「この子呪われてるのよ!」いただきました!
「この子呪われてるのよおおおおおおおお!!」
そんなでかい声が聞こえて僕は目が覚めた。
辺りを見回してみると、なんだか大勢のメイドさんがいてなんかオロオロしている。
声のした方を向くと……なんかこう…なんて言うかなぁ…。敢えて例えるなら悪役令嬢っていうか酷く高圧的な感じの女の人がいて、その隣にはやっぱりオロオロしている中年男性がいる。二人とも貴族が着るような服を着ている。
見上げると、僕を守るように抱いている金髪の女性の顔が見えた。緑の目が美しい。
ふむ………。
どういう状況!?
えっ何が起きたん?確か僕の最後の記憶は……トラックに轢かれそうな女の子を助けたことだったな?それで一応お互い無事だったけれども背後からやってきた通り魔にナイフで刺されて死んだ……。我ながら珍妙な死因だな?
はっ!?
目が覚めたら体が縮んでいる…?赤ん坊サイズに?
周りにはメイドさん…?そして貴族みたいな格好の人達?
なんだ。そういうことか!フハハハハハ!
僕は異世界転生をした!!!!
しかも、しかもだ。
最初にあの女何て言った?そう「この子呪われてるのよ!」と言った。言ったのだ。
「この子呪われてるのよ」いただきました!!
産まれた時点から何か特別っていいよね!平凡な少年に産まれて成り上がるのも悪くないんだけど、僕的にはこっちの方が好みだ。
「このおぞましい髪と眼の色!この子やっぱり呪われてるわ!」
ほう、髪と眼かどれどれ……。
僕は辺りを見回し、何か鏡か鏡の代わりになる物を探す。お、これは産湯が入った入れ物かな。金属製なので今の僕の姿が映し出された。
髪の色は銀…というよりは白。眼の色は赤。顔は何処か前世の僕の面影を残しながら西洋人っぽい。
………。
あぁ…そっちかぁ。白髪に紅眼かぁ。ワンチャン黒髪黒眼かと思ってたけどなぁ、元日本人だし。なるほどなぁ。
「………この子は呪われてなんかない」
「黙りなさい!だとしたら、何でそんな髪と眼の色をしているのよ!呪われてる、悪魔の子だからでしょ!」
「違う!呪われても悪魔の子でもなんでもない!この子は正真正銘私の子よ!」
「ふ、二人とも…少し落ち着いて……」
「「貴方は黙ってて!!」」
「は、はいぃぃ!!」
アレェ、今の容姿に気を取られてたら、なんか雲行き怪しくない?
というか、男の人(多分貴族で父親)見事に尻に敷かれてるなぁ。頭皮も薄っすら見えて気の毒に。
「もういいわ!そこまで言うなら出て行って!そして2度と帰ってこないで!」
「ええ、ええ分かったわ!こっちから願い下げよ!出て行ってやる、こんな家!実家に帰らせていただくわ!」
今度は父親のハゲ具合を気にしていたら、また話が変な方に転がっていった。
僕の母親は俺を抱いてそのまま部屋を出ようとする。
「えっ、ちょ、ま――」
哀れ、最後まで父親の意見を聞いてもらえないまま話がぽんぽん進んでいく。
「安心して、お母さんがあなたのことしっかり守るからね」
そう言って、泣きそうな顔で笑いながら語りかけてくる母親。
なんか途中からよくわかんなくなったが、母親の温もりはとても温かった。