「あったぁ」っていう顔
アイデア消費できてきもちぃー
「ふぃ〜いい汗かいたー」
ダンジョン内、塔付近の訓練場近くに置いた休憩スペースにて、僕はタオルで己の汗を拭っていた。
【千転夜桜】の試し斬りの為だ。まさか作ってから数ヶ月放置しておくとは思わなかった。ごめんよ……。
試し斬りの結果分かったことは【千転夜桜】はヤベェということだった。訓練用に作った『訓練用土人形100人組手マシン』によって生み出された100体の土人形をまるでバターを切るかのように簡単に倒し、それどころか地を切り裂き地面に大穴を空け、削いだ。なかなかの切れ味だ。
若干武器の性能に頼りきり感があるし、「ただ数で押してくるだけの土くれ倒してるだけで訓練になんのかよ」という気持ちもあるが、この刀を打ったのは僕だし、簡単だろうが中途半端だろうが僕は訓練をやったのだ。やったったらやった。つまりやってない奴より偉い。今いい事言ったな。メモっとこ。
僕は普段から持ち歩いてあるアイデアノートに今の言葉を書いておいた。
そして前のページの設計図に目を向ける。
「さて、大方これ以上ないほど最適化はしたんだけどな…」
昔、地下室によくわかんない文章が書かれたよくわかんない本があった。
だが複数の魔導具を作り、何十枚の設計図を描いてきた今ならわかる。アレはとある魔導具の設計図だと。
その魔導具の名は【魔力炉】。魔石を使った、生物の魔力を作る器官を人工的に再現した物だ。魔石の出力を上げることが可能になる。
そう!これを使うことによってそこそこの魔石を竜クラスの魔石に引き上げることができるのだ!
具体例をあげると、魔石の魔力を使って魔法を発動させる場合、スライムの魔石で火の玉一個飛ばすのが精一杯だ。しかし、このスライムの魔石を魔力炉化すれば上位の魔法炎の嵐をぶっ放すことができるようになる!
しかもそこにゴーレムの核の術式を一部利用すれば、魔力炉は理論上部品の劣化以外で故障しない、つまり半永久的な利用が可能になる!
すでに魔力炉は『訓練用土人形100人組手マシン』と採掘用アイアンゴーレム製造機に使われている。マナジェットスラスタも現在試作中だ。これでやっと鉄鬼軍をーーとはいかなかった。
アイアンゴーレム製造機と同じように量産できないかと思ったが難しい。
アイアンゴーレム製造機はゴーレムの素体の錬成加工から魔石への術式描き込みまでやって組み立ててくれる。鉄は原石を錬成して仕分けしてくれる装置と連動してるし、魔石はレイ達のご飯の魔物で充分足りてる。
鉄鬼達も素体の製造ならなんとかなる。しかし魔力炉の製造は別だ。
魔力炉はミスリルやらオルハリコンやらを大量に使う必要があるが、その辺の心配はいらない。ダンジョンならほぼ無尽蔵で手に入れられるからね。
しかし内部に描き込む術式はとても繊細なので魔石の品質によって逐一変える必要がある。製造機を管理しているシステムはゴーレムの術式を利用しているが、子供でも理解できるようなことか同じことをただ淡々とさせることしかできない。流石に魔石によって術式をいちいち変えられるほど高度なことは無理。つまり同じ種類の魔石を量産する分用意しなくてはならない。
僕が魔力炉だけ作る手もあるが、僕は万を超える軍隊で他を圧倒するつもりなのだ。いちいち手作業とかやってられるか!
鉄や銅みたいに魔石の鉱脈とかあればなぁ……ないかぁ〜。
「ベル様ー!お知らせしたいことがーーってなんですかこれ!?」
「ん?モナカ?」
モナカが走って来て訓練場の有様を見て驚いている。土人形相手にかなり暴れたしなー。
「あっ、訓練場使う予定だった?もう少しで修復終わるから待って欲しいんだけど……」
「いえ。マギサさんから伝言を預かっていまして……」
「マギサが?なんだろ」
そういえばマギサに魔竜王の化石の採掘のためにアイアンゴーレム達の指揮を取らせてたなー。なんかあったのかな?
