糸使いキャラは最強
首○さんとかス○イダーマンとかね!
「ベル、お前王都の王立学園に行く気は無いか?」
あっ、これ物語が急展開するイベントだ。
僕がそんなアホみたいなことを考えている間も、おじいちゃんは真剣な眼差しで僕を見ていた。
見れば母さんだって僕のことをまっすぐ見ている。
後ろではアイリスが息を飲んだのを感じる。
「本来、王国の貴族は15歳になったら王立学園に行くのが法として定められておる」
ほらね、やっぱ15歳からだ。
「お前は貴族としての教育をほとんど受けていないが、戸籍上はハドルク男爵家の長男。学園に行くのは決まっておる」
たまに忘れそうになるが、僕の母さんと父さんは離婚してない。
「そもそもあの男、儂のアトラを第二夫人に迎え入れるとか言った時点で気に入らなかったんじゃ。今度会ったらぶん殴ってやる!」
やめたげて。父さんの頭弾け飛んじゃう。
って言うか、最後に会った時の父さん、薄らハゲてたぞ。目の前のおじいちゃんはフサフサだが……。
父よ、フサフサ度で義父に負けてるぞ。いいのか。
「だが、だからこそ普通にお前を男爵家の息子として行かす訳にはいかん。ミグラトリア家の息子として学園に出そう」
えっ!?どうしてそんなことを!?
まさかこれを機に離婚させる気なんじゃ……。
僕の顔から不安が伝わったのか、おじいちゃんは笑って母
さんの方を見た。
「心配するな。離婚話とはなんも関係ない。アトラはあの男と別れるつもりは無さそうだからな」
「好きでもない男に嫁いだりしないわ。きちんと惚れてるのよ?」
「だがこうして10年、アトラとベルと離れていたという事実がある。それにお前には男爵家より、儂の商会を継いでほしい。向こうには優秀な長女がいるらしいからな」
おじいちゃんの商会を継ぐ、か。
参ったな、そう言えば15歳までに強くなるとかは決めてたけど、それ以外のことはさっぱりだ。
あと向こうには長女が居るのかー。ということは僕の姉さん。……もしあの第一夫人の性格継いでたら嫌だなぁ。
「聞けば、ベルの成績は大変良いものだと聞いておる。座学なら首席になれるレベルがあるとな。問題なかろう」
マジで!?僕そこまで色々勉強していたの!?
「お、お待ち下さい。もしベル様が王都に行かれたら私は……」
アイリスが泣きそうな顔で僕のことを見つめる。
そっか、王都に行ったらアイリスやみんなと離ればなれになる。行動にも制限が掛かるだろう……。そう考えたら行きたくないなぁ……。
「王立学園では従者の同行は認めておらんが、その従者が生徒ならば黙認しておる。入学できればの話だがな……お前にできるかの?」
「…………やってみせます!ベル様のメイドは私だけです!」
ア、アイリス……そんなこと言われたら照れるじゃん。
「まぁ、あと5年もある。最悪行きたくなければそれでいい。どちらにせよ、しっかりと勉強するように」
◇ ◇ ◇
「――って言うのが昼間あってさー」
「王都ですか……座標さえ分かればいつでも迎えに行けますかね?」
「でも王都は屋敷とは違って人が多いじゃん。多分寮暮らしになると思うし、難しいかも」
「でもベル様と離ればなれになるのは嫌です……」
「今と決まった訳じゃないよ。だから泣かないで、レイ」
「王都となると《創世教》の教会ありますよね…?行きたくないなぁ……あっ、も、もちろん私が《鮮血教》だからですよ!こう、向こう的には私達邪教ですし!」
「自分達で邪教って言っていいの!?」
「カタカタカタカタ!」
『ピピピピピピピッピピ!』
「なんて言ってるか分からないけど、一応ありがとうと言っておこう」
そんな感じで雑談をしながら、マギサは魔法制御、レイは《偽霊》の弓矢で的を射抜く練習、モナカとギロティナと鎧武は読書、という風に各々のしたいことを続けている。ちなみにアイリスは猛勉強だ。もう受験生並みの気合の入れようだ。「合格!」って書いたはちまきを渡してみようかな?
