機械帝国してる場合じゃねぇ!
料理回だあ!
「むぅ……」
マギサたちの所に向かう途中、僕は数枚の書類とにらめっこをしていた。
「ベル様、それは?」
「設計図。色々と」
まず量産型鎧武【鉄鬼】。
魔力噴射式推進装置【マナジェットスラスター】。
攻性魔力噴射装置【無双砲】。
鉄鬼の他の二つは鎧武に搭載しようと思っているものだ。鉄鬼も、僕が魔桜で機械帝国するためには必要なものだ。戦争は数なのだよ、ふふん。
まぁ、この3つの実現には大きなハードルがある。
それは動力源。つまり魔石とかなんだけど……。
まず鎧武の動力源として使った魔石は、魔竜王ほどのものじゃないが竜クラスのもの。
いや無理。とてもじゃないが、無理。
ダンジョンにドラゴン設置してー倒してーってやると効率悪すぎてマジ無理。人手が足りない。その人手を増やすために魔石が必要なのに……詰んだわ。
しかもドラゴンたくさん倒せばいいってもんじゃない。同じ魔物でも魔石の品質にムラがある。量産品はできるだけ品質が均等なのが好ましい。
つまり、この3つの安定的な量産には、竜クラスの高品質、同品質の魔石を大量かつ安定的な供給をしなくてはならない。
うん。とてもじゃなくじゃなくマジ無理。
だがこの問題をクリアすれば、僕は強力で無尽蔵なゴーレムの軍勢を作ることができる。すでに採掘を手伝うためのアイアンゴーレム工場の設計は済んでいる。これをベースに鉄鬼を量産するつもりだったのだが……
「せめて沢山ある竜クラス以下の魔石の品質を弄る術があればなぁ……」
んな都合いい方法ないか……。
「あっ、ベル様」
前から凍っている塊を持ったレイがやってきた。
「あっレイ。何持ってんの?」
「この間の突撃猪の残ったお肉です。冷凍保存してたんですよ」
「へーどうやって食べんの?」
「丸焼きです」
「うん?」
こないだも丸焼きだったよな。まさか……
「レイ、昨日は何食べた?」
「クラーケンの丸焼きです」
「その前は?」
「ロックバードの丸焼きです」
「……その前は?」
「えっと……熊牛の丸焼きです。おいしかったですよ。冷凍保存してるので食べますか?」
「丸焼きしか食べてないじゃん!」
しかも食べ切れてないし!
「いや魔人参とかスマッシュポテトとか野菜も食べてますよ」
「ちなみにそれはどうやって食べてるの?」
「えっと魔人参は生で。スマッシュポテトは茹でて食べてます」
「晩御飯女子力0!」
人参を生て!しかも魔物!抵抗とか無いの!?
そこで僕はハッとする。
彼女達は僕の部下……ならば僕には彼女達の生活を整える義務があるんじゃないの……?それは兵器の量産より優先すべきことなのではないの……?
機械帝国なんてやってる場合じゃねぇ!食育だ食育!
「レイ、今から言う魔物を配置しとくから、明日僕が来るまでに採取しといて」
「えっ?わかりました……」
待ってろよ……現代日本の食卓見せてやる!
―――――――――――――
「えっとつまり私たちの食事があんまりな物だからベル様直々に手を下すことになったってことですか?」
「端的に言うとそう言うことだよモナカ」
次の日、僕は塔のキッチンにやってきた。
そこを見るにフライパン、あんま使ってないな。せっかく作ったのに……。
「言われた物取っておきましたよ。これで何を作るんですか?」
「そもそもベル様料理できるんですかね?」
「失礼な。これでも前世は一人暮らしで毎日自炊してた大学生だったんだぞ」
僕の家事能力舐めんなよ!
