天野さんのライン
メリーさんにとりつかれ……もといメリ友となってしまった私は、家でもメリーさんからラインを貰うことが出てきた。更に驚くべきことに、柳田君からもだ。よくラインで宿題とかを質問しあったりしている。業務連絡に近いかもしれないけれど、いい。全然いい。例えメリーさんからのライン通知が多すぎて、メリーさん:柳田君=8:2だったとしても、個人的なやり取りがなかったところからの進展なので、彼からの一言一言が尊いのだ。
メリー【柳田の何処がいいの? さっぱり理解できないわ】
天野【どこって、全部カッコイイと思う】
メリー【片付けできない男よ】
メリー【空気も読めないわ】
メリー【デリカシーもないし、女心が全然わかっていない】
メリーさんは相当柳田君が嫌いなのだろうか……。それとも、柳田君が好きだから柳田君の駄目な点を連ね、私に柳田君を諦めさせ、独占しようとしてるとか? うーん。まあ、本気で嫌がっている部分もあるし、それは深読み過ぎか。
天野【でも学校では人気があるよ? 柳田君が好きな子は沢山いるし】
メリー【人気だから好きなの?】
メリー【中見を知らなければ、顔立ちは不細工だとは思わないわよ】
メリー【でも天野はいい子だから、柳田には勿体ない】
メリーさん返信早いな。
柳田君が返事を打つタイミングを逃していたのも分かる。私が一言打つと、凄い勢いで返ってくる。
これだけ筆まめなメリーさんだけど、真夜中の寝る時間にラインを送ってくるような非常識な事はしない。それはありがたいけれど……でも、怪異的に真夜中こそ活動時間ではないだろうか。いや。でも、メリーさんは日中起きている時に電話がかかってくる系の怪異だしなぁ。もしかしたら美容の為に夜は寝る主義かもしれない。市松人形に睡眠という美容法が適用されるかどうかは分からないけれど。
天野【人気だからというわけではないよ。柳田君は優しいから。それに、柳田君に対して勿体ないはないよ。私はクラスの中でも目立たない、教室片隅系ボッチだし】
メリー【私が勿体ないというから、勿体ないのよ】
メリー【人の価値は人気で決まるものではないとあなたも言ったじゃない】
メリー【天野はメリ友。ボッチじゃないわ。胸を張りなさい】
メリーさんが友達ですとは、誰かに言うには迷う案件だ。でもボッチではないと言ってもらえたのは嬉しい。例え怪異だとしても。
メリー【そういえば、いい加減アイコン変えなさいよ】
メリー【いつまでもシルエットみたいなのにしない】
メリー【あの、柳田ですら、ちゃんと写真に変えてるのよ】
メリー【女子高生の名が泣くわ】
天野【自撮り苦手で。ピンボケしちゃうから。分かった。後で、何か写真にとってみる】
私のライン画面は初期設定のままだ。
でもそれはメリーさんみたいに自撮りは上手くないから。自分にカメラを向けると、上手くピントが合わせられなくて、ぼやけたり、見切れてしまったりする。
そもそも自分の顔もそれほど好きではないので、女子高生だけど、自撮りにはそれほど興味がない。
だとすると別の被写体が必要だ。
私らしいって何だろうと考えて、私の大好きなシロを写真に収めることにした。柳田君にもシロの可愛さを見て欲しいし。
私は部屋のベッドの上で丸くなっているシロを写真に収めると、アイコンを変えた。プロフィールという場所でホーム画面も写真に変えられるみたいだけど、まあ、こっちはおいおい変えようと思う。
アイコンを変えると、ラインの通知が鳴った。柳田君からだ。
柳田【アイコン、いいね!】
柳田君からいいねと書かれたスタンプが送られてきて、私はそれを見ながらシロを潰さないように気をつけつつポスッとベッドに倒れた。尊い。好き。
しばらく余韻にひたっていたけれど、既読になっているんだから返事を書かなくちゃと慌てて起き上がり、私は返事を書くのだった。




