「ステータス」って言ってもステータスが出てこなかった…
書庫の位置を変更しました。
確認不足で申し訳ない…。
「うーん」
隠し工房を見つけてから1年が経った。
この1年で新しい発見がいくつもあった。
錬金術もかなり上達した……はず。
いやいや、工房に元からあった鉱石は全て扱えるようになった。だから上達したと判断していいはずだ。
というか今の僕に何ができて何ができないか、自分でも分からないんだ。
本で読んだのだが、魔法使いは『魔力光』というもので自分の得意とする魔法属性を調べるらしい。赤く光ったら火属性。青く光ったら水属性。錬金術が得意だったら紫に光る。
だが、この魔力光というのは得意属性を調べる前に、発生させるのに多大な労力が必要となる。そのため、自分の得意属性をしっかりと把握している魔法使いはほんの一握りだ。
まぁ、僕は転生者だからイメージのごり押しでなんとかなる。手に集めた魔力に圧力をかけると魔力光がでてくる。
で、調べてみたのだけど……僕の魔力光は黒かった。
魔力光についての本を読んでも、黒についての記述は何にも書いてない。
あと少し紫のスパークと「バチバチ」という音がする。体に悪い気がするのは気のせいだろうか…?
これが僕が『呪われた子』と言われる原因かな?
そんな訳で僕は自分の得意属性を調べることができなかった。
こんなこともあれがあれば何の問題もないのに……。
あれって?あれだよ。ステータスだ!
まったく。がっかりだよ。この世界はステータスとかスキルとかレベルとかの概念が無い異世界だったんだ!!
せっかく「やった!レベルが上がったぞ!」とか「よし!新しいスキルゲット!これは使える!」みたいなやりとりができると思ったのに!
前世でやってたオンラインRPGでも導入してたシステムだぞ。何やってんだ異世界!
ちなみにそのゲームでの職業は錬金術師だった。
ただ前線で鈍器を振るってた方が多かった気がする…。
そういえば、今の僕の職業って何だろう?まー魔法使い寄りだよね。錬金術師?最近は久々に剣を振るってるから剣士かも。
剣士か……。
不本意ながら、誠に不本意ながら剣を握った。ホントに嫌々ながらなんだけどね。
剣を…前世の僕の家系に代々伝わる剣術…【輪道流剣術】を使うと、どうしても思い出してしまうんだ。大っ嫌いだった父親の顔を。
まぁ、だから高校に入学してからは剣を握ってないんだけどね。意外と覚えているものだ。
今はこの輪道流剣術を魔力を用いた身体強化魔法と合わせて使える剣術に改良中だ。僕のオリジナル剣術ができるまでは、しばらく使うことになるだろう。
「ふわぁ…」
ヤバイな。眠い。まだ7歳児に徹夜はキツい。早く部屋に戻ろう。
僕は書庫まで戻ってそこから通気口を登り2階の自室に上がった。
「ニャァァー」
部屋に戻ると、カルパスが窓の前で鳴いていた。
「あれ?どうしたのカルパス。いつの間に戻ってたんだ」
カルパスはホントにいつの間にか消えて、外に遊びに行っている。一日中帰らないのも珍しくない。
そこまで考えてふと思った。
カルパスって魔物か何かじゃないの、と。
部屋の窓はいつもしっかり閉めてるし、ウチの使用人もカルパスが出て行くところを見てないと言っている。
カルパス魔法とか固有スキルとか使えるんじゃ……。
………まっ、いっかカルパスはカルパスだし。
てかどうしたんだろう。いつもは勝手に出て行くのに今は窓をツメでガリガリしている。
「どうしたの?窓開けて欲しいの?」
「ニャァ…」
…なんかいま「やれやれ…」って感じで鳴かなかった?
カルパスは床に下りると僕のズボンの裾をツメで引っ張っている。
「もしかして今から外に行けってこと?」
「ニャァ」
今からか…。とても眠いんだけど…。
まぁすぐに終わらせて寝ればいいかな。
「ちょっと待ってて。今コートとか取ってくるから」
「ニャ」
今度は「早くしろよ」みたいな感じで鳴いたな。
僕は隠し工房からコートと錬金術で作った刀。念のためにポーションを持っていくことにした。
――――――――――――――
私の名前はアイリス。
世界で一番優しい主人に仕える使用人です。
私には親は居ません。3歳の頃に亡くなりました。
それから奴隷商に売られ、この左目のせいで酷い扱いを受けていました。
そこから救い出してくれたのが私の主人、ベル様です。
ベル様は私のことを大変気に掛けてくださいました。
ベル様は私が左目のことを気にしていることに気付き、眼帯を作ってくださいました。
今は夜遅くまでベル様から頂いた眼帯の手入れをしています。
革で作ったもの、カラフルな布を使ったもの…少し毛色の変わった毛糸で作ったものや鉄板を使ったものもあります。
でも一番のお気に入りはこの最初にもらった白い眼帯です。
私はこの眼帯を寝るときも付ける。
ベル様が綺麗だと言ってくれたこの目はベル様以外には絶対に見せません。
さて…そろそろ寝ましょうか。明日もベル様のために働かなくては!
ちょうどその時、窓の外に黒い影が写りました。
あれは…カルパスちゃん?
ベル様の飼い猫のはずですが私もこの2年間でそれほど多く見たことはありません。
さらにその跡を追うようにコートを着た人影が、庭に下り、一度の跳躍で塀を飛び越えていきました。
あの人影は…もしやベル様⁉︎
こんな時間にいったい何を……?
――――――――――――――
………………ヤバイな。今家の人に見られた気がする!
僕はコートを取ってきた後、カルパスの跡を追って屋敷の外に出た。
でも僕の部屋の下の部屋明かり点いてたよ⁉︎
確か下の部屋はアイリスの部屋だった気が……
「ニャァー」
カルパスが「着いたぞ〜」みたいな感じで鳴いたけど、こっちは今それどころじゃないんだよ!
そう思い、カルパスの方をキッと睨もうとすると………
そこには蹲った白い子供がいた。
次回予告「エルフって「下等な人族ごときがっ」って言うのが大半だよね?」