幹部結成!その名も《六道》!
放課後の自習だるいよぉぉぉぉぉ!!
僕たちはマギサ達が住居として使っている隣の塔にやってきた。橋を渡ればすぐだったよ。
「……僕たちしか居ないから静かだね。こんなに広いのに」
「そうですね。少し不気味に思えます」
「賑やかにしたいなー」
「すぐそうなると思いますよ。ベル様を讃える声でいっぱいになるはずです」
「それは少し遠慮したいかな……」
そんな他愛のない話をしながら歩いていた時だった。
「うおっ、でっかい猪……」
2mはありそうな猪の魔物だ。今の僕なら……ギリ勝てるかな?そんな魔物が横たわっている。
そして猪のすぐ横では薪を運んで火をつけようとしているマギサ達がいる。
「おーい」
「ん?」
「ベル様!」
声を掛けたらマギサが振り向き、レイが僕のことを呼んでくれた。
「これ今日の晩御飯?すごいね」
「はい、丸焼きにするんですよ。とってもおいしいです」
「突撃猪という魔物でしてね、一直線の突進しかしてきませんが、砦の壁くらいなら簡単に壊せるパワーを持ってる魔物ですね」
「そ、そうなんだ……」
なんちゅうもんを食っとるんじゃ。いやまあその魔物頼まれたとはいえ僕が配置したものだけどさ……。
「ところで今日は武器の金属の下拵えをするのでは?もう終わったんですか?」
「うん、第一段階はね。魔王の大剣の金属『デモンタイト』と名付けたこれをベースに作るんだ」
「必死で止めたのにあっさり分解しよった……」
カルパスめ、まだ根を持っているのか?やっちまったものは仕方ないだろうに。
「それでね、このデモンタイト、ものすごく魔力の通りが悪いんだ。いや魔力伝導率とかはオルハリコンにも劣らないはずなんだけど抵抗してくるんだよ。だからインゴットの時から魔力を流してもらおうと思ってね」
「あぁ、“慣らし”ですかね。新しい武器を使う前に魔力を流して武器に自分の魔力を馴染ませるんですね。インゴットの時から馴染ませるのはあまり聞かないですがね」
相変わらずマギサは物知りだな。武器使わないだろうに、ほんとに色々知ってる。
「それに魔力が馴染んでる方が加工しやすいしね。武器作りもスムーズに済むしね。てな訳で、はい」
「ありがとうございます。おっと……重いですね」
デモンタイトのインゴットは僕が抱き抱えて運ぶほどだからな。かなり重いし大きい。4、5キロくらいあんじゃないかな?
「魔力を流して馴染ませる……む」
「難しいよねー」
アイリスが早速試してみるが、やはり抵抗の方が強いだろう。オルハリコンやアダマンタイトでもかなり手こずるからな。
「初めは武器の両端を持って、そこから魔力を通すといいということを聞いたことがありますねー」
そう言ってマギサはインゴットの両端を持って魔力を流し始める。
しかし重いんだろう。氷で作った台座の上で魔力を流している。冷たくないのかな?
あ、でもできてるできてる。さすが魔女。
「むっ……ふん!」
アイリスもインゴットの両端を持って魔力を流し始める。おお、アイリスも結構できてるな。
レイやモナカ、鎧武にギロティナまで魔力を流してる。鎧武もギロティナも普通にうまいな……。
てかみんな晩御飯じゃなかったの……?
と、その時。
ーーゴンッ!
「ぐっ…がぁぁぁぁぁ!!!???」
「アイリス!?」
突然アイリスがインゴットを落とし、左目を押さえて苦しみ始めたのだ。
「ちょっ、アイリスさんってあばばばばばば!?!?」
「マギサ!?」
「あ、頭が割れ……ぐうぅぅ!!?」
「な、なんなんですかこれぇぇぇ!?ががががが!!?」
「レイ!モナカ!」
『ピピピピピピ!?!?!?』
「カタカタカタカタ!?!?」
「鎧武にギロティナまで!?」
ゴーレムがのたうち回って骸骨がブリッジするほど苦しんでるって何事!?
