表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/98

メリーさんの縦ロール信仰

 登校したけれど、中々切り出せないまま放課後になってしまった。……ああああ、どうして昨日逃げてしまったんだろう。折角 柳田君が相談してくれたのに。

「天野、昨日はごめんな。まさかあんなに驚かれるとは思わなくて」

 ぐるぐる悩んでいると、柳田君がパンっと両手を合わせて頭を少し下げた。大袈裟な動作に私の方が狼狽える。


「わ、私こそ勝手に先に帰ってしまってごめんね」

「天野は悪くないって。もしもメリーさんのせいで、学校に来なくなっちゃったらどうしようかって焦ったよ。本当にごめんな」

 柳田君はなんて優しいんだろう。キュンキュンしてしまう。

「天野にとっては散々だっただろうけど、メリーさん的にはいい反応だったみたいだぞ。あの後、スッゴい喜ばれた上で、柳田は駄目だってディスられた」

「あはははは」

 確かにメリーさん的には柳田君の反応は不満だろうなぁ。ホラー的なオチをコメディに変えてしまうし。そもそも、メリーさんの目的はなんだろう。まあ、怪異にそんなものを求めるのが間違っているのかもだけど。

 ピコン。

 スマホが鳴ったので、柳田君が取り出した。


「メリーさんからだ。えっと。あっ。これは天野にだな。ほら」

「えっ。私?」

 メリーさんがなんのご用だろう。ちょっと怖いんだけど。でも、もしかして謝罪とか?


メリー【ツインテールにしなかったの?】

メリー【行動と言葉でしめさないと、永遠に伝わらないわよ】

メリー【ツインテールよりも縦ロールがオススメだけど】


「余計なお世話だし、縦ロールな女子高生なんていないわよ」

 メリーさんは謝る気ゼロだ。それどころか余計な事を……。柳田君をチラっと見たけれど、どうやらメリーさんの言葉の意味は伝わってなさそうだ。それはそれで少し残念な気がしてしまうのが、乙女の恋心。気が付かれたら恥ずかしいけれど、まったく気が付かれていないのも悲しい。

「なんかテニス漫画で縦ロール女子高生っていなかったっけ?」

「あれは漫画だからだよ。実際にこの高校でやったら、校則でアウトだから」

 ある程度の髪型は許されているけれど、進学校な為基本髪を染めるのも駄目だし、パーマも駄目だ。縦ロールなんかやった日には、確実に指導室に呼び出されるだろう。

 そもそも、あの髪型で制服が似合う女子高校生は少ない気がする。


メリー【遅れているわね】

メリー【時代は縦ロールよ】


「縦ロールが流行ったのって、百年ぐらい前じゃないの?」

 メリーさんの時間はどうなっているのだろう。いや。外見が市松人形なだけなので、もしかしたら、ものすごくおばあちゃんな可能性もある。


メリー【失礼ね! 名古屋巻きを馬鹿にしないでちょうだい】

メリー【少なくとも、2000年代には流行ったの】

メリー【縦ロールは何度でも蘇るのよ】

メリー【気が付けばあなたも――】


「怖い。いちいち、ホラーに結び付けてくる」

「メリーさんって、本当に怪談が好きだよな」

 存在自体怪談だからね。

 ただし話題が怖いような怖くないような、微妙なチョイス過ぎる気も……。でも、クラスの女子がみんな縦ロールになってたらやっぱり怖いか。呪いというより、何かの儀式が始まりそう。

「ツインテールで縦ロールならあり……か?」

「だから校則で禁止されてるって」

 柳田君も無理にメリーさんを肯定しなくていいからね。例え好きな人に誘われても、縦ロール信仰に、私は入団しません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 縦ロールと言えば、ロココ、ロココと言えば載せ物。 メリーさんの巻き髪の上へフランス人形を載せるのは如何でしょうか。 なお、個人的には横ロール(ギブソンタック)も良いと思います。
[良い点] ハッピーエンドにほっとしつつ。 メリーさんとラインいいなあ。 いいなあ。 さりげなく恋愛アドバイスしてくれるメリーさんはいいこですな。 たてロール、メリーさんの願いが叶いますように。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