神秘の力っていうか……ほら、えーと……アレだよ
最近暑くなったり寒くなったりで振り回されますねー。
精霊召喚してから1か月たった。
レイの方はあれから何体か創り、それらを使った戦闘の訓練をしている。
中でも注目すべきはその精霊達を剣や弓、槍などの武器の形にイメージし、レイ自身が装備する戦い方である。
レイの力に精霊のアシストが働き、今の僕を軽く圧倒するだけの力を持っている。
………まだ、成長期だから!!すぐに追い抜かすんだからね!!
まぁメリットばかりではない。デメリットとしては同時召喚は不可能らしい。2体目を召喚しようとすると、1体目の精霊が消えてしまうようだ。…それでも充分に思えるけどね。
そんなこんなで彼女の精霊、否、偽物の精霊だから《偽霊》と呼ぼうか、彼女の《偽霊》戦法は大変様になっている。
名前の方は最初に造ったのを『1番ちゃん』と呼び、それから造った順番で名前を付けている。零から始めたってことで良いと思う。
僕?僕は普通に剣士の真似事しながら錬金術の勉強、あとはアレだね。レイの真似して召喚(?)したあのアンデッドを操る技法の練習だね。
結局あの最初に造った骸骨だけじゃなく、工房にあった骨を、少しだけ残して全部骸骨にした。残した少しは素材として使えるからね。
あとなんか一気に使い切るって少し怖いじゃん。ほら、ソシャゲのガチャ回すのにいる石だか結晶を全部使うと不安にならない?少しは保険に取っとくよね?10連引けるくらい。
あの人魂のときに強く「骨に宿るな!」って念じると骨のほうに飛んで行くことすらしないだよ。
で、恐ろしかったのは人魂状態ってそのまま半透明の俗に言う《死霊》みたいになるんだけど、その時に指に一筋の切り傷ができて、そこから血が浮いて人魂に取り込まれる。
それがメッッチャ怖い!だって傷ができる指が毎回違うんだよ!右手左手も!なんか一本の指に傷が集中すると良くないの⁉︎しかもすぐに傷が塞がるだよ!ものすごく怖い!怖いからまだ死霊タイプは5体しか造ってない。
しかも僕が造ったアンデッド消えないだよ。ポーション掛けても骨砕いても、写経唱えても消えないんだよ!……すみません。写経は少しふざけました。
扱いに困っているので工房に死霊全部とスケルトンを少しだけ工房に残して他は街の外にある山に放っているんだけど……そこで他の野生の小動物やら魔物やらを襲ってアンデッドにしている。動死体ってやつだね。
てな訳で新しいアンデッドも含めて、できるだけ遠くに行き、アンデッドを増やさないよう命令した。正直投げやり感はすごい。
そんな感じで毎日楽しく過ごしてる。決してこれ以上話すのが面倒になった訳じゃないよ。ホントだよ?
今日はいつものようにやることがあるんだ。
「レイ君」
「もぐもぐ……はい?」
僕は食事をしているレイに向かって話しかける。
この食事もどうにかしたいんだよなー。7歳児の持ち込める食料なんてたかが知れてる。基本レイの食事はポーションに使う薬草と塩のサラダとパンのバケット1/4、たまに錬金術で作ったハムがつく。それが毎日3食摂れてるかも怪しい。
もっと味が濃くてお腹いっぱい食べさせてあげたいけど、今はまだ無理だね。
「今日はまたやることがあります。時間掛かるやつです」
「あーだから今日はいつもより早く来たんですね」
そう、今日は「眠い」と言って多少無理していつもより早く工房に来た。時間はたっぷりある。
「レイは気にならない?あそこの扉」
僕が指をさしたのは工房にあったいくつかの扉のうちの一つ、これまた真っ黒なドアだ。
この隠し工房にはいくつかの小部屋があり、そこに繋がるドアがある。薬草を栽培するための部屋だったり、レイを寝かせてたベッドのある部屋だったり、他にも色々ある。
ただあそこの黒い扉だけは違う。ドアを開けても、そこには長い長い通路だけがある。
あまりにも長いので一晩では終わらないと思い、今まで手をつけていなかった。
だがそれが死霊を造ったことにより、扉の先の全貌を調べることができた。元々5体しかいなかったのと、通路の途中にいくつもの小部屋があったため3日も掛かってしまった。
