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装備製作系チート……悪くないな


 僕がこの世界に転生してから、6年の月日が流れた。


 今、僕は今年から与えられた自室で本を読んでいる。


 母さんは僕と別の部屋で寝るのをひどく嫌がっていたけど精神年齢20歳越えにはスタイルの良い美女にギュッとされながら寝るのはきつい。


 いやもう、ホントッきつい。なんかいい匂いするし、当たっちゃいけないところがダイレクトに当たって……ってイカンイカン。


 今は本の内容に集中しよう。


 実を言うと、今読んでる本は錬金術の本でこの世界の6歳児が読むのにはかけ離れたものだ。


 って言うか大人も読まない。むしろ錬金術なんて知らない人も珍しくない。


 この本は下の書庫から拝借した。


 実は隣の書庫と通じる通気口の抜け道を見つけたのだ。書庫なんて誰も入らないし埃かぶってたけど、埃以外は好都合だ。


 えっ?そんなの読んで勉強は大丈夫なのかって?


 見縊(みく)びってもらっちゃ困るよ。前にも話したが、この世界の語学は完璧にマスターした。数学に関しても、大人ですら足し算引き算出来れば上出来。掛け算割り算なんて大商会の商人が出来れば良いくらいなものだ。


 高校の『なんとかの方程式』とか『なんとかの定理』とかに比べたら天国だ。


 そんな訳で勉強に関しては何の心配もいらない。


 他にも魔法に関する本はいくつもあったのに何故錬金術の本にしたのかについては、単純に()()チートに憧れたからだ。


 装備製作系チートって……良いよね?


 成長系チート、加護系チート、無双系チート…等々、様々なチートがある中で特に1番気に入っているのが装備製作系チートだ。


 だって自分に合った最高の武器作れるんだよ。素材の配合考えたりゴーレム作ったりするのはワクワクする。なんだかんだで戦闘があるのもポイント高い。


 異世界における一番必要な力は何か。


 僕は武力だと思う。だが、個人で持つ武力には限度がある。僕は所詮は人間なのだ。ドラゴンをワンパンで倒せるほど強くはないし、魔法勉強したくらいでどうにかなるほど簡単な道のりだとは思わない。


 では次に必要な力は何か。


 それは財力だと思う。金があれば3番目に必要だと思う権力が手に入る。金で強い人間を雇えば武力だって手に入れられる。まず大事なのは金なのだ。身も蓋もない話だけどね。


 幸いにも僕には前世の記憶がある。売れる物は多い筈だ。


 もちろん武力も欲しい。ダンジョン潜ってボスと戦ってみたいし。でもそれは身体が出来上がってから。6歳児じゃまだ無理。


 付与魔法とかあるから『魔法の基本』という本を読んである程度予習はした。やっぱり基礎は身につけておかないと。


 今なら『火球』とか三角錐にして飛ばせる。

 

 異世界あるある。魔法なんてイメージのゴリ押しでなんとかなる。


 そんなこんなで僕はちゃんとした装備製作系チートになる

為に予習をしてるのだ〜♪


 ーーコンコン


『ベル様。アイリスです。入ってもよろしいでしょうか?』


 やっべ。アイリスだ。本隠さないと…よし!


