最強目指してみた
という訳でタイトル変更しました。
あと何回するんだろうなー
14歳……来年には王都に行き、学園に通わなければならない年齢になった。
(じー)
王都ではトーカ商会が支店を出して連日大盛況らしい。よかった、王都でもダンジョンに近い生活ができる。学園は3年間通わないといけないし、生活環境は重視しておきたい。
(じー)
そうそう。最近は昼間でもダンジョンで活動する様になり、進めてる研究が一気に進んだ。重装型とか遠距離攻撃特化型などの別バージョン鉄鬼の量産。新型ゴーレムの開発。メグリオンの改良。みんなの装備などなど……。商会に卸す商品を作る工場なんかも設置した。
(じー)
だがまあ今は屋敷にいるけどね。理由は今日がおじいちゃんの誕生日だからだ。屋敷に来るからその時に渡すプレゼントを作ろうと思ってる。最近学んだ(という設定の)簡単な付与を行った魔導具だ。
(じぃーー)
ダンジョンで作ってるものが日本で企業が開発するレベルの高性能家電だとしたら、今から作るものは小学生の理科の授業で扱うモーターカーレベルの代物だ。だから危険なんてないんだけど……
「……あの、アイリスさん。そんなに見つめられると落ち着かないんだけど……」
「ベル様が、危険なことをしないように見張ってるのです」
最近ずっとこれだ。普段は普通なのに僕が実験塔に入ってる間は四六時中監視してくる。
アイリスも14歳になって、ますます可愛く……というより『美人』という言葉が似合うキリッとした瞳を持つ美少女になった。そんな美人さんに見つめられると落ち着かないのだけど……
「そんな危険なことしてないと思うんだけどな……」
「先日、『メグリオンの改良だー!』とか言って実験塔のワンフロアを吹っ飛ばしたのはどこの誰ですか?」
「……すんません」
反論できねぇ……。
「ていうか、ベル様の作る物は失敗するとシャレにならないんです!その前も『暑い!エアコンを作ろう!』と言って仮眠室を氷漬けにし、『ポップアップトースターだー!』とか言ってキッチンを火の海にしたこともあるじゃないですか!」
「それはその、前世の物を魔法で再現しようとしたが故に起こった事故と言いますか……で、でも【魔ソコン】作ってからはそんなこと減ったじゃん!」
【魔ソコン】とは竜血晶を圧縮して作った超記憶媒体【深紅メモリー】に幻夢ディスプレイを付けてゴーレムコアの演算装置に傀儡魔法を応用して作ったタッチパネルとキーボードを付けた、まあタブレット状にもなるパソコンだ。
キーボードは前世のと同じ配列だし、打ち込む字はローマ字と英語。変換は僕と直接繋いでないと使えないし、僕くらいしか使えないが便利と言えば便利。設計図を記録し、修正が楽な上にある程度の計算もやってくれる。だから事故は減ったんだけど……
「減る減らないじゃなくてそんな事故は起こすなと言ってるんですよ!」
ダメなのか。ちゃんと速攻で結界を展開する魔導具【守る君】を着けてるのに。
「私は、ベル様が楽しそうならそれでいいのです。ベル様にはずっと笑顔でいてほしい。ベル様の喜びは私にとって何より優先すべき事なのです」
「えっ?そうなの?」
てっきり僕のやる事にダメ出ししてくるからいいイメージは持たれてないと思っていた。
「ですが、ベル様が怪我をするのはそれ以上に嫌です。ベル様には苦しい思いなどしてほしくない。健やかであって欲しい。ずっと私の主でいてほしいのです」
「アイリス……」
そこまで言って照れたのか、アイリスは顔を赤くしてそっぽ向いた。
「……ですから実験中のうっかりなんかで死んでほしくないんですよ、私は」
「はは……善処するよ」
「善処じゃなくて真面目にやってください。ガチで」
「うっす……」
ふむ……趣味に走って危ない事やって部下に心配される魔王というのも情けない。気をつけよう……。
『貴様の目的は何だ?』
その時、脳裏を横切ったのはメグリオンで王都に突撃した時、女騎士に言われた言葉。
僕には目的意識というのがない。いや『欲』はあるんだ。「○○がほしい」とか「○○がしたい」とかは。だが自分の全てを持って叶えたい夢とか今のところない。
誰しもそのような一生一代の目標を持っているとは限らないがせっかく異世界転生したんだ。使命とか宿命とか何もないなら、自分で決めてもいいだろう。
それなら……そうだな。アイリス達に心配させないような……ふむ。
「ならば宣言しよう、アイリス」
「はい?」
僕はアイリスを指差し、ニヤリと笑ってこう言った。
「僕は最強になろう。誰にも負けない、誰もが勝てない、最強無敵の魔王になろう。そしたらアイリスも不安じゃないでしょ?」
「ベル様……」
最強になる。それはあまりにも子供じみたもの。今時の少年漫画には使われないかもしれない。せいぜい小学生向けかな。
だがシンプルで合理的。欲しいものがあるなら。守りたいものがあるなら。最強になれば全部解決する。最強ならなんでもできる。最強って素晴らしい!
