校もいたし、まあ一人や二人ぐらいはいるもんじゃないか? 大丈夫。学校に住むような奴は、大人しいし」

「えっ。お、大人しいの?」

「だって大きな悪さをしたら、下手するとお祓いするような人が来たり、学校が廃校になるかもしれないだろ? 共存するなら、それなりに怪異も譲歩しないと」

 マジか。

 怪異の世界も大変らしい。

 確かに、怪現象が多発するような学校があれば、今ならSNSで配信されたりしそうだ。そして、ガチだと分かれば専門家が集まるだろう。これこそ、メリーさんが避けたかった状態に違いない。


メリー【この学校にいるのは、女子トイレと、体育館、それから骸骨の標本ね】

メリー【女子トイレの花子は、噂話とか大好きな子よ。でもいじめ反対派だから、トイレの中で水をかけようとしたり、一人を取り囲んでいじめようとしたり、盗撮や覗きをしようすると、転ばしてくるわ】


「えっ。意外にいい人」

「そうなんだ。俺、会ったことないや」

 女子トイレだもんね。逆に会えたら怖いね。

 いや、待って。盗撮や覗きって、さらりと流してはいけない単語じゃ。でも全部阻止されているなら、問題ないの……かな?


メリー【体育館には、暑苦しいのが一人。でも彼が応援している時は、怪我人は出ないわ。あと、こっちも更衣室の盗撮や覗きは阻止してる】

メリー【骸骨は、初日に挨拶してきたわ。同じ人形仲間だもの】


 ……骸骨って、何だろう。

 例え動いてなくても、悲鳴をあげてしまいそうだ。

「えっと、犯罪を防ぐとか、なんだか守り神みたいだね」

 いや、骸骨は微妙なラインだけど。何をしているのか分からないし。

 でもいじめや犯罪、怪我の阻止って、幸運を授けている気がする。


メリー【結局のところ、力の差はあるけれど、神と怪異は似たような存在だからよ】


 ……えっ? そうなの?

 なら、メリーさんも似たような存在ということ?

「メリーさんは、髪の毛の守り神っぽいよな。崇め奉ったら、ふっさふさにしてくれる?」


メリー【禿げろ】

メリー【禿げろ】

メリー【遺伝の爆弾よ、発動しろ】


 神……?

 今日もメリーさんは柳田君に対して、厳しいらしい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 学校は比較的安全な怪異がすんでいるのかー。 メリーさん、ハゲはやめたげて。 お坊さんだからなのか、遺伝子の爆弾なのか。 天野さんなら、柳田くんは坊主と似合うのねと言いそう。 [気になる点]…
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