やっぱ死霊って便利だわ〜。なんでもすり抜けていくから探索に役に立つ。見たもの聞いたものが直接頭に入ってくるし。
「今日はあの扉の奥に行こうと思います」
「あ、だから私に「馬みたいな精霊を造って」と言ったんですか?」
「そうそう」
そうだとうなずく。馬型精霊に関してはレイに一任した。馬の骨があれば僕が用意したんだけどなかったからね。
すでに死霊による探索で小部屋の中は確認済み。また通路の奥までも調べはついている。
どうも外に繋がっているらしいのだが、結界か何かで死霊が入ることができなかった。直接確かめるしかない。
「食べ終わったみたいだし、そろそろ行こうか」
「はーい」
というわけで準備開始です。
僕はポーチに普通のポーションと魔力回復用のマナポーションの入った試験管、小腹が空いたときのためのおやつを入れる。あと役に立ちそうな魔道具を少しね。
レイを森で見つけたときに着ていたコートを身につけ、腰のベルトに刀を差す。
この刀も錬金術でさらに改良を重ねたなかなかの名刀だ。前世だったら博物館にでも展示されたのではないだろうか。
ほとんどのアニメや漫画にでてくる刀は剣先のほうに反りがある先反りやそもそも反りがない無反りだと思うが、前世で僕が使っていた刀(木刀だけど)の反りは一番反りがある腰反りだ。
少し握って振ってみたが、まず抜きにくい。いや、抜けるっちゃ抜けるよ。でも一瞬でスラっとは抜けないだよ。抜刀術は難しい。
あと受けには適さない。まぁ、防御に関しては「防御の極意とは受けではなく流すことである」とは生前から教えられてきたし、鍔迫り合いは最初からするつもりはないので特に気にしてない。
反りの他にも鋒やふくら、茎、樋、峰、造込み、刀身彫りに鞘など刀を構成する大事な要素はあるが、木刀しか握ったことなかったし、基本うろ覚えな本の内容や手探りでなんとなく考えて作った。それでも結構いい刀だと思う。
いつか今よりも錬金術が上手くなって極上の素材を手に入れたら、かっこいい名をつけてやりたい。
僕の準備はこれだけだな。
「レイは準備できた?なら行こっか」
「はい!準備万端です!」
◇ ◇ ◇
走る走る〜♪いや〜風が気持ちいいな〜♪
レイの馬型の偽霊が通路を駆ける。ちなみに名前は『7番くん』だそうだ。
白いスカスカの馬鎧のような体に頭がツヤツヤの白い玉の偽霊だ。正直アンデッドのように見えなくもない。
レイの言う事しか聞かないから彼女の肩にしがみついている。
いつか僕もアンデッドの馬に乗って颯爽と駆けたい。
まぁ、今はレイのおかげで移動がスムーズに済んでいるからいいだろう。小部屋にある素材や本は帰りに運べばいい。日中にレイに頼んでおいてもいいかな。
そんな事を考えていたら通路の奥に着いた。
階段がある。レイの偽霊じゃ登るのは無理だな。階段くらい自分で登るけどさ。
偽霊に下りて分かったが、微妙に通路に角度がついているな。注意しないと分からないが上り坂になっている。
ということはここは地上……いや、方角と進んだ時間から察するに、ここは街の裏にある山?この通路は隠し工房にある隠し通路か…………いいね!めっちゃかっこいい!
さて、階段を登ってすぐ戦闘にならないといいけど……。
階段の数はそれほど多くない。1階から2階みたいな?
階段の先には扉があった。鉄でできた重そうな扉だが小さい。鍵穴があるが当然鍵なんて持ってない。
念のために一日中工房にいるレイに心当たりがないか聞いてみるがやっぱり知らないらしい。
仕方ないので錬金術で穴を開けようとするが………
「っ………⁉︎」
「ベル様!」
弾かれた。
こんなこと初めてで驚きはしたが、戸惑いはしない。原因には察しがついているからね。
おそらくだがこれは『対錬成加工』というやつだろう。本に載っていた。壁や扉に錬金術が効かないようにする魔法付与の一種で、本来なら王城の宝物庫にでも施される難しい付与だ。
そんなものがなぜここに?