そうと決めたらしばらくは自分の強化に努めよう。手札もたくさん欲しいな。刀だけというのも物足りない。草案はいくつか思いついたし、実現に向けて試作を繰り返して……
「……おっと、考え事してたら付与が終わったよ。あとは本体となるパーツを探さないと」
「いつの間に!それ大丈夫なやつなんですか!?爆発しません!?屋敷が半壊でもしたら、奥様になんと言い訳するつもりですか!?」
「流石にそこまではいかないよ!?ゴブリンの魔石に照明の付与しただけだから流石に爆発とかはない……はず」
僕が作ろうとしているのは懐中電灯。おじいちゃんがいうには馬車は揺れるので物が落ちやすく、夜になると落とし物を探すのに苦労するらしい。だったら懐中電灯は喜ばれるかなと思って作った。あとは本体部分の筒を用意するだけだ。
「ベル様が大旦那様のために、懐中電灯を作ろうとしてるのは分かりました。だけどホントのホントに爆発しませんか?」
「しないよ!多分……きっと……だったらいいよねぇ……」
「ものすごく不安なんですけど!そんな物を大旦那様に渡す気ですか!」
「いや起こりうる最悪は閃光が出て失明か、軽い衝撃波が起こるくらいだって」
「危ないです!渡してください!危険です!」
「ちょっ、待っ!ゴブリンの魔石は脆いんだから……!」
あかん。アイリスの方が身体強化が上手いから力じゃ敵わん!今は手加減してくれてるけど、本気で来られたらマズイ!魔石が砕ける!
「ベルーー!!おじいちゃんが来たぞーー!!」
「「うひゃあ!?」」
おじいちゃんがいきなり部屋にやって来たので、僕とアイリスは同時に変な声を出してしまった。
しかし助かった。もう少しで魔石が割れ……魔石が手の中に無い!?
「「あ」」
僕とアイリスは真っ直ぐに床に吸い込まれる魔石を目で追いかけて、床に当たって砕けた瞬間閃光が目を焼く!
「「「ギャァァァァァ!!目がぁぁ!目がぁぁぁ!!」」」
――――――――――――
時間は少し遡る。
儂ーーゴルドウェイ・ミグラトリアは娘家族の住む屋敷へとやってきた。
「いらっしゃい、お父さん。お誕生日おめでとう」
「おお、ありがとうアトラ」
理由は今日が儂の誕生日だからじゃ!かわいい娘と孫に会えると張り切り、溜まっていた仕事を一気に終わらせてきた。
しかし孫のベルがおらん。どこに行った?まさか具合でも悪いのか!?
