昭和の小学生幽霊
まさかの柳田君は見える人。
更に見えるだけではなく、肉体言語でお祓いができると判明した私は、理解するというよりもそういうものなのだと割り切ることにした。私は見ることも祓うこともできない、ごく普通の女子高生だ。寺知識もないので、ほんの少し話してもらっただけでは多分理解しきるのは無理だ。つまりあれだ。柳田君はアン○ンマン系ヒーローなのだ。
不良も幽霊も人の道を外れたのは変わりない。うん。
「えっと。つまりもしもの時は追い払えるってことでいいんだよね?」
「そうそう。だから、あの幽霊に変なところに連れ込まれそうになったら俺を呼んで。宇宙の彼方まで吹っ飛ばすから」
パァンっと拳で手をうちならす。……宇宙の彼方って比喩表現だよね? 幽霊って、大気圏越えても問題ないのかな?
メリー【野蛮】
メリー【宇宙まで飛ばすなんて酷いわ】
メリー【……あんたも変なところに連れ込むっていう表現でハスハスしないでちょうだい】
……ここにいるという幽霊ってどういう人? ハスハスという表現に引く。
目に見えないから、まったく想像つかないけれど、さっきもセクハラとか言われていたのを思うと、中年男性を思い浮かべ――あれ? でも柳田君は『その子』って表現していなかったっけ?
「柳田君。ここに居る幽霊ってどんな感じなの?」
「んー。小学生くらいの女の子かな?」
「かな?」
「幽霊って、本来の姿から変える事もあるから。肉体がない分、結構自由なんだ。でもだからこそ、変容しやすい。今は無害でも明日も無害とは限らないし、そもそも無害なように偽っていることもあるんだ。だから、天野さんも気を付けて」
「うん」
見えないから気を付けようがない気はするけれど、無害ではない幽霊って、つまりは悪霊とか怨霊と言われる類のものに違いない。そもそも怪異に積極的に出会いたいわけではないので、避けられるものは避ける。
メリー【彼女が小学生なのは間違いないわよ】
メリー【ただし幽霊歴は35年ぐらいかしら?】
メリー【『風呂入れよ、歯磨けよ、顔洗えよ、宿題やれよ、風邪引くなよ、また来週が分かる世代』だそうよ】
駄目だ。全然分からない。
とりあえず、平成世代ではないということだろう。というか幽霊歴が35年で小学生ということは、40代……。ま、まさか昭和の小学生?! それは小学生ということでいいの?
メリー【体は子供、頭脳は親父】
メリー【間違ってないでしょ。親父ギャクとか、一歩間違えたらセクハラ発言とか繰り返しておいて、頭脳は大人なんて。大人の女性と某小学生探偵に謝りなさい】
メリー【はあ? 永遠に推しがお兄さんお姉さん枠な自分は勝ち組ですって?!】
駄目だ。メリーさんからの情報が混沌とし過ぎて、まったく相手の想像がつかない。とりあえず言えることは。
「幽霊も見た目って大事なんだね」
「見えてないんだよな?」
「見えていないからこその悟りだよ」
目に見えないから、変な発言を繰り返されると想像図がアニオタのおっさんになってしまう。もしかしたら超美少女かもしれないというのに。
でもここで超美少女幽霊が見えるようになっても、柳田君情報のせいで私はきっとこの幽霊は嘘をついていると思うだろう。第一印象は馬鹿にできない。幽霊も人間も同じだ。私もちょっとアニオタ傾向なので、いつか幽霊になる事があったら発言には気を付けようと思った。




