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注)ピザ生地ではありません

わーかけたーよんでー


 ――ぺたんぺたんぺたん


「よし、ざっとこんなものかな」

「よくそんなに器用にできますね……」


 六道結成から数ヶ月後、僕ことベルリル・ハドルクはダンジョンの研究所にて自分の武器の製作に取り掛かっています。ちなみにその横ではアイリスがデモンタイトに魔力を馴染ませている。


 ――ぺたんぺたんぺたん


「まっ、慣れだよね」

「……どうやったら慣れで金属をパンの生地みたいにできるんですか……?」


 今僕がぺたぺたと机に貼り付けているのはデモンタイト合金。デモンタイトの他に複数の金属をブレンドし、錬金術で加工したものだ。今も魔力を流しながら変形させている。


 そして入れたのは金属だけではない。


「これでも手間掛かってるんだよ。“あれ”も入れてみたからね」

「あぁ、“あれ”ですね」


 あれ――鉱石の採掘を頼んでいたギロティナが偶然発見した……『竜の化石』。


 ダンジョンの壁を削っていたら見つかったそれは未だにその全貌を見ることはできない。僕も採掘を手伝ったが、頭蓋骨の半分を引っ張り出すだけで苦しくなってしまった。そしてその頭蓋骨の半分だけでもクジラのように大きい。元がどれだけ大きいのか計り知れない。


 探知の魔法を使ってみても全体像が見えなかったのだ。地中の探知だったので範囲は1キロくらいだったが、それでも東洋龍のような長い身体を持っているということしかわからなかった。


 しかも周囲にもこの竜の化石よりは小さいが、僕からすれば十分にデカい竜の化石を複数発見した。

 

 だがそのどれもはこの巨大な竜の化石が放つプレッシャーには敵わない。すでに死んで骨だけになったにもかかわらず、まるで生きているかのような圧倒的存在感……『竜の魔王』と言われても納得できてしまう。


 そう思っていたらカルパス曰く、はるか昔に竜の魔王は本当に存在したらしい。


 【魔竜王 アポカリプス】。広大な大陸をブレス一つで砕いた竜の魔王。その牙は如何なる敵を容易に噛み砕き、その鱗は如何なる者も傷一つ付けることはできなかったのだと言う……。


 さらに彼は己の眷属に『自分の理性が無くなり、本当の獣になってしまった時は殺して欲しい』と頼み、眷属達は彼の命令を聞き入れ、膨大な犠牲を払った上で理性なき魔王と化した彼を倒したのだ。


 うん。それなら周囲に他の竜の化石があるのも納得だし、骨だけになっても放つプレッシャーが本物だと教えてくれる。


 そんな竜の化石を、ギロティナは発掘する際に一部を欠かさせてしまった。


 それが今研究所の壁に立て掛けてある牙の化石の一部だ。


 その一部は牙全体からしたらほんの一欠片……それでも僕の身長と同じくらいある。その牙の一部のさらに一部分を粉末状にしてデモンタイトに練り込んだのだ。


 当初は流し込んだ魔力を乱されてまともに錬成などできなかったが、今ではもうピザ生地の如く自由自在に動かせる。真っ黒だけど。


「ピザ生地か……」


 僕はピザ生……デモンタイト合金を手で回し、ピザ回しのように手元の金属を変形させていった。


 回るごとに大きくなる円。下手をしたら破れそうなほど薄くなっていく。


 そしてそれをそのまま壁に思いっきり投げつけた!


 ――ドゴンッ!!


 先程まではピザ生地のようだったデモンタイト合金は、今度は金属の槍のようになり、壁に突き刺さった。

 

 槍を引き抜き、両手で持つと、今度はドロドロの液体のようになり指をすり抜けてテーブルの上に流れ落ちていく。


 テーブルからも溢れ落ちそうになるが、僕が魔力の供給を止めると再び硬い固体に戻った。


「……!」


 隣でアイリスが息を呑むのが聞こえる。


 これぞ僕が求めた金属。僕の意思で固体と液体に姿を変え、変幻自在な流動を見せる万能金属。魔竜王の牙を使ったこの黒い金属塊は、触れるだけで切り刻まれそうな気配を感じる。


「……よし」


 黒い金属の水たまり手を置き、魔力を流す。


 全てを切り裂き、何事も柔軟に。僕のワガママを全て受け止めてくれる魔王の刃……。


 そんな思いを込めながら手をゆっくりと上げ、それに合わせて刀身が形成されていく。


「うん。いい出来だ」


 僕の手には反りが入った漆黒の刀身がある。重すぎず、軽すぎない理想の重み……。それなのに近づくものを威圧する濃厚な気配。完璧だ。


 それにあらかじめ作っておいた、デモンタイト、オルハリコン、竜の牙で作った柄と合わせる。


 最後に刀身と柄の重なる部分に魔王の大剣から抜き取った宝石を嵌め込んで……なっ!?


「うおっ……」

「わぁ……!」


 宝石を嵌め込んだ瞬間、漆黒の刃にまるで夜空に浮かぶ星々のような光が灯ったのだ。


「すご……」

「綺麗……」


 本当に綺麗だ。この沢山ある白い小さな星は牙の粉かな?天の川のように光る金色はオルハリコンだろうな。強く輝く銀色はミスリル。


 すごい。まさしく魔王……僕の刀に相応しい。名前はそうだな……


「【千転夜桜(せんてんよざくら)】……」

「えっ?」

「この刀は【千転夜桜】という銘にしよう」


 僕は柄のオルハリコン部分に桜の紋様を彫る。


「……私たちの目にある模様の花ですね……」

「桜って言うんだ。僕の前世の国にあった花でね、僕も大好きなんだ」

「へ〜……この世界では、私たちがサクラを目に宿しているのも、ベル様が好きだからでしょうか?」

「そうかもね〜。どっちにしろこの花は僕らのシンボル……ふむ」


 よし……決めた。


「では僕たちは、桜にちなんで《魔桜(まおう)》と名乗ろうか。組織名として……ね」

「大変良いかと思います。ベル様や私たちに相応しい名かと」


 僕はこれまたあらかじめ作っておいた、端々にオルハリコンを使った漆黒の鞘を取り出す。やはり黒と金色はよく映える。


「仕舞うのが勿体なくなるくらい綺麗ですね……使うのすら勿体ないです」

「まぁ、ここまで頑張って作ったし、できれば使いたいよね」

「私がベル様にその刀を使わなくてもいいほど頑張ります」

「いや使わせてよ。本当はこの後試し斬りがしたいんだけど……」


 時間的にも、魔力的にもキツい……。今日は諦めるか…。


「マギサたちのとこ寄ってから帰ろっか」

「はい、そのように」


 僕は鞘に収めた千転夜桜を作業台の上に置いた刀掛台に置いておく。


 やっぱ持って帰って一緒に寝よっかな……いやいや!刀嵩張るし。でもマジックバックにギリギリ入るかもだし……いやでも……


 僕は悶々としながら後片付けをして、アイリスと部屋を出た。


 ――カタッ


「うん?」

「どうしましたか?」

「いや……気のせいかな」


 さて、マギサ達のとこ寄って帰るか〜。

もっとベル君を見てくれぇ〜

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