いや、僕たちには布もない。僕が植物から錬金術で繊維を集めて服などを作っているが、それが結構効率が悪い。布も欲しいな。テンプレ的には蜘蛛系の魔物から糸取れるってのあるけど、無い物ねだりしても仕方ない。
ついでに言うとカルパスもいる。
「そう言えばベル様は何をしているんですか?」
「うーん、ちょっと魔導具をだね……」
今やってるのは、昼間貰った魔法鞄の改造だ。
最初は拡張してやろうと思ったが、魔石にスペースがなかった。最悪、これ以上弄れば壊れるかも。こう、部屋そのものを広げることはできない、みたいな?
だが、それにドアを付け足すくらいならできる。
「よし、できた」
「なにやら魔石を足してましたが、何をしたのか気になりますね」
流石マギサだ。魔法関連には鋭い。
「まぁ、見ててよ」
僕は椅子から立ち、みんなから見えてみんなとは離れた場所に移動する。見ればみんなも興味があるようで、それぞれ手を止めている。
このポーチはカードゲースくらいのサイズと厚みがある。だから片手でスマホみたいに持つことができるのだ。
そこ重要かって?もちろん、重要さ。
僕は移動した場所でみんなに対して背中を向け、足を軽く
開き左手を腰にやり、右手をまっすぐ横に伸ばした。
そして右手の先にはポーチがある。
「変!」
それを言うと同時に上半身だけ振り向き、右手をポーチごと顔に近づけ、みんなに向かってキメ顔!
「身!」
直後、眩い閃光が大広間を埋め尽くす!まぁ、僕の魔法だけどね。
「なっ!?」
「きゃあ!」
誰かの悲鳴が聞こえてくる。……ごめん。あとできっちり謝るから。今、割と余裕が無いから。
約10秒ほどで光が収まるとそこには……
「う、ぅぅ……ベル様、なに……を?えっ?ベル様……ですよね?」
一番目がいいアイリスが先に気付いたか。
今の僕は、さっきとポーズはおんなじ。だが服装が違う。
先程までの僕は植物由来の天然素材で作った作業着だったが、今は漆黒のロングコート。
顔はフードと白い仮面によって隠され、手袋までして肌の出ているところは一切ない。
襟はピーンと立ち、ファンタジー特有のめっちゃ大きいベルトに地面に着いてしまっている裾。全体的にぶかぶかだ。手はしっかりと出せるようにしているけどね。そして腰には反りが大きい刀を挿している。
これが、これこそがベルリル・ハドルク戦闘フォームよ。
たった10秒で着替えた僕を褒めて欲しい。
ちなみに「変身」と言ったのはノリだ。だって仕方ないじゃないか。男の子ならカ○ンライドとかバー○ゴーに憧れるものじゃないか。
「べ、ベル様……一体どうやって着替えたんですか?」
「このポーチに“転送”の付与を足した」
“転送”とは文字通りポーチの中にあるものを“転移”するみたいに一瞬で出現させることができる魔法だ。“転移”との違いは、術者本人が移動するのが“転移”で、物を送るのが“転送”だ。これで僕にコートを直後“転送”した。
だが“転送”があっても10秒でできるかは賭けだったんだよなぁ〜。よく頑張ったぞ僕。
「そのコート……ベル様が難しい顔で付与を繰り返していましたね。どんな付与にしたんですかね?」
「特に特別なものは施していないよ。“軽量化”と魔力を集める“集魔”だけだよ」
このコートの名は【黒鉄】。その名の通り魔鉄製の金属繊維で編み込んだ物だ。
だから金属鎧並みに防御力があるがとても重い。“軽量化”をしなければまともに動けない。そして“軽量化”に必要な魔力は“集魔”で自動調達。それ以外の付与が入る隙間がない。
だが僕にとってはそれだけで充分だ。
「少し慣らそ」
僕は靴底に仕込んでおいた《可変式魔法陣》の魔法を起動させる。使うのは“土人形”だ。
あらかじめ魔法陣を描いておけば、魔力を流して無詠唱で魔法を使うことができる。
そしてこの《可変式魔法陣》は、これまた金属製の靴底に錬金術と鍛治魔法で魔法陣を刻み込むことによって、数種類以上の魔法が使える、僕オリジナルの技術だ。
まぁ、靴底から使える魔法とか限られているし、魔法陣の描き替えは今の僕では30秒ほど掛かる。戦闘中はダメだ。致命傷になりかねない。
そうこうしているうちに、僕の目の前にはマッド・ゴーレムが5体現れた。
去年の鎧武のテストを思い出す。あの時より2体多いが。
僕は無言で刀の構える。
異世界の輪道流剣術が火を吐くぜ!