「あぁ。ベルなら誕生日プレゼントを作るんだって言って今自分の部屋に居るわ」
「おお、そうか。しかし作る?」
「大旦那様、その話は私から」
そう言って前に話しかけてきたのは、この屋敷の執事をしているテバス。元は儂の側近だったんだが、アトラが別居するときについて行ってもらった。この屋敷にいる他の使用人は全員同じだ。
「まず、私がベル様の教育を行っているのはご存知ですよね」
「うむ。座学はともかく、剣術の指南役でお前の右に立てる者は儂の知る限りおらんからな」
元魔銀級冒険者で『閃刃』の二つ名を持っていたからな。純粋な剣の腕なら儂では勝てん。
「指南役として言わさせてもらいますと、ベル様の剣術の腕は普通です。護身くらいなら可能かというレベルですな」
「儂はあの子に竜と戦って勝って欲しいとまでは言わんからな。護身くらいで構わん」
「ですが、座学と魔術のレベルが異常です。座学は王立学園で首席を間違いなく狙えます。満点を取ってもおかしくありません」
「満点だと!?」
学生向けとは言え、入試試験の問題で満点を取るのは大人でも難しい。儂なら無理じゃ。
「魔術も法陣学と詠唱学をマスターしており、教科書に載っている魔法は一発で使えます。特に土魔法が得意なようです」
「あ、そうそう。ベル様ほんとにすごいんですよ」
そう言ったのは二人のメイドのうちの片割れ、リザベラだ。
「こないだ倉庫に荷物運んでた時なんですけどね、ベル様が『重そうだね。手伝うよ!』と言ったらマッドゴーレムが一瞬で現れて荷物を運んでくれたんですよ。あれすごかったな〜」
「あなた、ベル様になに手伝わせてるの!」
「落ち着けルマリー。あの子が自分からやった事じゃ」
「あ、あの……」
口を開いたのはこの屋敷のコックのヨハン。口数が少なく、儂の所にいた時から影が薄くてたびたびどこに行ったかわからんくなった。
「ま、魔導具の方にも興味があるらしいです。よく厨房に来られて、厨房の魔導具の使い方や仕組みなどを質問してきましたから」
「そういえば書斎に行って魔導具関連の書物も読んでいるらしいですよ」
書斎にある本は難しい物が多いはずだが、あの歳で内容を理解できるのか。つまり……
「えっ?ウチの孫天才すぎではないか?」
「ちょっと、私の息子でもあるのよ」
これは将来有望だな。ウチの商会に収まる器ではないかも知れんな……。
「アイリスさんもすごいですよ。座学はベル様と勉強してるからか優秀ですし、魔法も得意な魔法であれば無詠唱で放ちますし、体術にいたっては剣なしの私では相手をするのも厳しいですよ」
「なんと……」
ベルが助けたという少女、アイリス。このままずっとベルに仕えて、できればそのまま夫婦になって欲しいものだな。護衛としても優秀そうじゃし。
「そんなベル様が大旦那様のために作る魔導具ですけど……何作ってるんでしょうね?」
「気になるな。見に行ってもよいか?」
「いいんじゃない?あの子も喜ぶだろうし」
そして今に至る。
「ぬぉぉ……目がぁぁ!」
「大旦那様!しっかり!」
ベルの部屋に入った瞬間、閃光に目を焼かれのたうち回る儂。即座に回復魔法が使えるリザベラが癒してくれた。
「べ、ベル様ご無事ですか?」
「い、一応。アイリスは?」
「私もなんとか……」
あの二人も無事のようだ。しかし、何が起こった?
ようやく視力が回復し、目に写ったのは砕けた小さな魔石とブツブツと何か喋っているベル。
「普通の光を放つだけの魔法を付与したはずなのに閃光弾のような強烈な光……おそらく魔石が砕けた事による相乗効果?だとすると魔石は砕ける時に出力を向上させるのか……じゃあひょっとして……」
何かと思えば考察。真剣な表情筋で砕けた魔石を観察している。うむ、やはり天才だ。
ベルは机の上に置いてあった魔石に素早く付与を施すと、窓を開けて魔石を投げた。
『パァァァァァァァンンンッ!!』
「「「うおっ!?」」」
次の瞬間、外から何かの破裂音が響いた。
「やっぱり!砕けると魔法の効果を上昇させるのか。これを『クラッシュ効果』と呼ぼう!砕けやすさならゴブリンとかスライムの魔石が一番?攻撃魔法は失敗すると危ないけどそれ以外なら大丈夫かな。いやでもワンチャン……」
「ベル!お前はやっぱり天才じゃ!」
「うぇ!?お爺様!?」
儂はベルの体を持ち上げ、ベルを褒めたたえた!
「こんなすごいものを研究したったとは!最高の誕生日プレゼントじゃ!」
「え、いやこれは……」
「すぐに量産に取り掛かろう!これは魔導具界隈を揺るがすぞ!」
その後、ベルの指導をもとに作った、閃光と爆音を作り出す使い捨て魔導具【ビビラセール】は、行商人や冒険者に飛ぶように売れ、彼らの生存率を大いに高めた。行商がメインのウチの商会では量産はキツかったが、帝国で有名な【トーカ商会】が手伝ってくれたので、瞬く間に王国と帝国に普及し、いずれそれ以外の国でと普及するだろう。
そして、その後ベルから貰った【懐中灯】というのはとても便利だった。やはりウチの孫は天才じゃ!
次回から小刻みでいきます!