「うん、いいよ」

「失礼します」


 ドアが開き、ワゴンを押したアイリスがやって来た。


 この一年で随分と打ち解けたと思っている。相変わらず表情の変化に乏しいが、なんとなく喜怒哀楽が掴めるようになってきた。


「あれ?今日ルマリーは?」


 そう。いつもアイリスはルマリーと一緒に紅茶とクッキーを持ってきてくれるのだが、今日はアイリスだけだ。


「はい。ルマリーさんは本日より故郷へ帰省されるとのことで、今日は私一人で来ました」


 あ、そっか。前にもあったなぁ。そろそろこの世界では丁度お盆のような時期に入るからねー。


「私のような未熟者がベル様の紅茶を淹れるなど、身の丈に合わないことだと自覚しておりますが…」

「いやいや。そんな自分を卑下にする必要はないよ。むしろ記念日だね。今日はアイリスが紅茶を一人で淹れてくれた記念日だ」

「は、はい。光栄です…」


 そう言ってアイリスはぎこちない動きで紅茶を入れてくれる。


「うん、美味しいよー」

「ありがとうございます」

「あ、そうだった」

「?」


 アイリスで思い出したのだが、アイリスに渡す物があったのだ。


「はい。これアイリスにあげる」

「えっ…?」


 僕は引き出しから取り出した紙袋をアイリスに渡した。


「開けてみて」

「は、はぁ…」


 アイリスが紙袋を開けると、紐の付いた白い布切れが出てきた。


「こ、れは…?」

「あ、これはねー…」


 僕はアイリスの左眼に布切れを当て、紐を後頭部で結ぶ。紐は…アイリスの黒髪で隠しちゃえ。


 そう。僕が彼女にプレゼントしたのは眼帯だ。


 厨二病患者がつけるような白い眼帯……うむ。よく似合ってる。


「あの、これ眼帯ですよね?なんか普通に見えちゃってるんですが…」

「ああそれね、眼帯にちっちゃな穴を沢山空けててね、見えるようにしたんだ。アイリスは左目の視力自体は良いんだし、視野を潰すようなことはしたくないしね。あとは…」


 そう言って僕は彼女の左目につけた眼帯をめくる。


「左目も隠せるしね。ふふふ、これで他の人には見えないね。僕独占」

「……ッ…」

「まぁそんな訳でね。これは僕からの誕生日プレゼントだよ。気に入ってもらえたかな?」

「…ありがとうございます!えっと…大切にします!」


 もうアイリスったらちょっと泣いてるじゃないか。


 僕はアイリスの涙をハンカチで拭いた。


「紅茶美味しかったよ。ありがとね」

「あ、はい。し、失礼しました」


 アイリスは逃げるように部屋から出て行った。なんだか少し恥ずかしそうだった。


「ふ〜…」


 女の子にプレゼントを渡すなんて初めてだから緊張した。


 気に入ってくれたならいいけど…眼帯がプレゼントとかセンス無いって思われないよね…?


 ま、まぁそれについては後で考えよう。さて本の続き続き…ん?


 丁度ポーションに関する内容だったのだが、ここに「薬草の種類については『薬草大全』を参照」と書かれている。


 ……取ってくるか。一緒に読んだ方が良いよね。


 そう思い僕は通気口を通って隣の書庫に入った。


 あるかなー『薬草大全』。


 『魔物図鑑』『世界史』『魔法入門』……お?これかな。


 手にした本を見てみると、キチンと『薬草大全』と書かれていた。


 持ち帰るか〜と思ってその本を抱えた。6歳児にはこの手の本は重すぎる。


 なんとなく隣の本をチラ見したのだが……あれ?


 この本、タイトルが書いてない。


 日記とかかな。でもこんなに分厚い辞書みたいなのに日記とか書くかな。


 不思議に思って本を引き抜こうとすると……動かん。


 両手でやっても動かない。どうなってるんだ。


 「引いて駄目なら押してみな!」ということでその本を力一杯押した。


 ――ガコン!ギリギリ…


 ………今なんか作動音が………


 次の瞬間。


 ――ガラガラガラー


 本棚がズレた。


 そして隠し通路が現れた!


 本棚がズレて隠し通路………。


 ベタだ。王道だ!テンプレだっ!!


 いきなり現れた隠し通路。これはもう入るしかないな!


 僕は夢中で現れた階段を降りて行った。


 途中「ガラガラガラ」と音がしたのであの本棚は元に戻ったのだろう。


 階段は螺旋状に続いていて、僕が近くに行くとランプが勝手に点灯する。いいねコレ。


 次の明かりが点いたら、ひとつの扉が見えた。


 ……隠し部屋かな?


 ドアノブを握ってみても、どうやら鍵はしてないらしい。


 僕は意を決してドアを開いた。


 僕が部屋に入った途端、部屋中の明かりが一斉に点いた。


 まず目に映ったのは、作業台と思われる机。埃を被っているがいくつかの工具が並べられている。


 奥には巨大な木箱があった。


 中を覗くと、そこには大量の鉱石があった。それもまだ未加工である。


 床には何やら巨大な魔法陣が描かれている。この陣は…錬成陣か!


 間違いない。ここは錬金術師の隠し工房だったんだ!! 


 そうコレだ。僕に必要だったのはコレだったんだ!


 フハハハハハ!この施設さえあれば僕は、装備製作系チートになれる!


 こうして僕の錬金術に明け暮れる日々が始まった。 


僕も装備製作系チートになりたいです。

次回予告「「ステータス」ってもステータスが出てこないんだ!」

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