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母に恋人  作者: 玉城毬
6/10

母娘会

 母の同居をきっかけに家族関係が復活した私は、田中さん一家も含めた交流をするようになった。

 季節の行事、誕生日、お祝い、お出かけ、毎月のように会っていた。

 10年の冬の時代を経て一気に雪解けが進んだように、私は、母達の賑やかな集いに交ぜてもらっていた。

 25歳から私もより大人になったし、母も老いたし、丸くなったのかも。

 人生も半分にさしかかってきて、満喫した自立生活から、家族と暮らす方への興味も強くなってきた。

 現時点で私に家族を作るのは無理だけど、肉親である母との関係が通うようになって、その母にフレンドリーな恋人家族がいて、快く迎えてもらえていることがとても幸福だった。

 あのお正月から半年、今日は母と二人だけで会うことになった。

「どこかいいお店で、ランチでもする?」

「あら、ランチならお友達としょっちゅう行ってるから、いいわ」

「じゃ、どこ行く?」

「藍のおうちで、女子会したいな!」

「えっ……」

「気持ちだけは、生涯女子よ?

 ーー前から行きたかったのよ、あなたのおうち!

 全然招待してくれないんだもん」

「今更……。

 まぁでもそうだね、いつも田中さんち行ってばっかりだったし……」

 そんなわけで今日は、私のおうちで大人過ぎる女子会をすることになった。

 私がもてなす側だけど、急だし、ふるう腕もないので、スーパーで好きに食べ物や飲み物を買いこんできた。

「おじゃましまーーす。

 あら~~」

 家に入るなり母は荷物も置きっぱなしで散策を始め、ベランダを見つけて窓を開け放した。

「眺めがいいのねぇ!

 広いし……。

 そうねぇ、お母さんだったら、植物に囲まれながら、座ってお茶したいわぁ」

「……らしいねぇ」

 相変わらずのおばちゃんぶりに、私は苦笑した。

「セキュリティも大丈夫そうね、家賃高いんじゃない?」

 ちゃっかり探りを入れてくる母。

「うーーん、新しくないから、そこそこだよ」

 ざっくりと、答える。

 お母さん、10年でむしろパワーチャージしたくらい、生き生きしてるな。

「藍がしっかりやってて安心した。

 お母さんも一人になった時はしばらく考えちゃったけど……。

 こうして遊びに来られるようになったし、楽しみが増えたわ」

「なら、よかった。

 私も、お母さんと田中さんのおかげで、家族体験させてもらってるよ!」

「そうね、お母さんもダブルハッピーだわ」

 母のおばちゃんキャラも、私の中でアリになってきていた。

「田中さんちって本当、オープンだよね」

「そうなのよ、居心地がよくって。

 お一人様の終活から、まさかこんなハッピーな老後になるなんてね」

 母は本当に、幸せそうだ。

「お母さん達は、結婚しないの?」

「!!」

 不意な質問だったようで、母は真っ赤になった。

 一息ついて、穏やかに笑った。

「友達にも、よく言われるわ。

 ラストチャンス……、なんてね。

 確かに憧れるけど、今のままで十分だと思ってる。

 お互いに子や孫もいるし、介護になったら今の関係は変わるし、お金が絡むとややこしくなるし……。

 なにかの時は自分と家族、老後と終活が第一かしらね。

 いろいろあって70で恋人になった私達だから、シンプルに生活できるのが一番幸せ」

 おばちゃん生活を謳歌してると思った母も、実は結構考えながら生きてるんだ。

「藍は、婚活とかしてるの?」

「いやーー。

 仕事と生活で手いっぱい。

 今は余裕、ないわ」

 逆に自分のターンになって、えぐられるような現実を突きつけられた。

 母は目を細めて、言った。

「一人暮らしでお仕事もしてるから、生きてく心配はないじゃない。

 25歳の頃の藍の目標はきっと、達成してると思う。

 一応世間的にはいい歳になるから、思うところがあれば協力するわ。

 まぁ、お母さんも独身だし、今の方が多様に生きやすいからね」 

「……ありがとう。

 親としても考えてくれて、認めてくれるんだね」

「最近、やっとよ。

 まだまだ、だけどね」

 マイペースながらも進化を続ける母に、私は感謝と尊敬を感じた。



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