マッド・ゴーレムは半包囲するように広がって攻めて来る。
アイリスやレイの不安そうな顔が目に入るが、心配いらない。
今の僕は……ベルリル・ハドルク戦闘フォームだから!
僕は目の前のマッド・ゴーレムに向かって駆け出す。
少し遅れてマッド・ゴーレムも迎撃のために拳を構えた。
そして僕目掛けて振り下ろされる致死の重量を持った拳。
それに対し僕は……
「はぁ!」
上、下、上の順番でゴーレムの腕に突きを入れていく。まるで針で糸を縫うかのような三連続の突き。
輪道流剣術“茨の型”腕縫”。
反りが大きいこの刀だからこそできる“曲がる突き”。それを三連続で。
だがマッド・ゴーレムはそんなの関係ねぇ!と言わんばかりに前に出る。そしてそれは正しい。
本来、痛覚も骨格もないゴーレムに突き技は効果ない。ただ突いただけでは意味ないんだ。
けどただ突いた訳では無かったら?
“腕縫”を受けたゴーレムの腕が突然中から弾け飛ぶように爆ぜる。
これには思わずゴーレムもたたらを踏んだ。
刀の先に圧縮した魔力を乗せておいたのだ。それを腕の中で衝撃波に変換した。ただの突きをする訳ないじゃん。異世界だもん。
そして異世界だからこそ使える技もある。
「疾っ!」
そして放たれたのは10連の突き!
輪道流剣術“十影”。
書物の中でしか聞いたことのない技が、身体強化によって可能になる。今異世界で復活する。
曲線を描きながら円状に突いていく。衝撃波付きで。
ゴーレムはまるで殴り飛ばされたように壁際までぶっ飛んで……爆ぜた。
余韻を感じる暇なく、両側のゴーレムが襲いかかって来た。
僕は右側のゴーレムに向かってコートの裾を「バサァ」と広げた。
《可変式魔法陣》が薄く光を放つ、【黒鉄】の裾を。
次の瞬間、三本の氷の槍がゴーレムを貫く。
顔、心臓部を破壊されれば、いくらなんでもそれ以上は動けない。
僕は広げた勢いのまま、左側のゴーレムに向かってくるりと回転する。
今度は【黒鉄】の裾が刃のように鋭くなり、ゴーレムを縦に切り裂いた。
やっぱり5体も要らなかったな……。剣術の確認はできたし、このコートの機能は“一番やりたい事”を除いて全部試した。これ以上続ける意味はない。
じゃあその“一番やりたい事”で終わらせよう!フィナーレだ!
僕は納刀をし、指先をまっすぐに伸ばした。
手を見えない刀を構えるようにして、指先を広げる。
そして一気に振り抜く!
その瞬間……ゴーレム達は横に5等分された。
今のは魔法じゃない。『糸』だ。
実はこの手袋は二重になっていて、外側の部分だけを繊維状に戻し、魔力を込めて振り抜いたのだ。
僕は綺麗な断面を見ながらうっとりとした。
これだ……やっぱりこれ……!
僕は間違ってなかった!
やっぱり糸使いキャラは最強なんだ!
鉄すら軽く切り裂く見えない鋼糸。今の僕には指先から糸を伸ばして切り裂くという使い方しかできないが、いつかはワ○ピースのドフ○ミンゴやヘル○ングのウォ○ルターさんみたいに人間を操り人形みたいにしてみたい……!……今の発言だけだと僕、変態みたいだなぁ。
「ベル様すごい!お見事です!」
「ありがとねレイ。僕も満足しているよ」
「あの……ベル様」
「何?」
モナカが何やら苦笑いしながら僕の名を呼んだ。なんだなんだ?
「なんで仮面を着けてらっしゃるんですか?正直それ少し不気味です……」
「………」
かっこいいからさ!とは、流石に言えなかった。
良いもん。かっこいいもん。しかし不気味はいかんな…。
顔文字でも付けるか?
○ギロティナ
ベル君が復活させた激ヤバスケルトン。
巨大な処刑剣をブンブン振り回す膂力の持ち主。
何故か小部屋にあった官能小説を読んでる。
○鎧武
ベル君が作った激ヤバゴーレム。
ミスリル導線を使ったことにより、反射速度が以上に速い。
何故かギロティナと官能小説を読んでる。