「か、回復!?な、何から手をつければ……」
「落ち着けベル坊!」
あたふたあたふた。
この時の僕は本当に役立たずだったと思う。
「べ、ベル様……治りました……」
「アイリス!よかった……よかったよ……えっ?」
「ベル様?」
苦しんでる最中に眼帯が外れたんだろう。普段隠されている白い左眼がこちらを見ている。アイリスの魔眼だ。
でもその左眼になんか桜の花びらみたいな黒い模様が入ってるんですが……。
「えっと……アイリス、左目なんともない?」
「えっ?あっ、眼帯が外れてしまっていますね。失礼しました」
「違う、そうじゃない」
「ど、どうしたんですか…」
マギサも治ったみたいだな……って。
「マギサもか……」
「何がですか?」
マギサの左目にも桜の花びらが……。
よく見たらレイや他のみんなにも桜の花びらが左眼に付いている。鎧武はモノアイだけどね。ギロティナも眼窩に浮かぶ形で桜の花びらが入っている。
僕はとりあえず手元にあった銅から簡易の銅鏡を作り、二人に見せる。
「……なんですかね?この左目のやつ」
「分からないから聞いてるんだけど……なんともないの?」
「健康そのものです、ベル様」
「推測ではあるが……」
カルパスに心当たりがあるらしい。さすがこの中で最年長なだけはある。
「おそらくだが此奴らは魔王化……いや、準魔王化したのではないか?」
「準魔王化?」
「魔王に準ずる力を持つとされている存在。それが準魔王じゃ。デモンタイトに残っていた邪気の残りカスがアイリス達に影響を与えたのではないかと思うのじゃ。おそらく種族も人間から魔人に変わっているじゃろう」
「マジか……」
たしかにあの苦しみ方は僕が魔王になった時とよく似ていた。それに準ずるものなら……。
僕の軽はずみな提案でみんな人間辞めちゃった……元から人間じゃないのもいるけど……。
「み、みんな……ごめん……」
「謝らないでください、ベル様。魔人とはお揃いですね。嬉しいです」
アイリスがそんなことを言い出した。
嬉しい?何言ってるんだ?
「こう、人間辞めた嫌悪感とか無いの?」
「そもそもベル様が魔王になった時点でどこまでも付いていく所存です。種族改変なんてどんとこいですよ」
逞しい……。
「ですねー。私なんて元々人間かどうか怪しかったですし」
「それ自分で言うの?」
「私も……故郷のエルフと完全に違う存在になったのだという自覚があります。むしろ、ベル様と近い存在になれて嬉しいです」
「結構闇深いね……」
「ベル様の様子を見る限り普通の人間と変わらなそうですし、問題ないでしょう。ま、まぁ私は普通の人族だったですけど気にしてませんよ〜?」
「なら今度ステータス見せて」
「個人情報ですよベル様!」
「あ、うん。そだねそだね」
みんなあんま気にしてねぇな……いいのか?
「この目の花びらはベル様の配下の証です。だからいいのです!」
「だからいいのか……。そかそか配下の証ね……ほんとに幹部っぽ…!」
待てよ……。彼女達の目だけに共通する桜の花びら……。
これってめっちゃ幹部っぽくない……?
魔王幹部……彼らの共通するのは左目に桜の花びらがあること……。
いい!いいぞー!
「あのさ……みんなは僕の部下……幹部ってことでいいんだよね」
「もちろんです」
「ベル様に助けられた御恩をお返ししたいんです!」
「ほかに行くとこありませんしね」
「ベル様と一緒なら退屈しなさそうですし」
『ピピピピ』
「カタカタ」
ならばー!!
「君たち6人は……魔王直下、最高幹部『六道』だ!」
「大変良き名です、ベル様」
「魔王直下……」
「最高幹部……」
『ピピ〜♪』
「カタ〜♪」
「組織名無し、配下ゼロですけどね〜」
「そこは今から考えて増やすんだよ!」
これからって時にモチベ下げんのやめて。
「まっ、とにかく……頑張るぞぉぉ!!」
「「「「おー!!」」」」『ピピー!』「カタカタ!」
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「ベル坊、妾は?」
「えっと……魔王のペットってことで」
「……まっ、よかろう」
「あざっす」
暑くなってきた……太もも刺された……
アイデアが全く消費できてない……