考えても仕方がない。幸い鍵穴はあるのだから、そこに刀の鋒を向ける。錬金術によって鋒が鍵穴に入った。あとは手探りで鍵穴の構造を把握して……よし、できた。どうってことない。チョロいぜ!
刀を元に戻し、鞘に差しておこうと思ったが……やめた。いきなり戦闘になるかもしれない。対錬成加工があるんだ。何があっても不思議じゃない。
こんな時「気配察知〜」みたいなものがあればいいんだけどなぁ。
「レイ、念のためにいつ戦闘になってもいいように準備しといて」
「は、はい」
レイが召喚したのは白いハルバード。例の如く白い玉が埋め込まれている。レイの偽霊の共通点だ。ハルバードは確か……『4番さん』だったかな?
ハルバードなら距離が取れるし、何が飛び出すかわからないのだからちょうどいい。
慎重に扉を開ける。やっぱ重いが動かないほどではない。
少し開いたところから連れてきた死霊をひとまず3体だけ行かせる。
すぐに情報が入ってきた。扉の先には敵影無し。何もない小部屋だ。ただ結界があって小部屋の外には出れない。
何もいないみたいなのでとりあえず入るか。
レイにも手伝ってもらって扉を開ける。
部屋の中は……暗いな。
「レイス、発光」
(((((ペカー)))))
ポ○モンみたいに指示を出したら死霊たちはその人魂のような体をぼんやりと光らせ始めた。本当に便利だ。
紫色ではあるが明かりは確保できたし、探索するか。
と言っても特に何もないな。隠し部屋とかあっても死霊が通れなければ探せない。
小部屋の外に繋がる扉は普通に木製だった。相当古いものだろう。半分腐ってるが扉に施された魔法はまだ生きているな。これで死霊達は外に出られなかったんだ。
扉を開けてやり、死霊4体を探索に向かわせる。残り1体は明かりだ。
4体からの情報によるとここはいくつかある小部屋のうちの一つらしい。小部屋にはそれぞれ結界が施されていて死霊だけじゃ入れない。あとで確認する必要があるな。しかし、ここだけじゃなく、他の小部屋にも結界か…。
少し奥に行った所には、なにやら儀式を行うような大広間があるらしい。床にも魔法陣と思われるものがあった。ほとんど掠れていたけど。
その奥にも扉があるが、そこには特に厳重に結界が掛けられている。死霊達では近づくことすらできない。
まずそこを調べる必要があるな。
廊下を通って大広間に入ると、月明かりが差し込んできた。天井には、一部欠けてはいるがガラスのようなものがある。
この場所と言い、ウチの屋敷の隠し工房と言い、一体いつ作られたものなんだ?
大広間の上を歩いていると、なるほど。これでは死霊が近づけないはずだ。
大広間と扉の中間地点でビリビリと魔力を感じる。こんなの初めてだ。
これでは僕の死霊は役に立たないな。
「レイ、君の偽霊は大丈夫?僕のレイスは大丈夫じゃないよ……」
「はい、大丈夫ですけど……この魔力は…」
流石はレイの《偽霊》だ。この魔力に影響を受けないとはね。
とはいえ、レイの言いたいことは分かる。
この魔力の大元は何なのか?もし魔物なら僕達では対処できない。
「レイの『1番ちゃん』に先に行かせよう。もしもの時は『1番ちゃん』に足止めしてもらって逃げよう」
「ですね……」
「ごめんね。一番最初に造った精霊だから思い入れがあるだろうに……」
「いえ、ベル様のお役に立てるのであれば本望です」
そう言ってレイは『4番さん』の召喚を解除して『1番ちゃん』を召喚した。その後護身用に渡した刀を抜く。
実はレイにも【輪道流剣術】を教えている。まだ剣士と呼べるほどではないけれど、すぐに僕と並ぶことができるだろう。
と言っても僕だってこの世界で戦ったことはないけど。この扉の先で初戦闘は勘弁したいものだね。
「さて……行くか」
「はい。『1番ちゃん』、お願い」
「………」
『1番ちゃん』は無言で扉を押す。
正直言って『1番ちゃん』は今の僕達よりもぶっちぎりで強い。筋力もそうだが、杖を扱う杖術もかなりすごい。
そんな『1番ちゃん』が何もできずに負けるなど考えられないけれど……そう言えばレイの《偽霊》って壊れたらどうなるんだろう。もう二度と召喚できなかったら……そうじゃないといいんだけどなぁ……。
ーーーギ、ギィィ……
そうしているうちに重い扉がゆっくりと開き始める。長い間手入れされていなかったからか、扉は錆び付いて開けにくそだった。
僕もレイも油断なく剣を構える。何があってもいいように。
扉は完全に開いた。
扉の先は真っ暗だった。暗闇の向こうには何があるのか分からない。
「……レイ、『1番ちゃん』に明かりを」
「は、はい。『1番ちゃん』!」
「………」
『1番ちゃん』は白い光を発した。僕の死霊が出す光よりも明るい。部屋の隅々まで照らしてくれた。
部屋の中心には鎖で手足を繋がれた人がいた。シルエットからして………女?