まずはガシュラコッコというニワトリの魔物の卵の卵黄とナパームフラワーの油、そしてビネガーの実から採れる酢に塩を入れてよく混ぜ、瓶に移す。
「鎧武!振って!」
『ピピ?』
「いいから!」
『ピ、ピピ』
瓶を受け取った鎧武はシャカシャカと瓶を振る。これで魔法の調味料は良し。
次に卵を割り、牛乳が美味しい羊牛(半分羊)の乳と砂糖を入れて混ぜ、焦がした砂糖水を入れた容器に移し、ぬるま湯と一緒にオーブンへ。
今度は卵を沸騰した鍋に入れて茹で卵を作る。その隣の鍋ではスマッシュポテトを茹でている。
「卵よく使いますね」
「卵は虹色の食材なんだぞ〜。いや七色だっけ?忘れたわ……」
オーブンに入れてた物は今度は冷蔵庫に入れて冷やしておく。お察しの通りデザートだ。
同時に茹で卵と茹で芋をお湯から引き上げザルに突っ込んでおき、棒状に切った芋を揚げて塩をまぶし、フライパンでは魔物化した小麦、デビルフラワーと水を使ってなんちゃってナン。炭水化物は大事です。
あとはキャベツと人参を切ってサラダに。レイの言った熊牛は切ってステーキにしておく。ついでにきゅうりがあったので浅漬けにしてみる。
これらの作業を同時に行う。
「す、すごい……黒鉄で複数の調理を一度に……」
「大変いい訓練になってるよ」
僕の戦闘服【黒鉄】まで使った同時調理。伸びた複数の手がそれぞれの調理が順調に進んでいることを教えてくれる。
「これで、仕上げ!」
最後に作っていた料理が黒鉄の腕で次々とテーブルの上へと運ばれていく。僕の本体の両腕は組んでるだけ。
『ピ、ピピ〜』
「あ、できた?」
どこか疲れた様子の鎧武から瓶を受け取る。開けてみると、よし、ちゃんとできてる。
さて、本日のメニュー。茹で卵、茹で芋、フライドポテト、なんちゃってナン、キャベツサラダ、熊牛のステーキ、きゅうりの浅漬け。
「どうぞー召し上がれー」
「い、いただきます……」
レイが恐る恐るといった感じでフライドポテトを口に入れる。
「!お、おいしい!おいしいです!」
「でしょー。サラダもこのマヨネーズつけて食べてみてー」
レイと他の二人のサラダにマヨネーズをかける。モナカが食べてみると、
「!?な、なんなんですかこれ……!ただのサラダがこんなにおいしく……」
「このステーキも美味しいですね……焼き方一つでこんなに変わる物なんですね」
うむうむ。自分の手料理が褒められて嫌な気分はしないな。
するとアイリスがテーブルの料理を食べたそうな目で見ている。
「アイリス、食べてみたい?」
「い、いえ!この時間帯ですし、私たちはもうご飯食べてしまいましたし……」
言い訳を口にするアイリス。うん、よだれ拭こうね。
「デザートだけは僕達の分もあるから食べちゃお」
「!はい是非!」
「デザートもあるんですか!?」
「あ、うんってもう食べ終わったの!?」
そんなに美味しかったのか、食卓の皿は全部空になっていた。食べるとなると一瞬だなー。嬉しいけど。
僕は冷蔵庫から取り出したデザート……プリンをみんなに配る。ここでもみんなは大はしゃぎ。
「甘い!おいしい!」
「プルプルして……幸せぇ……」
「この茶色いソースの苦味も絶品ですね」
「ベル様の世界にはこのような至高の一品があるのですね……」
ベタ褒めだった。いやぁ照れるなぁ〜……ハッ!
『……』
「……」
鎧武とギロティナが何か言いたそうにこっちを見てくる!ご、ごめん!人工の味覚も開発できないか試してみるから許して!
この日を境にレイ達の食事は大幅改善され、みんなの肉付きが良くなった。やっぱり大事なのは機械帝国より食生活の見直しだよねぇ。
次回、「あったぁ」っていうお顔
次回も見てね!