「魔竜王の化石を掘り進めていると赤い結晶体を大量に発見したとのことです。おそらく魔竜王の魔石から漏れ出した魔力が結晶化したのではないかとされ、結晶体一つ一つが魔石のようだそうでーーん?どうしましたベル様。なんか嬉しそうな顔をしてますが?」
モナカ……それは多分「あったぁ」っていう顔だと思うよ。
―――――――――――
「これが例の結晶ですね」
僕は早速マギサのところに行って例の結晶体を見せてもらうことにした。ちなみにモナカはレイとアイリスと狩りに行った。鎧武とギロティナは採掘だ。
今僕は魔竜王の頭蓋骨の中に設置した採掘事務所で血のように真っ赤な結晶を見せてもらった。少し魔力を流してみると、なるほど、魔石に近い。しかも魔力が均等にムラなく流れる。
「おそらく、魔竜王の魔石が持つ強大な魔力が固まって結晶化したんだと思いますね。こういうのは初めて見ますね」
「魔力流しやすいな。クセがない。術式が描き込みやすくて助かるよ」
魔石にはそれぞれクセがある。込める術式が高度であればあるほどそのクセが出来上がりを左右するのだ。わかりやすいのは属性かな。火属性の魔物の魔石に水属性の術式は込めづらいとか。
「これは最高の素材だね。できればたくさんあるといいんだけど……」
「それについては心配なさそうですね。着いてきてください」
マギサが化石の胴体に向かって先導する。現在口の中から胴体に沿って穴を掘っているのだが、まんま坑道だな。アニメとかの鉱山によく似ている。ライトとかは僕が作ったんだけどね。
そしてその横で忙しなく働くアイアンゴーレム。ある者はピッケルを突き立て、ある者はスコップで穴を掘り、またある者は採掘した結晶を運んでいる。
そうこう進んでいると、ライトとは別の赤い光が見えてきた。あれかな?
「ここが結晶を見つけた場所ですね」
マギサが手を向けた先には紅くきらきらと輝く結晶体が地面から顔を出していた。昔テレビで見た水晶の洞窟のようだ。
しかしおかしいな。僕の目がおかしくなければ水晶は僕の目でもハッキリと判るくらい大きくなっていってるんだけどな?
「わかりましたか?この水晶大きくなる速度が尋常じゃないんですよ。削っても削ってもすぐさまニョキニョキ生えてくるんです。どうもダンジョンの魔力を利用しているかもですね」
「じゃあ枯渇する心配はなさそうかな」
「それはもう。あちらをご覧ください」
マギサが指を差した先には、体の半分が結晶で埋まったアイアンゴーレムがいた。
「採掘中に成長する結晶に体を呑まれてしまったアイアンゴーレムさんです」
「すぐに救出してあげて!?」
「わかりました」
そこまで早いんかい!採掘する時は細心の注意を払っておかないとな。しかしこれで……
「鎧武のパワーアップと量産型の開発が捗るぜ……」
「お言葉なんですがこれ以上鎧武さんパワーアップさせるおつもりですか?今のままでも充分だと思いますよ。量産型もアイアンゴーレムがたくさん作れるならそれはそれで脅威かと思いますが……」
「“充分”じゃ不充分なの。自分の身を守る兵士を作るためなら、やり過ぎくらいが丁度いい」
「はぁ……」
それに沢山のゴーレムを率いるというのはある種のロマンだ。男としても、一人の技術者としてもね。
「とりあえず魔力炉だけ優先して工場を作るか……」
「アイアンゴーレムの時も思いましたが、生産工場とはすごいものですね。ベル様の世界の物はみんなこうだったのですか?」
「みんながみんなじゃないけどねー。まあ工場で一度にたくさん作れるから値段が安くなって物がよく出回っていたかなー」
「だから発展していったのですねー」
「発展してたし物も豊かだったね。食べ物まで工場で作ってたもん」
「ひょっとしてマヨネーズも?」
「うん」
「へー。ではマヨネーズ工場を作ったら大儲けできますね。ここのダンジョンで獲れる素材は無料だし無尽蔵ですから、実質タダで荒稼ぎですね」
「ハハッそうーー!」
うん?工場で荒稼ぎ?しかも素材代はタダ。人件費もゴーレムを使えば発生しない。さらに現代日本の知識にある物ならバカ売れする。これはひょっとして……
「?どうしましたベル様?」
「マギサ……仮に僕たちが商会を作ってマヨネーズや他の物を売り出したらどうなる?」
「うーん?大儲けですかね。魔物素材から作り出された商品は高品質ですからね。確実に他の商会からも妨害が出るでしょうが、そこは力で捻り潰せば良いのではないですかね?」
「マヨネーズとか売って、ハマったところにマヨネーズを売るところがなくなったら困るよね?」
「民主は暴徒と化しますよ」
「だからさ、僕たちが商会をやって大儲けしたら、魔王の商会が無くなると困るよね?」
「!」
おっと。マギサも気づいたか。そうとも。僕が今考えているのは経済侵略。魔王がいて困る状況から魔王がいないと困る状況に作り替えてしまえば、仮に僕の正体がバレても力ずくで排除されることはないだろう。それどころか堂々と居座ることも可能だ。
これは……やってみる価値はあるかも。失敗しても損しない。成功したら得がある。
「なるほど……恐ろしいことを考えますね。マヨネーズ大作戦ですか」
「もう少しカッコいい名前がいいな……そうだな、『黄金の玉座計画』なんてどうだろう?」
「ベル様が表で居座る玉座を黄金で作ろうというのですか。なかなかいいですねー」
「でしょでしょ!他にはこんなのがあってーー」
また一つやりたいことができたな。どれもこれも僕が15歳になって王都に行くまでに済ませたい。忙しくなるなー。がんばるぞー!
次回、爆誕!鎧武弐式!