部屋の天井から伸びた2本の鎖によって両手を繋がれ、足の鎖が繋がっている先は人の背中によって見えない。髪は伸びきっておりボサボサ。痩せた身体と俯いた様子から生きているようには見えない。
「…………死体……?」
「いえいえ、あいにくと生きてますよ、しっかりとね」
「「⁉︎」」
レイのでも、もちろん僕のものでもない声が話しかけてきた。
目の前の鎖の人はゆっくりと頭を上げた。
右眼は髪で隠れているが、その黒い瞳は宝石のように輝いて見える。
「あなた達はどこのどなたですかね?」
「え、えっと、ぼ、僕の名前はベルリル・ハドルク。こっちは……」
「レ、レイです」
名前を聞かれて答えたのは失敗だったかな。鎖で繋がれているし大丈夫だろう。念のために『1番ちゃん』を前にだし、刀は構えてはいないがしまってない。
「へーそうですか。私は………聞いといて悪いんですが、覚えてないんで答えられません。適当に呼んでください」
「は、はぁ……」
なんだかこの人………軽いっていうか……鎖で繋がれているとは思えないほど明るいな。
「ではあなたは一体……?」
「私は……確か……なんか禁忌の魔法とか世界の真理とかを究明しようとしたら幽閉された……?いや、不老の力手に入れて不気味がられたからでしたっけ?あ、《崩壊の魔女》の渾名が付くくらいやばい魔法使いだったからでしたっけ?」
知らないよ!もうなんなのこの人!物騒な単語に対してノリが軽ぅぅぅい!
まぁ、事情は朧げながら読めた。この人は自分で言うようにやばい魔法使いだったのだ。不老だから封印されたのだろう。でもあり得ないほど痩せてるけど餓死してないし、何かを口にしていたようには見えない。単なる不老じゃないな。
ここは彼女を閉じ込めるためだけの施設。そしておそらくだが、かつてウチの屋敷で暮らしていた人は彼女を監視していたかもしれないな。隠し通路はその為の物か。
それにしても《崩壊の魔女》か……ふむ。
「……とりあえずあなたは仮名『マギサさん』と呼んでもいいですか?」
「……まぁ、私の方から好きに呼んでと言ったのですし、構いませんよ。しかし、どういう意味ですかね『マギサ』って?」
「……別の国の言葉で『魔女』って意味」
ギリシャ語だったな、確か。ちなみに英語では皆様ご存知『ウィッチ』、フランス語では『ソルシエール』、ドイツ語では『ヘクセ』である。
「興味深いですねー。忘れるまでその名を名乗ります」
「あ、はい」
なんか対応がいい加減だな、この人。
おそらくこの人魔法とか自分の興味あることしか向き合わないのだろう。そして興味ないことにはとことんいい加減に接する。僕達もおそらく『どうでもいい』方にカウントされているんだろうな。
それよりも問題はこの人をどうするかだよな……。
「えーと……あなたここから出たいですか?」
「?出られるなら出たいですかねー。出られないなら出られないでいいですけど」
自分の今後に対しても興味無しか……。
「そもそもこの鎖をあなたがどうにかできるんですか?外れませんよこれ」
「………マギサさんが鎖を解いたあと襲い掛かってこないのであればやってみますけど……」
「襲うだなんてできませんよ。魔力全く無いですし。魔力の無い私なんてゴミですよゴミ」
「……言ってて悲しくなりません?」
「少し」
少し悲しいのかよ。
まぁ約束してもらえたし、やるだけやるか。
僕はレイに目配せする。レイも僕の意図を察したようだ。
僕は『1番ちゃん』の前に出るが、『1番ちゃん』とレイもついてくる。何かあったら二人に任せよう。
それにしても……。
痩せ細っているが……デカいな。どことは言わないけど。ご立派なものをお持ちですな〜どことは言わないけど。
日本のアニメでよくある、登場人物の大事なところが湯気や謎の光で隠れちゃうあれ。目の前のマギサさんは髪で隠れている……。
いや、ホント。神秘の力だよね、これホントに。
いかんいかん。まずはこの人の鎖を……ん⁉︎
「こ、これは……」
この拘束具……鍵掛かってない!いや、違う。これって鍵と言っていいのだろうか⁉︎
鎖の拘束具の留め具には鍵ではなく、針金をそのまま穴に通して曲げられている……力尽くじゃないと外せないでしょ!
この鎖はおそらく魔力を抑える力があるな。そうでなきゃマギサさんが外せないはずがない。留め具自体は魔法使い対策か?筋肉がものを言うやつだこれ。
「………案外すぐ外せそう」
「えっ?またまた〜」
冗談じゃなくてだね……ま、いっか。
「レイ」
「あ、はい。『1番ちゃん』」
「………」
『1番ちゃん』が普通に鎖を引きちぎった。いやこうするしかないよね?
「えぇぇ⁉︎そうやって外すんですか⁉︎」
逆に思いつかなかったのかよ!
「いや、こうするしか無くないですか?」
「えー、これ私絶対外せないじゃないですか!ズルですよ!」
知らん!筋トレしなさい!
『1番ちゃん』は優秀だね。こうしてる間に鎖を全部外したのだから。
自由になったマギサさんに着ていたコートをかける。とりあえず隠し工房に連れて行くか。
「立てますか?」
「……多分いけると思いーーー」
ーーぐうぅぅ
………誰のお腹の音だ?いや察しは着いてるけどさ。
「………ごめんなさい私です」
ほらね、やっぱマギサさんだったよ。
僕はポーチの中のおやつとマナポーションを提供した。
(はぐはぐ………ごきゅごきゅ)
いい食べっぷりだなぁ。見てて気持ちいい。
「………すみません。それしかないんですよ」
「あ、いえいえ!ありがとうございます!多分200年くらいに久しぶりに何か食べました!」
200年⁉︎そんなに生きてんのこの人⁉︎
「……とりあえず僕達の隠れ家に行きましょう。道中で色々説明しますよ」
レイの『7番くん』なら3人余裕で運べるだろう。服は…隠し工房にある古着を着て貰えばいいか。
「ありがとうございます。ベ、ベルリムさん?」
「……ベルリルです。ベルでいいですよ、別に」
忘れられるよりはいいな。
「じゃあしばらくよろしくお願いしますね、ベルさん」
「ええ、こちらこそ」
しばらく話していると、やっと立てるほどには回復したようだ。
「行きましょうか?レイ、手伝ってあげて」
「はい、ベル様」
「すみませんね、レイちゃん」
仲良く話しながら部屋の外に出ると……
突如として大広間の掠れた魔法陣が輝き始めた。
魔法陣の奥から出てきたのは……骸骨。
それもコートを着た、2本の折れたツノを持つ骸骨。眼窩の奥には青白く光っており、背中に二本の処刑剣を背負った、戦士の骸骨。
そうだよ……僕としたことが、すっかり忘れていた。
そりゃそうだ。封印してたのを解き放っちゃたらそれを阻止する守護者がいるに決まってるじゃん。
近頃布団で寝るのが至福のひと時です。




